2010年 10月26日
地域の力で高齢者に安心を

徳島「介護現場はいま」

介護保険制度の導入から今年で10年。高齢者の安心は確保されたのか。全国でも高齢化が目立つ徳島県内の介護現場を舞台に、厳しい現状を紹介しながら、制度が抱える課題を探った。

9月中旬から社会面で8回連載。徳島市内の60代男性は認知症で肝臓がんも抱える母(90)の介護に追い詰められる。入院させたが、「徘徊(はいかい)があるから」とわずか2日後に退院。次の病院では24時間の付き添いを求められ、ヘルパーを雇った。だが、毎月40万円の出費は介護保険では認められない。認知症のがん患者は「保障の網から漏れている」と痛感した。

阿南市の70代女性は多少の世話が必要な要支援認定を受けている。だが、同居する要介護の夫(76)の面倒を見なければならない。いわゆる「老老介護」だ。認知症もある夫の介護から解放されるのは週4日、夫がデイサービスを利用する日中だけだ。

「本当に困ったときに利用できない介護保険なんて意味がない」。県西部で独り暮らしの80代女性は憤る。左手首を骨折し、要支援の申請をしたが、1か月後に「非該当」と判定。コンピューターの1次判定で機械的にふるい落とされた。費用は自己負担するほかない。

介護する側の人手不足も深刻だ。特養ホームの女性介護福祉士(28)は仮眠もとれない夜勤を月2~5回こなす。それでも手取りは月15~16万円。非正規職員だと仕事内容はほぼ同じでも10万円ちょっと。賃金に見合わない激務で慢性的な人材難が続く。

「10年でサービスは充実してきたが、人材確保など課題はまだ山積している」と1人で担当した社会部遊軍の河野隆富記者。最終回は「介護保険頼みに限界が生じている中、増加の一途をたどる要介護者を支えるには、地域の力をいかにうまく使えるかが鍵を握る」と結んだ。(審査室)

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