2011年 1月1日
親の言葉から内面探る

西日本「命を守る 児童虐待根絶へ」

児童虐待防止法の施行から10年。「虐待は犯罪」との認識は浸透したが、事件は後を絶たない。何がわが子への虐待に向かわせるのか、防ぐ手だてはなかったのか。11月に社会面10回の連載で、当事者である親たちの言葉から背景を探った。

福岡市に住む母親(28)は、3歳の次女に意識不明のけがを負わし執行猶予付きの有罪判決が確定した。居間や食卓の上で排便を繰り返す娘に「キレて」、ライターで折檻(せっかん)するようになった。児童養護施設に預けていた子ども2人と3年ぶりに、新しい父親と一緒に暮らし始めた矢先に起きた次女の「異変」。それは、親の愛情を確かめようと、無意識に「試し行動」をとっていた次女の行為だったのだと裁判で知らされた。「試し行動なんて、言葉も知らなかった」と、母親は目を潤ませた。

妻の前夫との子で、3歳の女児の顔をたたき死なせた男(22)は、物心ついたころから父親に殴られていた。騒ぎ声でテレビの音が聞こえない、おもちゃが散らかっている。ささいな理由だった。風俗店で働く妻の稼ぎに頼り、女児の面倒を見ていたが、お漏らしを繰り返す女児に腹を立てるようになり、暴力につながった。「おれ、親父(おやじ)と同じことをしとった」。自分の行為が虐待と呼ばれることを知った。

連載からは、幼いころの虐待体験、育児ノイローゼ、夫婦間暴力、病気など親たちがそれぞれに抱える悩みや問題が浮き彫りになる。その影響からか、子育てに自信が持てず「ダメ親」と自らを責める姿も。

読者からは「親の言い訳は聞きたくない」との反響も多かった。取材班キャップの吉良治・報道センター都市圏総局次長は「原点に戻り、当事者の内面をつかみたかった」と連載の狙いを語る。河津由紀子記者と2人で担当。続編で児童相談所の課題を探る。(審査室)

ページの先頭へ