2011年 3月1日
逆境を希望に、底力示す

岩手日報「100万人の針路 いわて人口減少時代」

岩手県の人口は四半世紀後の2035年には今の約133万人から約104万人に落ち込むと推計される。右肩上がりを前提とした社会システムは崩壊するだろうが、一方では、地方が大都市への従属を断ち切るチャンスともいえる。元日1面から開始した連載で、「100万人時代のいわて」の針路を考えた。

第1部は「未来産業の息吹」(6回)。世界最大の素粒子物理学実験装置、国際リニアコライダー(ILC)の建設候補地として有望視されている北上山地に35年元旦、ILCが稼働したことを想定し未来予想図を描く。約5千人の研究者とその家族らに加え、関連企業の職員ら数千人が周辺に暮らす一大学園都市が形成され、ILCの研究成果はがん治療への応用などへと実を結ぶ。

だが未来の可能性は現状の直視から始まる。第2部「地域の苦悩」(5回)は、急速に進む人口減という大津波が、小舟のような過疎地の集落を飲み込む様子を伝え、都市部でも労働人口の減少が経済に影を落とす実態に触れた。

人口減少と高齢化時代を生き抜く道筋を探った第3部「模索」(2月、6回)では、「農業も技術力が勝負」と試行錯誤を続けながら中山間地農業の生き残りを懸ける住田町の農家の挑戦や、農業法人に就職した若者の姿が描かれ、県産業の中核となる農業の改革の必要性が伝わる。

そして第4部「地方の可能性」(6回)は、地域おこしの主役となっている地元愛の強い若者らの活動などを通じ、逆境を希望に変える地方の可能性を取り上げた。

「人口減少というマイナスの状況が進む中で、岩手の底力をどう示せるかを探っている」と川村公司報道部長は語る。同部の太田代剛次長が執筆し、第5部まで連載の予定。(審査室)

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