2011年 3月8日
声かけのお節介が孤立防ぐ

琉球「分断社会 きずな求めて」

沖縄でさえも家族、血縁、地域のつながりが薄れて「分断社会」になりつつあるのではという問題意識で、元日から社会面で連載を始めた。第1部19回の1回目は那覇市のアパートで孤独死した74歳の男性の周辺を取材。周囲が気づいたのは4、5日後。男性はそこに約50年住んでいても「孤独」だった。あいさつはするが、ほとんど会話をしなかった。68歳の男性の孤独死の場合、子どもが遺体の引き取りを拒否し、無縁仏に。かつて迷惑をかけられたから、「関係を持ちたくない」という。引き取りを断るケースでも葬祭業者が「せめてお線香だけでも」と誘うと、あげに来るという。引き取れば火葬などの費用が最低でも20万円かかる。「沖縄県民はチムグクル(情け深い心)はあるけど、お金がない」。業者の述懐である。沖縄にもホームレスが約150人いる。那覇市の公園で彼らに「おにぎりどうですか」と声をかける教会の牧師がいる。週1回、妻と2人で夜回りをしている。おにぎりはホームレスと社会をつなぐ「お結び」。

「福祉とは大きなお節介をすることだと思う」。那覇市で5年間自治会長を務めた男性の言葉に実感がこもっている。分断・孤立の現状報告から筆を進めて、ではどうすればいいのかを考える姿勢が顕著だ。おにぎりのお節介が孤立を防ぐというメッセージが読者にも伝わる。

連載中の第2部はうつ病や摂食障害など、人はなぜ心を病むのかを追究して読みごたえがある。

正月にあえて不幸なテーマを取り上げたが、毎日5件ほどの電話やメールが読者からくる。取材班は社会部の8記者。「孤独死」を書いた記者は那覇市社協主催のフォーラムで、パネリストに招かれた。新垣毅キャップは「困った、で終わらせず、希望と再生につなげ、どう絆を作っていくか考え続けたい」。(審査室)

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