2011年 3月29日
村と街を対比させ見つめる

岐阜「トンネルの向こう」―限界からの地域再生

過疎化に高齢化。山間部では暮らしの維持が困難になり、市街地でも閉塞(へいそく)感が覆う。二つの地域を対比させながら「トンネル」の先に再生の光を求める動きを探る企画を昨年末から始めた。第1章(12・30~1・4)は1面で高山市高根町、社会面で岐阜市柳ケ瀬の年越しルポを並行掲載した。

高根町は標高千メートルの山間地。2005年に高山市に編入されてから人口が急減、小中学校もすべて廃校となり約700人の人口が約460人となった。高齢化率は34%から48%になり地域の衰退が急速に進んだ。しかし住民たちは大みそかの夜から家族で食べる伝統の「年取り料理」の準備にいそしみ、お年寄りの共同住宅に年越しそばを差し入れる。「田の神様」に初詣でをし、閉校した旧高根中学校の最後の卒業生7人の成人式も行われた。

柳ケ瀬は「柳ケ瀬ブルース」で知られた繁華街。かつては年越しの買い出し客や忘年会客であふれた。今は下りたシャッターが目立ち、大みそかの夜も静けさが覆う。そんな中で十数人の商店主たちが鍋を囲み、絆を深めつつ新年を迎えた。正月もひっそり始まったが、商店主たちは再びのにぎわいを願って初詣で。街の一角にある百貨店には大行列もできた。

第2章(1月下旬)は高根町のお年寄りが厳冬期に共同生活を送る「のくとい館」を取材。長く暮らす地域を「ついのすみか」とする試みに光を当てた。第3章(2月下旬)は柳ケ瀬の戦後からの盛衰をたどることで復興の道を探った。

 「村も街も衰退している現状を冷静に見つめることで、何か新しい生き方を見つけ出したい」と一川哲志報道部長。今後も両地域に焦点を当てながら夏まで続ける予定だ。何度も高根に泊まり込んだ沢野都、にぎわう柳ケ瀬を知らなかった西山歩の両女性記者が担当。(審査室)

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