2012年 1月17日
長く深い関係見詰め総点検

福島民報「福島と原発」

福島県の佐藤雄平知事は昨年11月末、県内10基の原発すべてを廃炉にする方針を表明した。福島第一原発事故を受けての「決別宣言」だが、半世紀近く原発と共生してきた現実は重い。原発立県の推進、原発マネーで潤った財政、事故で打ち砕かれた地域の夢。福島と原発との長く深い関係を、地元紙ならではの視点で検証する長期連載を10月から続けている。

第1部「共生の功罪」(10回)は、同県で初めて原発を受け入れた大熊町の人々の思い。出稼ぎの多かった貧しい後進地域が、原発建設で目覚ましい発展を遂げた。事故で避難を強いられている人の口からも「原発がなければ町の発展もなかった」「原発には世話になった。恨みなんてない」といった声が漏れる。渡辺利綱町長は、町も恩恵を受けたが「首都圏に電力を送り、その電力が日本の繁栄を支えた」と自負しつつ、「こんなに急に脱原発を迫られるとは」との戸惑いを隠せない。

第2部「立地の遺伝子」(11回)は、地元政治家や歴代知事など県、地域が一体となって国や東京電力と歩調を合わせ、原発誘致を図ってきた歩みを振り返る。「原子力はみんなの希望だったのに」と語る関係者。立地に関わった元参院議員の佐藤静雄氏は、恩恵と事故の重大さを比べると「その功罪を毎日、考えざるを得ない」と自問自答する。

第3部「攻防 電力マネー」(11回)は、原発交付金や核燃料税が自治体にもたらした巨額の収入に焦点を当てた。それに代わる財源の見通しはない。全廃炉で財政危機に陥る懸念は拭えない。

「原発は福島県の地域開発や県民の暮らしに大きな影響を与えてきた。その関係を客観的に見詰めて総点検したい」と安田信二編集局次長。取材班は報道部の渡部総一郎、佐久間裕、渡部純、後藤裕章記者。第4部以降も続ける。(審査室)

ページの先頭へ