2012年 2月14日
長生きを祝福できる社会に

下野「終章を生きる―2025年超高齢社会」

団塊の世代が70代後半を迎える2025年、日本は65歳以上が30%を超える「超高齢社会」となる。未来は、長生きを心から祝福できる社会になっているだろうか。「笑顔あふれる終章のありようを栃木から考える」長期連載を昨年末から始めた。

12月半ばに1面にプロローグを掲載、3ページ特集で県内市町ごとの高齢化推計を示し厳しい現実を訴えた。続く第1部「足音」(8回)で「最期」を巡る人々の姿を紹介。大病を経験した女性はエンディングノートを書くことで死と生を見つめ直す。筋萎縮性側策硬化症(ALS)の男性は最後まで一切の延命治療を拒否した。尊厳死も選択肢となりつつある一方、身寄りがないため葬儀なしに直接火葬する「直葬(ちょくそう)」が増加。看取(みと)りの場所が定まらない「終末期難民」の続出も懸念される。

1―2月の第2部「わが家で」(16回)は在宅ケアの実態。病院での治療が効かなくなった前立腺がんの男性は年末に自宅に戻った。家族の献身的な介護を訪問医と看護師が支えた。穏やかに喜寿を迎え、連載中の1月末に息を引き取った。自宅で看取れたことで、家族にも心残りはなかった。

他にもいくつかの在宅ケアのケースを紹介。家族の協力に加えて、24時間体制で支える訪問診療・介護があってこそ成り立つ実態を報告した。超高齢化で病院や施設は足りなくなり、在宅ケアの需要は高まるばかりだが、体制整備や連携は十分ではない。連載と並行して特集ページを展開、在宅ケアでやれることや施設の現状などを紹介した。第3部以降も続ける。

「超高齢社会の現実は厳しく、自宅で最期を望んでも簡単でない。そんな時代にどう向き合っていけばいいか、ともに考えたい」と社会部の菊地哲也デスク。取材班は山崎一洋、若林真佐子、須藤健人記者。(審査室)

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