2012年 4月10日
農家に寄り添い再生展望

新潟日報「コメ王国の足元で」

新潟県は全国一の販売量を誇る「コメ王国」だが、その屋台骨は大きく揺らいでいる。高齢化による離農や後継者不足で耕作放棄地は9千ヘクタールを超え、コメ価格維持のための生産調整(減反)面積は5万ヘクタール以上、作付け可能な水田面積の3分の1に及ぶ。そこに降ってきた環太平洋連携協定(TPP)参加問題。「王国」の足元の検証と再生への展望を、経済面で10回(2~3月)連載した。

経営効率化のカギは農地集積だが、県内では貸し手不足で、放棄地の拡大を食い止めるための集積が多い。コシヒカリの高値に支えられ、農業所得を主としない第2種兼業農家は全国平均より10ポイントも高い69%。国は今年度、農地の貸し手への協力金制度を設けるが、戸別所得補償制度や土地への愛着がネックになり、貸し手を増やすハードルは高い。

連載を通じて、毎回TPPに触れ、グラフを添えることを心掛ける一方、後半では、農業者自ら加工や販売まで手掛ける6次産業化や新規就農、女性の起業など、さまざまな「明るい兆し」を紹介した。

新潟市の農業生産法人、新潟玉木農園の玉木修さん(32)は、7年前から台湾にコメを輸出、年々増え続け、2010年産は108トンと県内輸出の約3割。今年から台湾でのコメ作りに挑む。「土質もよい。きっとうまいコメができる」と意欲的だ。県全体のコメ輸出は福島の原発事故で一時足踏みしたが、徐々に回復している。

国の補助金を活用した非農家からの新規就農者も増えている。その経営を安定させるための行政や地域の支援が、農家の子弟の就農の後押しにもなると指摘した。

「経済的視点も大事だが、できる限り現場の農家に寄り添って、一緒に考えたい」と笹川克年報道部デスク。夏にはJA(農協)をテーマにした連載も予定している。佐藤直子、石井英明、石黒智哉記者が担当。(審査室)

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