2008年 2月19日
食の安全管理強化を

中国「天洋食品」製の冷凍ギョーザを食べた人が中毒症状を訴え、幼児が一時重体になるなど多くの被害が出ていたことが明らかになった。一部のギョーザとパッケージからは、有機リン系殺虫剤「メタミドホス」、「ジクロルボス」が検出された。身近な輸入食品に毒性の強い薬物が入っていたとあって、消費者に衝撃が走った。なぜ混入したか、日中の共同調査による解明が待たれる。百本を超す社・論説が取り上げた。

縦割り行政の弊害明らか

〈遅れた対応〉京都「食の安全にかかわる重要な情報の開示が遅れたのは問題だ。(販売側の)日本生協連には昨年十二月下旬から食中毒症状の報告が相次いでいた。にもかかわらず、厚労省が殺虫剤混入による中毒症状発生を明らかにしたのは一カ月以上もたった一昨日(一月三十日)のことだ。なぜそんなに時間がかかったのか」、読売「千葉市と(兵庫県)高砂市のケースで、同じ冷凍餃子(ギョーザ)の問題と察知できていれば、(千葉県)市川市の事例など他の被害は防ぐことができたのではないか。関係当局の動きを検証して、連携を強化すべきだ。輸入時の検疫体制も十分ではない」、毎日「福田康夫首相が打ち出していた『消費者行政の一元化』について、具体的な検討を進める有識者会議を設置することが8日の閣議で決まった。(略)今回のギョーザ中毒事件の対応が後手に回った背景に縦割り行政の弊害があったのは言うまでもない。中毒が起きた兵庫県と千葉県の地元自治体は発生直後、警察に任せる事案と判断して厚生労働省への連絡が遅れた。東京都は兵庫県から資料を受け取りながら、輸入元を管轄する品川区に連絡する際、重要な1枚を取り違えてファクス送信し、放置していたお粗末なミスも発覚した」、日経「輸入元の親会社である日本たばこ産業(JT)と日清食品、加ト吉は、三社の冷凍食品事業を統合する計画を撤回した。中毒事件への対応が後手に回り、JTの食品事業のイメージが低下したためだ。食品会社はコスト削減のため、安価な輸入製品の調達を増やしている。今回の事件を教訓として、各社は国際的な調達網の安全管理体制を点検、強化すべきだ」。

〈不安解消を〉神戸「行政や企業の対応のまずさもあって、消費者の不安は増幅している。問題の商品だけでなく、中国製品というだけで消費者が嫌ったり、店頭から撤去されたりする動きまで出てきた。深刻な事態である。消費者が食品への信頼を失っている現状を一刻も早く解消したい」、北海道「中国の食品安全当局の幹部は、政治的な意図を持った故意犯の可能性にも言及した。日本の警察は毒物が天洋食品の製造工程で混入した可能性が高いとみているが、日中のどこで混入されたか、断定されたわけではない。(略)中国製というだけで一切排除する過剰な反応は疑問だが、消費者の不安、疑心暗鬼は募るばかりだ。捜査協力などで日中政府は事件の徹底解明を急ぐべきだ」、産経「中国側は、ギョーザを作った食品工場の従業員解雇をめぐるトラブルや農薬としてのメタミドホスの使用の実態なども明らかにすべきだ。日本も国内の流通過程での混入の可能性について徹底的に捜査すべきだろう」、高知「この事件で浮かび上がったのは39%という日本の食料自給率の低さだ。(略)中毒事件は安全の問題だが、これまでは比較的容易だった海外での量確保も、資源や環境などの制約で困難さを増すのは避けられない。自給率向上を含め、食料安全保障政策を根底から見直す必要がある」、琉球「中毒問題に『危険な中国製品はもう買わない』との声は県内からも聞こえる。だが、日本は加工食品や食原料の大半を中国に依存している。食の上流(産地・製造)の汚染は、食の下流(消費)に住む日本にとって死活問題となる。まずは、混入の原因究明を急ぎ、被害拡大に歯止めが必要だ」。

日中関係成熟への試金石

〈冷静に協力〉中日・東京「事件の真相解明なしに、いくら(日中)両国政府が関係発展を誓い合っても、高まった不信はぬぐえない。(略)両国とも自らに都合の悪いことや体面を汚す事実を隠し立てせず、お互いに明らかにして共有することだ。それが捜査の進展と、本当の信頼回復につながる唯一の道だ」、朝日「今回の事件は、長い間の停滞から再出発したばかりの日中両国にとって、大きな試金石といえる。冷静に協力し合って解決に導けば、中毒事件の打撃を減らし、成熟した関係への一歩ともなる」、デーリー東北「食品を購入する際、消費者は、価格や味、便利さや外見で判断しがちだが、安全こそが食品の命であることをあらためて確認し、安全軽視は企業にとって致命的であるとの世論を高めていきたい」。  (審査室)

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