2008年 5月27日
一般財源化に期待

道路特定財源を十年間維持する改正道路整備財源特例法が十三日の衆院本会議で自民、公明両党など三分の二以上の賛成多数で再可決され成立した。福田政権下で再可決は三度目。これに先立ち、政府は道路特定財源を二〇〇九年度から一般財源化する方針を閣議決定した。道路問題をめぐる与野党攻防はひとまず区切りがつき、焦点は一般財源化論議に移った。特例法再可決と一般財源化を論じた四十五本の社・論説から。

法律と閣議決定、中身矛盾

〈異常な決着〉高知「それにしても異常な決着というほかない。政府は再可決の直前、道路特定財源を二〇〇九年度から一般財源化する『基本方針』を閣議決定した。そのために、再可決という非常手段を使ってまで成立させた法律を再改正することも盛り込んだ。法律と閣議決定の中身は、明らかに矛盾している」、西日本「国民の多くが釈然としない思いに違いない。改正特例法案を『〇八年度に限る』と修正すれば、分かりやすかったはずだ。それをせずに、法案を守り通した政府・与党は一般財源化を確実に実施する責任を負ったと自覚すべきだ」、神戸「財政が逼迫(ひっぱく)し、福祉や医療、教育などの予算がより多く必要となる状況の中で、いつまでも道路だけを聖域扱いすることはできない。一般財源化し、多様な政策目的に財源を配分していくことは時代の流れだろう。(略)この改革をその場しのぎの方便に終わらせてはいけない」、中日・東京「(道路財源のでたらめな使途などに対する)世論の批判に押される形で福田康夫首相が明言せざるを得なくなったのが一般財源化の約束だった。(略)再可決について国民の声をぜひ聞いてみたい。民意を置き去りにしたままでは、与党はいずれ大きな代償を払うことになる」、朝日「(再可決が繰り返されるような状況を)打開するには、結局、勝敗をつけるしかないのだ。福田首相は一刻も早く衆院を解散し、総選挙で国民の信を問うべきだ。(略)勝ち負けに決着をつけないままでは『エンスト政治』が長引くだけだ」。

〈しっかり議論を〉読売「これからの問題は、一般財源化を具体的にどう進めるかだ。一般財源化したら、地方の道路整備にはどれだけ充てたらいいのか。福祉や教育や環境対策の予算としてどう使うか。しっかり議論することが大切だ。(略)5年に短縮する道路整備中期計画は、大胆に洗い直し、道路関連支出のムダも、徹底的に排除することが肝要だ」、信毎「課題の一つは、道路の必要性をめぐる論議である。閣議決定の方針にも『必要と判断される道路は着実に整備する』とある。(略)『必要と判断される道路』とは何か、整備計画をつくるにはどんな仕組みが望ましいか。政府・与党は考えを明らかにすべきだ」、京都「国土交通省が道路建設計画の根幹を差配し、財源配分も仕切る道路行政を改める論議が欠かせまい。地方への思い切った税源委譲により、地域の実情に応じ自治体が財源を弾力的に活用できてこそ本物の一般財源化が実現できる」、毎日「道路問題はこれで一段落との空気が政界全体に流れてはいないか。(略)一般財源化はようやくスタート台に立ったというべきである。これで幕引きなどになれば、これまでの議論は何だったのかということになる」。

〈骨抜き許すな〉日経「今後は自民党の道路族議員らが一般財源化を骨抜きにする動きを強めることが予想される。首相は党内の抵抗を断固排して一般財源化を成し遂げる覚悟が要る。(略)これが頓挫すれば、支持率低迷にあえぐ福田内閣が行き詰まるのは目に見えている」、産経「道路財源改革は小泉、安倍両内閣でも踏み込めなかった。道路特定財源を力の源泉としてきた道路族を押さえ込み、着実に準備作業を進めることで、首相は不退転の決意を示すべきだ」、北國「政府・与党合意では、道路特定財源制度を今年度限りとし、〇九年度から一般財源化するために必要な法案を年内にまとめることになっている。(略)閣議決定の効力につきまとう一抹の不安を払しょくできるかどうかは福田首相の力次第であり、道路族という『内なる敵』を説き伏せる必要がある」。

与野党は大胆な妥協を

〈政策協議を〉河北「多くの人にとって政治の現状は不本意だろう。しかし、それならば、政府・与党も野党も当面、ねじれ国会の中に何らかの活路を見いだすしかあるまい。(略)冷え切った与野党関係を起動させられるとすれば、民主党も理解を示さざるを得ない道路特定財源の一般財源化をめぐる政策協議に鍵があるはずだ」、中国「ねじれ国会に求められているのは、修正協議を重ね、合意に向けた与野党の大胆な妥協である。(略)譲歩し合いながら政策を練り上げるルールづくりをしない限り、国会は混乱するばかりだ」。(審査室)

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