2009年 3月24日
消費喚起など知恵を

定額給付金支給をめぐる社説
2兆円使途、根強い疑問

第二次補正予算の関連法が四日成立し、二兆円の定額給付金の支給が早いところでは翌日から始まった。参院で否決後、衆院が三分の二以上の多数で再可決し実現した給付金。額は一人一万二千円、六十五歳以上と十八歳以下は二万円になる。月内に支給開始可能な市町村は四分の一程度で、残りは四、五月以降にずれ込む。三十本以上の社・論説が取り上げ、もっと効果的な二兆円の使い道はなかったのかという疑問と、支給が決まったからには役立てようといった意見が目立った。

経済効果に疑問残る

〈同じ使うなら〉朝日「苦しい生活の中、給付金が届くのはありがたいと、支給を心待ちにしている人も多い。ただ、それはこの政策の是非とは別な話だ。同じ2兆円を使うなら、急増する失業者への手当てなど、真に助けを必要とするところに振り向けてほしい。それが国民の率直な思いに違いない」、中日・東京「二兆円という巨額な税金を使うなら、例えば雇用緊急対策や医師不足解消など他に有効な使い道はたくさんある―。そんな思いが給付金への冷ややかな視線につながっている。民意とのずれを顧みず、見直しに動こうともしない政府・与党は鈍感すぎる」、神戸「何より深刻なのは、景気対策の『目玉』だというのに、経済効果がそれほど望めない点だ。最近の世論調査では、給付金の使い道は『生活費』か『貯蓄』とした人が七割を占めた」。

〈政策揺れ続け〉毎日「首相本人は受け取らない考えを表明し、高額所得者がもらうのは『さもしい』とまで発言した。ところが与党から説得されたのか、最後は『消費刺激に私も参加する』と一転して受け取る考えを示した。生活支援策なのか、消費刺激策なのか。首相のぶれた姿勢は、政策の目的自体が揺れ続けたことを反映したものだった」、秋田「基本理念がしっかり定まらないまま政策として打ち出す麻生流政治の限界を露呈した、と言っていい。年明け以降、麻生首相の見解が生活支援から景気刺激策に百八十度変わったのは、その一つの証左だろう」、北海道「再可決に際して小泉純一郎元首相らが造反したことは、自民党内にさえ異論が残っている証左と言える。(略)首相は経済対策にはスピード感が大事だと強調するが、関連法成立には衆院通過から五十日かかった。給付金財源を削除した野党の対案に歩み寄っていれば、妊婦検診無料化など他の政策はもっと速やかに実行できただろう」。

〈役立つように〉読売「定額給付金は、2兆円もの予算を投入するわりには、景気浮揚効果は限定的と指摘されている。小中学校校舎の耐震化に集中投入するなど、より効果的な使い道があったのではないか。しかし、成立した以上は、混乱を起こさないように国民に支給すべきだ。少しでも消費喚起につながることを期待したい」、北國「昨年来の経済対策がようやく動き出したにもかかわらず、その効果をはなから否定し、後ろ向きの議論をいつまでも続けていては、せっかくの機運に水を差すだけである。官民一体で知恵を絞り、給付金を消費刺激の導火線にすることを前向きに考えたい」、山陽「各自治体は給付に向けて作業を本格化させるが、給付金の効果を引き出すために知恵を絞ってもらいたい。地域経済の振興に生かそうと、地元商店街などで利用できるプレミアム付き商品券の発行などに取り組む自治体や商工団体もある。定額給付金によってどれだけの波及効果があるのか、その影響を検証することも、今後のために欠かせない」、沖縄「政策の迷走を批判することと、受け取ることとは別問題だ。消費に向けるのもいいし、環境問題などに使うのも手かもしれない」。

実効性ある手を大胆に

〈追加策急ごう〉産経「今後は、来年度予算関連法案を早期に成立させ、追加の補正予算を含む新たな経済対策も考慮すべきだ。政府・与党は、(銀行等保有株式)取得機構が購入する資産対象を広げることも検討している。期末までには時間が限られており、的確な対策を実施することが急務だ」、日経「景気悪化に歯止めをかけるため、政府は大胆で実効性のある追加対策を迅速に打ち出すべきだ。(略)中長期的な成長の礎になるような大胆な需要刺激策も求められる。世界的に低炭素社会に向けた大転換が進み始めており、それに伴う潜在的な需要は甚大だ。需要の呼び水効果が大きいものを中心に様々な施策を打ち出したらいい」、山梨「与野党は協力して、〇九年度予算案など当面の課題に早急に取り組むべきだ。時間の猶予はない。その上で国民の信を問え。信頼を取り戻すには、実効力のある政策を実現できる政権を確立するしかない」。(審査室)

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