2009年 4月14日
許されぬ行為に憤り

北朝鮮ミサイル発射をめぐる社説
国際社会の結束求める

北朝鮮が五日、「人工衛星」と主張する長距離弾道ミサイルを発射、秋田、岩手県上空を通過し、一段目は日本海、二段目以降は太平洋に落下した。北朝鮮は「衛星打ち上げに成功」と宣伝するが、日米韓などは「弾道ミサイル計画に関連するすべての活動停止」を求めた二〇〇六年の国連安保理決議に違反すると非難した。日本政府の要請で開かれた六日の安保理で日米両国が新決議の必要性を主張したのに対し、中国、ロシアが慎重な姿勢を崩さず、その後も調整は難航した。発射時に四十七本の社・論説が取り上げた。

誤情報でお粗末さを露呈

《暴挙》 秋田「憤りや怒りが込み上げてくる。三月中旬、国際機関への発射通告から三週間余り、理不尽な不安にさらされてきたのである。日本の安全を脅かす発射は到底許されない」、朝日「この発射はとうてい容認できない。強く自制を求めた日本をはじめとする国際社会の声を逆なでした暴挙に、深い憤りを覚える。衛星を打ち上げる技術は、核弾頭などを積める長距離弾道ミサイルと変わらない。いくら宇宙開発、国威発揚と言ったところで、真の狙いが『テポドン2』の改良型とされるミサイルの実験にあったのは間違いあるまい」、岩手日報「ミサイルには『どう喝』という弾頭が搭載されている。ミサイルの発射能力を示すことによって、国際舞台で有利に振る舞おうとする狙いがあるのは明らかだ」、山梨「軍事優先の『先軍政治』を実行してきた金正日総書記が『平和目的の衛星』だと主張しても誰が信じるだろう。オバマ米政権に圧力をかけ、直接交渉で優位な立場を確保したい。そんな本音は隠しようがない」。

《結束》 北國「北朝鮮に対してクリントン米国務長官が発した『高い代償を払うことになる』との警告通り、ミサイル実験は失うものが多く、得るものは少ないと、北朝鮮首脳が骨身にしみて思うところまで追い込む必要がある」、日経「国際社会が強い措置をとらなければ、似た行動が繰り返される。(略)安保理が北朝鮮の行動に対する外交包囲網をつくるのに失敗すれば、冒険主義を助長する。安保理に求められるのは、それを封じ込め、あの国に政策転換を迫る行動である」、徳島「(安保理が)甘い対応でとどめてしまうと、北朝鮮の核武装の増強を認めることになりかねない。阻止するには国際社会の強い圧力が必要だ。中ロ両国に毅然(きぜん)とした態度を取るよう求めたい」、毎日「(足並みの乱れが)国際政治の現実ならば、日米韓も今後の対応について冷徹な判断が必要になる。北朝鮮の暴挙は容認できないという認識を堅持しつつ、6カ国協議や米朝交渉を通じた事態打開といった選択肢も冷静に考慮すべきであろう。(略)対立構図を際立たせては北朝鮮を利するだけである」。

《危機管理》 中日・東京「今回、日本政府は万一を考慮して『破壊措置命令』を発令した。領域内への落下物などはなく、実際には発動されなかったが、情報伝達で失態を演じた。発射の前日、二度も発射情報を流したのは、確認を怠るという初歩的ミスが原因だった。誤報は、内外のメディアで伝えられ、危機管理体制のお粗末さを露呈する結果を招いた。態勢の点検と立て直しが急務だ」、南日本「何よりも指摘したいのは一貫しない政府の姿勢だ。麻生太郎首相らが『迎撃』を何度も示唆する一方、河村建夫官房長官は『わが国への落下の可能性はまずない』と語った。脅威なのか、それとも安心していいのか。戸惑う国民も少なくなかっただろう。(略)総選挙を控えた麻生政権だ。『騒ぐことで追い風を得ようとしているのではないか』という見方が的外れだったのであれば幸いだ」。

日本外交の力量問われる

《国防》 読売「北朝鮮は今後も『衛星打ち上げ』を続けるとしている。北朝鮮のミサイルの脅威に備えるには、ミサイル防衛(MD)システムの一層の充実が欠かせない。さまざまな訓練を重ねて迎撃の精度を高め、システムの実効性を向上させることが重要だ」、産経「迎撃態勢の検証にとどまらず、自衛隊と米軍の連携に不可欠な集団的自衛権行使を可能とする憲法解釈改定を急ぐべきだ。さらに、自衛権の発動として北のミサイル施設を先制破壊する能力を持つかどうかも含めて国政の場で積極的に論じる必要がある」、琉球「ここ数日、自衛隊のイージス艦派遣やPAC3配備など厳戒態勢が敷かれた。国民の安全確保が眼目だろうが、うがった見方をすれば日米の有事即応訓練にも映る。北朝鮮の『挑発』を利用した軍備拡大などあってはならない」、新潟「いま問われているのは有事対応のものものしい仕掛けづくりではない。日本外交の力量そのものだ」。(審査室)

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