2009年 5月26日
開かれた党に程遠く

民主党の代表交代をめぐる社説
責任総括し「鳩山色」を

西松建設からの巨額献金事件で世論の批判が高まるなか、民主党の小沢一郎代表が十一日、「党の団結を強め、挙党一致をより強固にしたい」と代表辞任を表明した。国会議員だけで後継の代表選が十六日に行われ、鳩山由紀夫氏が岡田克也氏を破って新代表に選出された。小沢氏は選挙担当の代表代行に、岡田氏は幹事長に就任した。小沢氏の辞任表明後、百五十本の社・論説が取り上げた。

世論読み違えた小沢氏

《遅すぎた》西日本「事ここに及んで『あえてこの身をなげうつ』という小沢氏の辞任の弁が、どこまで国民の深い理解と共感を呼ぶだろうか。率直に言って『潔い政治決断』というより、厳しい世論に追い込まれての辞任表明という印象はぬぐえない」、産経「辞任は遅すぎたと言わざるを得ない。秘書の起訴後、小沢氏は1カ月以上、代表に居座り続け、巨額な政治資金の使途などについて説明しようとはしなかった。きわめて遺憾であり国民の信を失っていることを理解していない」、愛媛「相次いだ政権放棄や首相のぶれで野党第一党への期待感は高い。が、そのリーダーが引きずる旧態依然とした政治とカネの関係に、国民は失望している。(略)進退で世論を読み違えたツケは大きい」、福島民友「ここまで小沢氏が代表を務めてきたのは、党内に小沢氏の力量に対する過信と遠慮があったからだろう。小沢氏自身が〝裸の王様〟になっていたのかもしれない」。

《内向き》東奥「代表選は小沢氏辞任からわずか五日で行われた。国会開会中という理由からとされ、党再生へ立候補者の政策を広くオープンに国民に訴え、党員らを参加させることができなかった。内向きの選挙であり、党が目指す『開かれた政党』からは遠いものとなった」、毎日「鳩山氏は代表選勝利を受け党の結束を訴え『日本の大掃除をやろう』と政権交代に向け党の反転攻勢を誓った。とはいえ、小沢氏の後押しを得てあわただしく代表に選ばれた過程は、国民に閉ざされた印象を与えたと言わざるを得ない」、南日本「責任は、小沢氏の続投を容認してきた民主党にもある。『選挙の顔』として実績のある小沢氏に頼る事情はあるにしろ、政権を担おうという政党としていかがなものか。ここでも感じられるのは、国民の声に耳を傾けず内にこもる姿勢だ」。

《脱小沢》新潟「小沢氏と『一蓮托生(いちれんたくしょう)』を明言していた鳩山氏が親小沢、反小沢の党内対立をいかにまとめ、脱小沢の独自路線を切り開いていくのか。(略)鳩山氏には新しい民主党像を形づくっていく気構えが求められる」、読売「民主党は、小沢路線の見直しでなく、踏襲を選択した。問題は、その選択が国民に理解・支持されるかどうかだ。(略)鳩山代表は、『小沢の傀儡(かいらい)政権と呼ばれるつもりは一切ない』と言う。党運営や国会対策を通じて『鳩山色』を出すなど、行動で示すことが求められよう」、日経「鳩山新代表がまず取り組まねばならないのは、西松建設の巨額献金事件による小沢氏の公設秘書の逮捕、起訴で党が受けたマイナスイメージをいち早く断ち切ることだ。(略)小沢氏が執行部の重要ポストに残り、当面の最大の課題である衆院選の責任者に就く今回の人事は極めて分かりにくい」、神戸「新代表にまず求めたいのは、西松建設事件で問われた小沢氏の政治責任をきちんと総括することだ。『小沢政治』の何を継承し、どこを変えるのかを明確にする作業でもあり、開かれた党運営には欠かせない。何の総括もなく小沢氏に新執行部入りを求めた鳩山氏の姿勢は解せない」。

与党との対立軸を示せ

《政策で競え》北海道「求められるのは民主党の旗を新しく掲げ直すことだ。明確な対立軸と選択肢を提示することこそ野党第一党の仕事である」、沖縄「政治には未曾有の経済危機で生活不安を抱える国民を奮い立たせるメッセージ力がほしい。あくまでも政策で与党と競い合い、選択可能な政治体制の確立を急ぐべきだ」、福井「国民は二者択一の政権選択より、新しい日本のかたちを明示した政策を選択したいのだ」、朝日「官僚主導から国民主導の国へ。そんな『国のかたち』を変えようという鳩山氏の主張はもっともだし、自民党長期政権に不満を募らせる有権者も共感するだろう。だが、それだけでは政権構想としては説得力を欠く。未来への期待だけでなく、今日の暮らしをどう守るのか。この疑問にこたえる現実主義が試されていることを鳩山民主党は覚悟すべきだろう」、中日・東京「総選挙へ事実上のカウントダウンが始まっている。民主党は小沢氏が必ずしも熱心でなかったマニフェスト(政権公約)を完成させる作業を加速させるべきだ。新代表のもとで民主は国会論戦を再活性化し、政権与党との対立軸を国民に明示することだ」。(審査室)

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