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2009年 8月11日
財源の裏付けが不明確―民主

マニフェストをめぐる社説
達成期限10年後に失望―自民

衆議院選挙に向けて各党のマニフェスト(政権公約)が出そろった。民主党は脱官僚の政治を実現するとの政権構想を掲げ、政策では高速道路の無料化、1人月2万6千円の「子ども手当」の支給などを挙げた。自民党は「責任力」をアピール、2010年度後半に年率2%の経済成長を実現するとの目標を示し、幼児教育の無償化などの政策を示した。100本を超える社・論説が論じた。

両党の政策に評価と懸念

《民主党》新潟「官僚丸投げ、各省縦割りを排し、政権党がすべてに責任を持つという。方向性は正しい。(略)閣議案件を事実上決定していた事務次官会議を廃止する一方、政府に国会議員約100人を配置する。首相直属で国家ビジョンや予算の基本方針を決める『国家戦略局』、行政全般を抜本的に見直す『行政刷新会議』を新設する。政権運営構想は斬新といえる。ただ、これらを実際に動かし、政治主導の国政運営へと改革するには、戦後連綿と続いてきた国の形を変えていくほどの覚悟が必要になるはずだ」、毎日「重点政策は『子ども手当』の満額支給や農家への戸別所得補償をともに11年度実施に当初予定より前倒しした。高校生の授業料支援、高速道路の無料化などアメがふんだんにちりばめられた。重点政策を複雑な税控除ではなく手当の給付で行う方向をいちがいに『バラマキ』と批判すべきではあるまい」、日経「ばらまきの典型例が農業だ。戸別所得補償で農業を再生し、食料自給率を高めるというが、旧来のコスト構造を変えずに日本の農業の競争力は向上するだろうか。自由貿易協定(FTA)の締結推進も掲げたが、その際は農産物の市場開放問題も避けられない」、河北「目玉である子ども手当。新設する代わりに所得税の配偶者、扶養控除を廃止するとしているが、子どもがいない世帯は当然、負担増となる。公共事業を削減すれば、地方の景気を冷やす恐れもある。(略)影の部分も丁寧に説明する努力が、ここでも求められている」、南日本「問題は財源である。民主党は主要施策のために2010年度に7・1兆円、最終年度の13年度には16・8兆円が必要と試算している。その財源は公共事業や人件費などの無駄遣い根絶で計9兆1千億円、租税特別措置の見直しで計2兆7千億円などとしてはいるが、具体的に何を削減するのかは明確でない」。

《自民党》産経「柱のひとつは、北朝鮮が米国に向けて発射した弾道ミサイルの迎撃が可能となるように『必要な安全保障上の手当てを行う』と明記したことだ。加えて、ミサイル防衛(MD)で連携する米艦艇の防護も挙げた。(略)集団的自衛権の表現は用いられなかったが、憲法解釈の変更に踏み込むことを明確にしたもので評価したい」、朝日「自民党のマニフェストにはがっかりさせられた。(略)具体的な予算額や手順などはほとんど書かれていない。たとえば『10年で家庭の手取りを100万円増やし、1人当たり国民所得を世界トップクラスに引き上げる』という目標。では、そのために4年の任期でどこまで達成するのか、どんな手をどの時期に打ち、予算をいくら使うのか、具体的な記述はない」、愛媛「問題は、自民党が過去の政策運営の総括抜きで新たな公約を示していることだ。たとえば、前回衆院選で『子育て期の経済的負担軽減』を掲げたが、この間、生活保護の母子加算打ち切りなどを強行した。子育て家庭の負担を増やしておきながら、新たなマニフェストには支援策を盛り込んでいる。どこで方針を変えたのか」、西日本「拍子抜けするのは目標の達成期限を衆院議員の任期以降へ先送りした『約束』が目立つことだ。(略)『衆院議員総定数の1割以上削減』や『世襲候補の制限』は『次回の総選挙から』(略)。『衆参両院議員総定数の3割以上削減』に至っては『10年後』だそうだ。これでは、取って付けたような努力目標と指摘されても仕方あるまい」。

民主批判に自民の危機感

《比べると》読売「財源の裏付けがあやふやな民主党との違いを際立たせよう、という狙いからだろうが、(自民党が)及び腰ながら、消費税や『中負担』に踏み込んだことは一応、評価できる」、中日・東京「子ども手当など家計への支援策を重視した民主マニフェストに対抗する形で、(自民党は)幼児教育の無償化などを明記した。一方、ソマリア沖での海賊対処法案に民主が反対したことに絡んで、『意見集約できない党に日本の安全を任せられない』と批判した。政権党の自民がマニフェストの中に、民主批判の文言を盛り込んだのは危機感の裏返しだろう」、信毎「(自民党は)多くの項目について『10年で』『5年を待たず』など、抽象的に触れているだけだ。(略)4年間の『工程表』を曲がりなりにも示した民主党の方が、有権者には分かりやすい」。(審査室)

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