2009年 9月29日
「行政の悪弊を絶て」

鳩山新内閣発足をめぐる社説
諸政策に期待と戸惑い

民主、社民、国民新3党連立の鳩山由紀夫新内閣が16日、発足した。閣僚は副総理で国家戦略担当の菅直人、財務・藤井裕久、外務・岡田克也、国土交通・前原誠司、厚生労働・長妻昭、金融と郵政・亀井静香、行政刷新・仙谷由人の各氏ら。鳩山首相は記者会見で官僚主導を排し、マニフェスト(政権公約)に掲げた政策の実現に全力で取り組むことを強調。訪米して外交デビューも果たした。政権発足の翌日47本の社・論説が論じた。

言葉による発信力磨いて

《布陣》中国「顔ぶれを見ただけで『変わった』と実感する。(略)ベテラン、論客に加えて小沢一郎幹事長に距離を置く議員、連立与党の党首らを配する。バランスをとりつつ実力を重視した布陣だ。かつてあった『順番待ち』や『お友達』を優先したような組閣ではない」、徳島「知名度やタレント性を重視した人選は排除した。国民の受けよりもまず実績を上げたいとの決意の表れとみたい」。

《理念》朝日「(友愛は)あまりにふんわりしていて有権者の腑(ふ)に落ちにくい。(略)では、鳩山政権の背骨となる思想は何か。腰の据わった言葉を聞きたい。(略)政治は言葉である。政治指導者は、言葉によって浮きもすれば沈みもする。新首相がまず磨くべきは、言葉による発信力である」、中日・東京「鳩山氏は日本をどこに導き、国民生活をどう改善するのか。まずは所信表明などの機会を通じて政治理念を明らかにすべきだ」。

《任務》毎日「私たちはまず、旧来の行政の悪弊を絶つことが新政権の役目だと考える。つまり行政の大掃除である。目に余る税金の無駄遣い。『省あって国なし』の縦割り行政。前例踏襲主義。政治家、官僚、業界のもたれ合い。ここからの脱却は既得権益とはしがらみのない新しい政権だからこそ可能であり、政権交代の大きなメリットでもあるからだ」、信毎「総選挙のマニフェスト(政権公約)に、月額7万円の最低保障年金創設や公立高校の実質無償化を盛り込んだ。必要となる財源は2013年度で16兆8千億円になるという。財源をどうひねり出すのか、本当にひねり出せるのか、説得力ある説明はこれまで、されていない。来年度予算の編成作業から早速、問われる問題だ」。

《心配》産経「亀井静香郵政改革・金融相は、現行の郵政民営化過程を真っ向から否定しただけでなく、中小企業融資や住宅ローンの返済猶予構想を打ち出す発言をした。この一種の〝徳政令〟は市場経済を根底から揺るがすといえる〝改革放棄〟も決定的となった。政権内の政策調整力が問われている」、京都「新政権が2009年度補正予算のうち支出されていない、『未執行分』総額8兆3千億円のうち、経済効果が期待できない事業については執行停止や新たな政策に回すという方針に自治体が戸惑っている。京都市は保育所整備や雇用対策など『無駄なものは一つもない』として、地方の声を無視した見直しは認められないと訴えている」、福島民報「新政権は自由主義経済の恩恵を享受しながら農業を守り、二酸化炭素削減25%を目指しながら高速道路を無料にするなど、相反するような施策も掲げている。連合という労組を支持基盤としながら、役所の既得権にも切り込まなければならない。困難なハードルを越えて行くには国家戦略室(局)、行政刷新会議など政治家主導の仕組みが機能することが肝要だ」。

「密室政治」脱却を目指せ

《注文》読売「子ども手当、高速道路の無料化、温室効果ガスの排出削減目標など、多くの公約は、財源確保や目標達成が疑問視されている。世論調査でも、反対が賛成を上回る例が少なくない。(略)公約を吟味し、見直すべきものは見直す勇気が大事だ」、新潟「今回民主党に吹いたのは熱風ではない。一度政権を任せてみようという冷めたものだ。政権公約にはさまざまな施策が盛り込まれている。そのすべてを強引に進めることには無理がある。(略)民主党に投票した有権者といえども、個々の政策に対しては多様な考えがあると心得るべきだろう」、日経「外交・安保政策などで開きがある社民、国民新両党と連立を組んだことが新政権の不安材料になっている。選挙結果を踏まえれば、民主党を中心とする政権運営が当然であり、社民、国民新両党は党の政策に固執するのではなく、自制が必要である」、西日本「政権公約の修正を余儀なくされる局面もあるかもしれない。そうした困難に直面したとき、『何が問題か』『では、どうするか』を、包み隠さず国民に語り掛けることが、何よりも重要である。それこそ、野党だった民主党が一貫して糾弾してきた『密室政治』『隠ぺい体質』とは対極に位置する新しい政治の作法ともいえるのではないか」。(審査室)

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