2010年 2月9日
辺野古、極めて困難に

名護市長選・普天間基地移設をめぐる社説
問われる首相の指導力

沖縄の在日米軍普天間基地移設を争点とする名護市長選で1月24日、移設に反対する稲嶺進氏が初当選した。地元の反対が明確に示されたことで、2006年の日米合意に基づく名護市辺野古への移設計画は極めて難しくなった。政府・与党がなお辺野古移設案を含む「ゼロベース」で検討を進める中で、平野博文官房長官が地元の民意は必ずしも斟酌(しんしゃく)する必要はないなどと発言し、移設先選定の行方は一段と混迷を深めている。50本を超す社・論説が取り上げた。

代替案を早急に検討せよ

《民意》琉球「鳩山政権は示された民意をしっかりと受け止め、迷うことなく、間違いのない決断をしてほしい。稲嶺氏の当選は、鳩山政権、ほかならぬ鳩山由紀夫首相にとって『厳しい結果』であろう」、中国「辺野古沖が移設先とされて13年余り。反対派として初めて市長に当選した稲嶺氏はきのう、市議会で反対決議を目指すと表明した。現行案のよりどころだった『地元合意』は崩れる。このまま計画を進めるのはもう無理ではないか」、毎日「選挙の結果、仲井真弘多沖縄県知事も辺野古移設を前提に手続きを進めるのが難しくなった。辺野古移設の道は限りなく狭まったと言える」、日経「稲嶺氏の勝利は、沖縄での前回衆院選挙の結果尊重、社民党などの連立与党の意思尊重の立場とは合致する。が、日米合意を重視する観点とは衝突する。これによって5月に予定する政府の態度決定への道のりはさらに険しくなった」、北海道「この選挙結果に対し、平野博文官房長官は『斟酌(しんしゃく)する理由はない』と述べた。政府が移転問題の見直しを進めるに当たり、選挙は無関係だと言うつもりなら問題だろう」。

《移設先の選定は》中日・東京「首相は衆院選の公約通り、県外・国外移設の検討に本腰を入れ、辺野古に代わる移設計画の取りまとめを急いでほしい」、信毎「結果を重く考えるなら、自公政権下での日米合意を根拠に米側がこだわる辺野古の米軍キャンプ・シュワブ沿岸部は選択肢から外すのが筋だ。同時に、新たな移設先の選定を加速させなくてはならない」、西日本「鳩山政権には現行の辺野古移設計画を選択肢から外して新たな移設案を検討し、早期に米側に提示することを求めたい。それが県外への移設、県内外の米軍基地を含めた機能分散案になるにせよ、沖縄の基地負担軽減につながるものでなければならないのは言うまでもない」、沖縄「岡田克也外相が『海兵隊の存在は抑止力の重要な部分だ』と国外移転を否定する以上、選択肢は『県外』しかないが、北部振興策などの『補償型』が名護市でつまずいたいま、本土の自治体に海兵隊受け入れを求めるのも難しくなる」、朝日「政府与党の作業チームは近く、各党が辺野古以外の代替案を持ち寄る。『県外』の九州の自衛隊基地や沖縄県の離島などの名前もあがっている。一括移設にこだわらず、基地の機能を分散する打開策も検討すべきだ」、産経「普天間をキャンプ・シュワブ沿岸部(同市辺野古)に移設する現行計画は著しく困難となった。日米同盟への悪影響は甚大だ。日本の安全保障の根幹を一首長選の判断に委ねてしまった首相の責任は極めて重大で、禍根を残しかねない。首相は政治生命をかけて移設受け入れを地元に説得し、一日も早く問題を決着させるべきだ」、読売「政府・与党は、グアム移設や嘉手納飛行場への統合など、地元も米国も反対する非現実的な案を軸に検討している。こうした案と比べれば、今回の市長選結果を踏まえても、現行案の方が実現可能性が高い。5月の決着が対米公約となる中、現行案を断念すべきではあるまい」。

結論の先送りは許されぬ

《政府・与党の責任》佐賀「そもそも安全保障の問題は国が判断すべきことで、地方自治体の選挙に委ねることではない。名護市が二つに割れて、険悪な状態になったのは、優柔不断から結論を先延ばしにしてきた鳩山由紀夫首相の責任だ」、神奈川「対応によっては日米関係を揺るがしかねない問題だけに、もう結論の先送りは許されない。いよいよ鳩山由紀夫首相は指導力を問われるはずだ」、京都「辺野古に代わる候補地を選定しても地元の猛反発は避けられまい。社民党が求めるグアム全面移転も米側が容易に応じるとは考えにくい。協議が行き詰まれば、普天間返還や在沖縄海兵隊のグアム移転計画そのものが頓挫しかねない。検討委では、各党が積極的に代替案を示すべきだが、言い放しは許されない。移設先の説得も含め、与党としての責任ある言動を求めたい」、高知「国は全国知事会に普天間問題を協議するよう要請するなど国民的議論を高める必要がある。仮に県外移設の場合でも、密室で地元の頭越しに決めてしまっては『沖縄の不満』を再生産するだけである」。(審査室)

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