2010年 3月30日
政治刷新を忘れたか

鳩山政権半年をめぐる社説
首相、指導力・説明もっと

鳩山政権は16日で発足から半年を迎えた。政権交代効果の期待はしぼみつつあり、各紙の世論調査で約70%あった内閣支持率は40~30%台に落ち込んでいる。首相や小沢一郎民主党幹事長が「政治とカネ」の責任を問われ、北海道教職員組合の違法献金事件も発覚した。目玉政策の「子ども手当」は恒久的な財源のめどが立たず、米軍普天間飛行場の移設問題は解決の糸口がつかめない。政権半年を44本の社・論説が取り上げた。

「政治とカネ」どうする

《評価・背景》北海道「米側の公開文書などで(密約の)存在は確実視されていた。だが歴代政権の『うそ』に政府自身がメスを入れ、実態を明るみに出した意義は大きい。昨年の政権交代直後に調査を指示した外相の見識を評価したい。(略)冷戦時代の激しい東西対立が背景にあったとはいえ、戦後の日本が掲げた非核政策を裏切った。国民への重大な背信行為である」、中日・東京「密約を結ぶに至ったのは、冷戦期、基地使用の制限を嫌う米国の軍事戦略と、反核・反基地感情が強まる日本の世論の間で、日本政府が苦渋の選択をしたという背景があったのかもしれない。しかし、冷戦終結後も密約を否定、国民を欺き続けた罪は重い」、産経「日本の究極の安全がかかっている核の問題で、当時の為政者らがとった対応は、国民の反核感情の強さと核抑止の必要のつじつまを合わせる『政治の知恵』だったともいえよう。沖縄返還など他の事例も、結果として日米同盟の維持・強化が担保されたのは事実であり、国民の利益と安全も守られたと見るべきではないか」、日経「作業は戦後外交史の再点検であり、政権交代がなければ、こうした調査はできなかったろう」。

《評価と失望》中日・東京「事業仕分けや日米密約検証などは、政治家が前面に立ち、『歯切れの良さ』を見せた。(略)しかし、首相や小沢一郎幹事長をめぐる『政治とカネ』の問題では民主党らしさが感じられない。民主党はこれまで『政治とカネ』や政治倫理に、厳しい態度で臨んできたはずだが、政権に就いた途端、身内に甘い印象がぬぐえない」、日経「『官僚依存からの脱却』という看板に沿って、首相官邸を中心とした一元的な政策づくりを目指す方向は評価できる。しかし体制の見直しだけで難しい改革を実現できるわけではない。(略)現状では政策立案の司令塔がどこなのかさえよく分からない。国家戦略局などの役割の拡充を急ぐ必要がある」、信毎「民主党は野党時代には機密費の透明化を主張していたのに、政権の座に就いた途端、使途の公開に後ろ向きになった。地方選挙では露骨に利益誘導をちらつかせたりしている。半年余り前、民主党に一票を投じて政権の座に就かせたのは一体何のためだったのか─。そんな思いで鳩山政権を見ている人は少なくないはずだ」、沖縄「普天間問題については、ほとんど裏切りに近い。最終結論は出ていないが、これまでの関係閣僚の発言を聞く限り、新政権への期待はしぼむ一方だ」。

《トップ不信》徳島「まず取り組まなければならないのは、『政治とカネ』の問題で損なわれた政治への信頼回復だ。首相は、政治資金をめぐる疑惑について小沢氏が国会で説明するよう指示するとともに、企業・団体献金の禁止の実現に全力を挙げるべきである。小沢氏に気を使うあまり、首相の指導力が見えにくくなっているのも問題だ。政策面だけでなく、党運営でも強いリーダーシップを発揮し、『二重権力』批判を払拭(ふっしょく)しなければ政権浮揚はおぼつかない」、山梨「考えてみれば、鳩山由紀夫首相にせよ小沢一郎民主党幹事長にせよ、政治資金問題は衆院選前に明るみに出ていた。しかし政権交代後、火は消えるどころか強くなっている。事件や問題自体の広がりもあるが、それ以上に本人や党の対応に国民が納得していないからではないか。ケリがついていないのだ」、産経「対等な日米関係を掲げながら、米軍普天間飛行場移設問題での迷走は米側の信頼を失い、同盟を損なう状況を招いている。高速道路の無料化は十分、進展しない一方で、新規道路建設に向けた法改正が予定されている。高速道路の整備推進を促す小沢氏の予算要望を踏まえたものだ。政策のブレは、現実に合わないマニフェスト(政権公約)の修正という面もあるが、参院選を控え、子ども手当支給に代表されるばらまき政策や露骨な利益誘導につながっている」、読売「政権が失速しつつある大きな要因は、首相自身にある。軽い発言の連発と発言のぶれを見てきた国民は、最高指導者の言葉に信をおけなくなっている。日米関係を修復するためにも、普天間問題は5月末までに決着させなければならない」。

中長期ビジョン作成急げ

《何をすべきか》北海道「政権の原点は暮らしの不安解消と政治刷新にあったはずだ。衆院選では多くの有権者がそこに期待を託した。首相は志を忘れてはなるまい。党内民主主義を徹底し、一連の政治資金問題に早急に決着をつける。財政再建や社会保障制度の中長期ビジョン作成を急ぎ、民主党政治の方向性を明確に示すことだ」、毎日「この半年、首相が決断を下した場面がどれほどあったろう。それが国民の不満や不安に結びついているように思われる。(略)ここは実行態勢を強化するためにも、思い切った外科手術、つまり内閣や党執行部の人事にも手をつけるべきではないか」、朝日「まだ足りない点は多いし、混乱も続くが、統治構造の変革という壮大な野望が簡単にかなうはずはない。時間をかけても、官僚の力や民間の知恵を政治主導に取り込んでいくことだ。同時にこの試みは、私たち有権者にも相応の覚悟を求めるものである」、福井「自民党内の混乱が拡大し、鳩山邦夫元総務相が離党届を提出。民主党と公明党が接近するなど、参院選を控え生臭い動きが目立つ。党利党略どころではない。日本が苦境に立っていることを自覚してほしい」。(審査室)

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