2010年 5月11日
裁判で真実明らかに

小沢氏「起訴相当」の議決をめぐる社説
規正法の在り方にも疑問

小沢一郎民主党幹事長の資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる収支報告書虚偽記入事件で、東京第5検察審査会は4月27日、政治資金規正法違反の罪で告発され、嫌疑不十分で不起訴となった小沢氏について「起訴相当」と議決した。一方、鳩山由紀夫首相の資金管理団体などの収支報告書虚偽記入事件では別の審査会が26日、「不起訴相当」と議決したが、実母からの資金提供を「知らなかった」とする首相の上申書の内容に疑問を投げかける異例の付言をした。「政治とカネ」をめぐる「市民目線」の判断を45本を超す社・論説が取り上げた。

党全体で自浄能力を示せ

《発表後に迷走》読売「確かに、国交省の見直し案は、値上げありきで問題が多い。しかし、もとはといえば民主党が昨年末、高速道路の建設促進を政府に強く求めたのが始まりだ。(略)国交省にすれば、民主党の要請に応じたのに,再び参院選対策を理由に拒否された、ということになろう。政府・民主党は、こうした迷走をいつまで続ければ気が済むというのか」、中日・東京「しかし国民の立場からは、政府と所管大臣、政権与党の意見が分裂している、というのが率直な印象である。鳩山政権の掲げた『政策決定の政府一元化』は、当初それなりに清新な感じを与えた。それが、党内有力者の一喝で覆ったり、関係する政治家にてんでばらばらに発言をされては、国民は何を信用したらよいのか」、日経「鳩山由紀夫首相の指導力不足は今に始まったことではない。しかし今回の混乱をみると、もはや政権の体をなしていない。(略)ある方針を掲げ、別の主張にも理解を示す、接点を探って右往左往するうちに政策目標を見失う。こうした展開は、郵政見直しや米軍普天間基地の移設問題と同じ構図である」。(審査室)

《市民の常識》読売「注目されていた検察審査会の議決は、『不起訴不当』から踏み込んで『起訴すべきだ』との結論になった。小沢氏に疑わしい事実がある以上、裁判の場で事実関係と責任の所在を明らかにしてもらいたいという、極めて常識的な判断が投影されている。検察は、まずは再捜査に全力を挙げるべきだ」、日経「検察は小沢氏に政治資金規正法違反(虚偽記入)の共犯の嫌疑をかけて調べたが、十分な証拠がなく不起訴で終わった。しかし市民の常識は別の次元にある。小沢氏が自ら提供した4億円の不記載に気づかないとはとても信じられない。ここは裁判で真実を明らかにすべきだ、という判断だ」、上毛・日本海など「審査会は、収支報告は担当者を信頼して任せていたとの小沢氏の供述について、元秘書らの報告や相談の供述に照らして『極めて不合理、不自然で信用できない』と判断。さらに陸山会が小沢氏の4億円を土地代金支払いに充てた直後に金融機関から同額の融資を受けた『偽装工作』などを指摘し、元秘書らとの共謀の認定は可能とした」、中日・東京「『起訴して公開の場で真実の事実関係と責任の所在を明らかにすべきである。これこそが善良な市民としての感覚である』検察審査会が出した議決書の結びの一文が、すべてを物語る」。

《首相へも疑念》岩手日報「26日には、鳩山由紀夫首相の資金管理団体をめぐる収支報告書の虚偽記入事件で、首相が別の審査会により『不起訴相当』と判断された。結果は『不起訴』だが、政治資金規正法の罰則規定を『政治家に都合のよい規定』と指摘するなど、議決内容は極めて厳しい」、西日本「別の検察審査会は首相について『不起訴相当』と議決した。小沢氏の『起訴相当』とは好対照の議決だが、そこでも実母からの巨額資金提供を知らなかったとする弁明を『国民感情として考え難い』と指摘された」、神奈川「『政治とカネ』に対する自浄能力は、民主党全体の問題でもある。同じ秘書絡みの事件で検察審から『不起訴相当』とされた鳩山由紀夫首相だが、この問題も、まだ一件落着とはいかない。民主党はこれ以上、国民の期待を裏切ってはならない」。

《政治家の責任》河北「『「秘書に任せていた」と言えば政治家本人の責任は問われなくていいのか。市民目線からは許し難い』そんなふうに議決は指摘している」、信毎「刑事事件としては『推定無罪』でも、政治家がかかわる問題としては、鳩山由紀夫首相もかつて述べた通り、『秘書の罪は政治家の罪』と言える面がある」、神戸「結論は対照的だが、二つの議決内容に共通するのは、自ら責任を取ろうとしない政治家への、強い不信感である。加えて、全体像を解明できない検察捜査の限界や、政治家の責任逃れを許す政治資金規正法のあり方にも疑問を投げかけている」、愛媛「政治家本人の無問責がまかり通る現状をあらためるときだ。(略)現在の政治資金規正法は、会計責任者の選任、監督の両方で過失がなければ責任が問えない。『世間一般の常識に合致していない』という審査会の付言はもっともだ。国会の自浄能力発揮を重ねて求めたい」。

一刻も早く国会で説明を

《身の処し方》朝日「議決を受けて小沢氏は幹事長続投の考えを示したが、大局に立った判断をすべきだ。一刻も早く国会で説明する。それができないのであれば、幹事長職を辞し、民主党の運営から手を引く。無駄にできる時間は、もうない」、産経「小沢氏は『潔白』を主張する根拠を失ったといえよう。刑事責任の問題に加え、政治的さらに道義的責任は明白だ。やはり議員辞職を決断すべきときである」、新潟「小沢氏は大きな勘違いをしている。昨年の総選挙で示されたのも、小沢氏不起訴に異を唱えるのも同じ民意だ。自分に都合の良い民意だけを尊重するというのでは、『大政治家』とはとても呼べない」、毎日「小沢氏は事件について国会で説明すべきである。再捜査を理由に説明しなければさらに傷は深まる」。(審査室)

ページの先頭へ