2010年 6月8日
期待に背いた罪重い

鳩山首相辞任表明をめぐる社説
選挙目当ての「顔」交代

鳩山由紀夫首相は2日の民主党両院議員総会で退陣を表明、小沢一郎幹事長とともに辞任した。在任8か月余りの短命政権だった。鳩山首相は退陣の理由として米海兵隊の普天間基地移設問題と、政治とカネの問題を挙げた。民主党は4日、両院議員総会を開き、管直人副総理兼財務相を新代表に選出。菅氏は国会の首班指名を経て、組閣に着手した。50本を超える社・論説が首相・幹事長の辞職を論じた。

小沢氏にも迷走の責任

《首相の罪》 北海道「政治不信を一層深めた首相の責任は極めて重い。(略)『国民が徐々に聞く耳を持たなくなってきた。残念だ』首相は辞任を明らかにした民主党の両院議員総会でそう述べた。考え違いをしていないか。国民の声に対し『聞く耳を持たなかった』のは首相自身である」、新潟「国民から見放された首相は退くしかない。その意味で辞任は当然である。米軍普天間飛行場の移設問題をはじめ、重要課題で首相は迷走を繰り返した。決断力と指導力、洞察力の欠如は明白である。政権交代への期待を裏切った罪は辞職で消えるものではない」、神戸「官僚任せでない、国民が主役の政治をつくる。子育てを社会全体で支える。無駄をなくし税金の使い道を変える。コンクリートから人へ公共事業のあり方を見直す。こうした訴えに新たな政治の可能性を見いだした人たちが、昨年夏の衆院選で民主党に圧倒的多数をもたらした。鳩山首相の最大の罪は、自らが掲げた理念に対する期待を、自らの言動で深い失望にまでおとしめた点にある」。

《幹事長の罪》朝日「小沢流は、数にものを言わせた強引な国会運営、選挙至上主義と露骨な利益誘導を特徴とする。小沢氏に誰もものをいえない風潮は、野党から『小沢独裁』と批判された。(略)政権交代に有権者が期待したのは、小沢氏的ではない『新しい政治』の姿だったはずだ」、日経「小沢氏は昨年春に秘書が逮捕された後、国会の場で一度も説明していない。野党の審議要求にゼロ回答を繰り返したことが、今国会で重要法案の審議が遅れる一因になった。(略)与党の実質的な最高実力者でありながら、政権の迷走に有効な手を打ってこなかった小沢氏の責任は極めて重大だ」、毎日「子ども手当などの政策を実現するための財源をどう確保するか。(略)党内に問題意識を持つ議員は少なくなかったが、『選挙の時に国民の負担増を打ち出すのは愚策だ』『政権交代すればいくらでも財源は出てくる』と財源を詰めなくなったのは06年、小沢氏が代表となってからだ」。

《普天間》西日本「根拠不明の『5月末決着』へ右往左往した揚げ句、現行計画の焼き直しにすぎない日米合意へ舞い戻った普天間の問題は、この政権が抱え込む矛盾と弱点の縮図でもあった。二転三転する首相発言の軽さ、関係閣僚と首相の意思疎通の欠如、官僚の知恵と情報に背を向けた『政治主導』の危うさ、そして『地域主権』と叫びながら沖縄や徳之島など『地域の民意』に鈍感な政治感覚をさらけ出した」、琉球「一部には、『鳩山首相が「最低でも県外」という、できもしない公約にこだわった』と批判する論調もあるが、うなずけない。首相が責任を取るべきなのは、本気で公約を実現しようとしなかった点だ。不退転の決意で米国と協議しようとせず、県外移転で沖縄以外と交渉しなかったその姿勢が問題なのだ」、産経「政権離脱した社民党は、『自衛隊は違憲状態で縮小すべきだ』と主張してきた。そうした政党と、基本政策の一致をみないまま連立を組んだところに外交・安保政策が迷走する要因があった」。

日米密約の解明も

《民主政権の行方》京都「鳩山内閣によって実現されたこともいくつかある。戦後の裏面史といえる日米安保に絡む『密約』の徹底解明が一歩進んだ。(略)事業仕分けは、国民の目に予算編成の過程や無駄な税金の使われ方、天下りのあきれた実態を明らかにする効果があった。『地域主権』の理念もようやく具体化しつつある。政権交代によって生まれた芽をどう育てるかは次期首相の手腕にゆだねられる」、中日・東京「民主党が自民党と同様、選挙目当てで首相の首をすげ替えるのは理解しがたい。首相交代後、速やかに衆院を解散し、総選挙で新政権に対する国民の信を問うのが筋である」、読売「民主党が政権の『顔』を替えれば、有権者の支持を回復できると考えているなら甘すぎる。鳩山政権の挫折の原因は、政治倫理の問題や外交・安全保障政策の失敗だけではないからだ。衆院選での政権公約(マニフェスト)への過度のこだわりや、官僚組織を排除する『政治主導』の弊害は大きい。(略)大事なのは子ども手当や、農家への戸別所得補償制度、高速道路無料化といった『財源なきバラマキ施策』を、できるだけ早く見直すことだ」。(審査室)

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