2010年 12月7日
蛮行を強く非難

北朝鮮の韓国延坪島砲撃をめぐる社説
日本の対処方針見えず

北朝鮮軍は11月23日午後2時34分、黄海の韓国・延坪島(ヨンピョンド)を砲撃、韓国軍も応戦し砲撃戦になった。韓国側は兵士と民間人計4人が死亡、17人が負傷し、島の民家が多数炎上した。北朝鮮が韓国の陸上を砲撃したのは1953年の朝鮮戦争休戦後、初めて。米・韓は28日から4日間、黄海で合同軍事演習を実施、中国を中心に外交交渉も続いた。北朝鮮を批判する社・論説は80本を超えた。

米中は収拾へ外交努力を

《暴挙》読売「民間人の住む島を突然砲撃するとは、重大な武力挑発である。断じて許せない。戦争再発につながりかねない言語道断の暴挙であり、朝鮮戦争休戦協定への明白な違反だ。強く非難する」、北日本「北朝鮮がまたも軍事的暴挙に出た。黄海上の軍事境界線の北方限界線(NLL)に向けて陸上から砲撃し、韓国軍も応戦して韓国軍兵士や韓国住民多数が死傷した。黄海上で韓国軍が行っている軍事演習に反発、対抗措置を取ったようだが、民間人まで巻き込み、蛮行と言わざるを得ない」。

《狙い》西日本「北朝鮮の最大の狙いは、米国との直接交渉を実現することだろう。朝鮮戦争は53年に休戦したが、休戦であって終戦ではない不安定な状態にある。(略)北朝鮮は米国に、休戦協定を平和協定に転換するよう再三、求めている。北朝鮮では現在、金正日(キム・ジョンイル)総書記から三男正恩(ジョンウン)氏への権力移譲準備が進んでいる。権力移譲を円滑に進めるためには、米国と平和協定を結んで、米国からの『体制の保証』を得たいとの希望がある」、南日本「北朝鮮は核兵器開発に直結するウラン濃縮施設の存在を公表したばかりだ。(略)一連の挑発行為の狙いは、国内的には金体制の引き締めだろう。9月の労働党代表者会で金正日総書記の後継者として登場した金正恩氏は政治的にも軍事的にも実績がない。砲撃や核実験を金正恩氏の手柄とし、後継体制の基盤を固めようとしているとの見方が出ている」。

《中・米の責任》中日・東京「中国は哨戒艦事件にもかかわらず金正日総書記の訪中を五月、八月と二回も受け入れ支援を約束し、金正恩氏への権力世襲も容認する姿勢を示した。(略)日米韓のみならずロシアも非難に加わった今回の砲撃にも中国は各国に冷静な対応を呼び掛けるのみで北朝鮮非難を避けている。(略)今こそ、中国は対北朝鮮政策を見直し、日米韓、ロシアとともにスクラムを組むべきだ」、京都「(中国は)副首相級の国務委員を急きょ、韓国に派遣したうえで、来月上旬に6カ国協議の緊急代表者会合を北京で開催することを提案した。事態が緊迫の度を増したことを受けて外交努力を続けている。中国抜きに、今回の事態の収拾は図れない。いまこそ、その指導力を存分に発揮してほしい」、毎日「クリントン政権は00年、『ぺリー・プロセス』に沿ってオルブライト国務長官を北朝鮮に派遣した。北朝鮮との戦闘は現実的でないとの認識に立つ訪朝だった。(略)次のブッシュ政権は北朝鮮を『悪の枢軸』と呼びつつ、後に融和姿勢に転じた。歴代米政権の対応は一貫性を欠いていよう。『軍事力を背景にした外交』が通用しにくい北朝鮮問題は、米国の不得意な分野だろうが、継続的で戦略的な外交努力が望まれる」、朝日「局面を転換させる大きな力を持っているのは、やはり米国と中国だ。一昨日、クリントン米国務長官と、中国外交を統括する戴秉国国務委員が電話で話し合った。戴氏は『重要なときに中米が建設的役割を積極的に果たさねばならない』と語った。その通りである。両国が対話の環境づくりに協力して努めてもらいたい」。

追加制裁の検討も急務

《日本は》北國「砲撃戦直後の菅首相の言動からは、安全保障上の脅威に対する毅然とした姿勢は感じられず、一国の指導者としての危機管理能力に不安を禁じ得ない。現実化する北朝鮮の軍事的脅威を深刻に考えるなら、対策本部の設置ではなく、国家の緊急事態に対処する『安全保障会議』を招集する選択肢もあり得たのではないか」、産経「韓国には2万8千人以上の日本人がいる。(略)自衛隊の活動は戦闘地域でない『後方地域』に限られ、自衛官の武器使用も正当防衛などに限定されている。これで実際に邦人を救出できるのか。自衛隊の有事対応能力の強化を含め、朝鮮半島有事に備えた法整備も急務である」、日経「菅政権がいくら米韓などに協力を呼びかけても、日本自身の対処方針が明確でなければ、他国との連携を深めようがない。日本は1990年代前半の朝鮮半島危機を踏まえ、韓国からの邦人救出などを目的とした危機対応指針を練ってきた。その内容に不備がないかを改めて点検する必要がある。北朝鮮への送金規制の強化など、日本独自の追加制裁の検討も急がなければならない」。(審査室)

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