2011年 1月25日
道筋示し政策実現を

菅再改造内閣発足をめぐる社説
税制改革、TPP、打開早く

菅直人首相が14日、内閣再改造と民主党役員人事を行った。尖閣諸島沖の中国漁船衝突事故の対応が不適切などとされ、昨年11月、参院で問責決議が可決された仙谷由人官房長官、馬淵澄夫国土交通相は退任。仙谷氏は党代表代行に回り、後任には枝野幸男幹事長代理が就任した。たちあがれ日本の与謝野馨共同代表が離党し、無所属で経済財政相として入閣する急展開もあった内閣再改造を、56本の社・論説が取り上げた。

野党要求でやむなく改造

《問責の末に》京都「自民党や公明党は、参院で問責決議を受けた仙谷由人官房長官らが出席するなら国会冒頭からの審議拒否を明言しており、予算審議に入るため退任させざるを得なかった、というのが実情だろう。野党の要求に屈した〝追い込まれ改造〟の印象が強い」、朝日「仙谷由人官房長官らに対する参院の問責決議を受け、やむなく人事に踏み切ったのが実態である。しかし、菅首相はきのう(14日)の記者会見で『日本の危機を越える力を最大にする』ことが眼目だと強調した。とするなら、これからの実際の仕事ぶりでそれを示してもらわなければならない」、日経「今回の改造は、問責決議を受けた閣僚が辞める事例を増やす結果となった。法的拘束力のない問責決議で閣僚の辞任が相次ぐのは望ましくない。民主、自民両党はともに与党と野党を経験し、衆参ねじれ国会の難しさを痛感しているはずだ。問責決議をどう扱うべきか。与野党が冷静に話し合うときである」、北日本「枝野氏の起用は『反小沢色』の維持で政権浮揚につなげたいとの思惑が働いたと見ざるを得ない。小沢氏支持グループとの溝は深まる一方ではないか」。

《与謝野氏入閣》毎日「自民党を離党し、さらに、たちあがれ日本も離れて入閣した与謝野氏の行動には野党からの批判も強い。そんな現状で肝心の党内もまとめられないのであれば、野党との協議は不可能だ。ところが、そうした厳しい状況でありながら、再改造内閣発足後の菅首相の記者会見から、自らの進退、いや民主党政権の存亡を懸けるといった強い決意が伝わってこなかったのは、どういうことか」、中日・東京「最終的に消費税率引き上げがやむを得ないとしても、まずは行政の無駄をなくすことに力を注ぐべきであり、再改造内閣はそのための布陣とすべきだった。民主党大会で『大増税路線にするんですか』とヤジが飛ぶのも当然だ。与謝野氏起用が『増税シフト』なら許すわけにはいかない」、琉球「与謝野氏を入閣させたのは、菅内閣が消費税増税など増税路線へ転換することを意味する。またも公約違反の腹づもりだ。首相自ら『最強の態勢』と胸を張っているが、沖縄には『最強』の表現が空疎に響く」、読売「今回の改造では結局、連立政権の枠組みを変更できなかった。菅首相は、たちあがれ日本との連立工作に頓挫し、次の手を打ちあぐねているのだろう。(略)しかし、今回の与謝野氏の入閣で政界再編の芽が出てきたとも言える。与謝野氏が言うように、国の命運を左右するような課題には各党が『政争の場を離れて』取り組むべきだ」。

日本社会の将来像必要

《首相が主導を》産経「TPP(環太平洋連携協定)参加に積極的な海江田万里氏を経財相から経済産業相に横滑りさせた。現在ではTPPのルール作りに参加できず、国益を損なっている。こうした事態を避けるため首相は早急に参加方針のとりまとめに動かねばならない」、福島民報「環太平洋連携協定(TPP)参加に向けた積極姿勢も今回の改造のポイントだ。しかし、影響の大きい農林漁業を抱える地方にとって、簡単に了解できる話ではない」、信毎「政権が目指す方向を、ある程度示したことは評価できる。だが、大事な点が抜け落ちてはいないか。税制改革やTPP交渉の検討は、いつどのような経緯でメーンテーマとなったのか、実現へどのような道筋を考えているのか、よく分からないことである」、山陽「『脱小沢』路線は今回も堅持された。だが、小沢氏の『政治とカネ』をめぐる問題については、これまでも国民や野党が国会の場で説明するよう再三求めてきたにもかかわらず、進展しておらず、菅首相の指導力に疑問が投げかけられている。首相は年頭記者会見で『政治とカネの問題にけじめをつける年にしたい』と強調した。今度こそ実現できなければ、首相自身の責任が問われよう」、北海道「国民は日本社会の将来像を求めている。改造を機に政権交代の原点をいま一度党内で共有し、大きなビジョンを提示してもらいたい。『人間のための経済』という理念を体系的な政策として実行に移す。それが民主党の使命であるはずだ」。(審査室)

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