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2011年 5月24日
エネルギー政策、道筋を

浜岡原発全面停止をめぐる社説
首相決断に評価と疑問

菅直人首相は6日、浜岡原子力発電所(静岡県御前崎市)について、すべての原子炉の運転停止を中部電力に要請した。中部電は要請を受け入れ、同原発は14日、全面停止した。東京電力福島第一原発事故を踏まえ首相は、東海地震の震源域に入っている浜岡原発は地震や津波への備えが現状では不十分と判断した。また原発重視の政府のエネルギー基本計画を白紙で見直すことも表明した。原子力安全規制にとって画期的な「首相の決断」を70本を超す社・論説が取り上げた。

なぜ今、浜岡だけか

《やむを得ない選択》 読売「浜岡原発は、今後30年以内に87%の確率で起きるとされる『東海地震』の想定震源域の真ん中にある。日本の大動脈である東海道新幹線や東名高速道路にも近い。地震や津波で東京電力福島第一原発のような大事故を起こした場合、深刻な事態を招きかねないだけに、やむを得ない選択だ」、新潟「浜岡原発の問題を放置してきた国の罪は重い。それを首相の決断として改めるという意味では英断だ。しかし、なぜ今になって浜岡原発だけなのかという疑問は残る。浜岡以外にも活断層の懸念や、津波対策などの不備が指摘されている原発は多い。首都圏に近いという理由なら言語道断である。危険に中央も地方もない」、上毛・日本海など「福島第1原発の大事故で、浜岡原発をはじめ全国の原発は大丈夫かという疑問が突きつけられていた。今回の要請は浜岡原発の脆弱(ぜいじゃく)性からみて妥当だが、専門家の意見をどこまで聞いたか疑問は残る。発表も唐突すぎる。首相らしいパフォーマンスだが、説明不足の感は否めない」。

《余波が》毎日「中部地方は自動車産業を中心に製造業が集積している地域だ。東日本の電力不足から、中部地方への生産移管を進めている企業もあるだろう。浜岡原発の運転停止は、そうした企業に影響するかもしれない。東日本大震災によって日本経済は大きな打撃を受けた。電力不足の影響がそれに拍車をかけないように、電力会社間の融通も含めて、電力確保に全力を尽くしてほしい」、静岡「浜岡原発は地元の御前崎市を中心に地域経済の中核を担っている。津波対策の防潮堤を設置し、運転再開にまで要するとされる2~3年の間、地域経済に与える影響は大きい。これを最小にとどめるため、全面停止を要請した国は十分な支援策を示すべきだ」、産経「菅首相が、関係者への相談も事前の検討も抜きにして突然打ち出した浜岡原発の全面停止要請は、日本国内での電力不足の連鎖反応を引き起こし得るのである。国境を越えて電力網が覆う欧州と異なり、日本は他国から電力供給を受けられない。福島原発事故の余波で脱原発に傾くドイツなどとは事情が違うのだ。そうした差異を首相は理解しているのか」。

抜本的な安全対策を

《安全策新たに》日経「原発の安全性の判断で大事なのは地震の発生確率よりも、大地震や津波への対応力が十分あるかどうかだ。高い防潮堤を築いても、乗り越える波が来ない保証はない。乗り越える波を想定し、建屋への浸水を防ぎ重要設備は2つ以上を異なる場所に備えるなど、さまざまな対策を組み合わせなければならない」、中日・東京「近年、宮城県の女川原発や新潟県の柏崎刈羽原発も、想定を大きく超える揺れに見舞われ、そのたびに押っ取り刀で耐震強化や耐震基準の改定が図られた。この国で地震と原発が共存していくための根本的な安全策は、まだ見つかっていない」、北海道「全原発を一斉に止めるのは現実的でないとしても、危険度の順位を付けた中長期的な工程表を作成し、順番に停止して、抜本的な安全対策を施すことは可能ではないか。浜岡をやり玉に挙げる代わりに、他の原発の運転にお墨付きを与えるようなことは避けるべきだ」。

《新エネ戦略》西日本「菅首相は原発を柱に据えた現行のエネルギー基本計画について白紙に戻すと表明した。どう考えても原発集中が進むような現行計画の実行は、地震などの大災害のリスクを考えると現実的ではない。全面見直しの方針を、どんなスケジュールでどう肉付けしていくか。政府の決定は全国民に影響する」、佐賀「『脱原発依存』を掲げる以上、中長期的な視点に立った、具体的な原子力政策を早急に示してもらいたい。エネルギー基本計画の見直しに当たっては、発電と送電の分離など電力市場の改革もあり得るだろう」、朝日「心配なのは首相の求心力だ。見直し議論の場やスケジュールも定かでない。首相の発言である以上、きちんと道筋をつけてもらいたい。普天間問題のように『やっぱりだめだった』は、金輪際ごめんである」。(審査室)

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