2011年 6月14日
退任時期示さず欺く

首相退陣表明・不信任案否決をめぐる社説
被災者不在の政争、猛省を

菅直人首相が2日の民主党代議士会で、東日本大震災や原発事故の対応に一定のめどがついた段階で退陣する意向を表明したため、内閣不信任決議案は否決された。しかし、退陣は6月中とする鳩山由紀夫前首相と、来年まで先延ばししたい首相が対立。憤慨した鳩山氏が首相を「ペテン師」とののしり、泥仕合の様相に。結局、菅首相が早期退陣を受け入れ、大連立構想も浮上、政局は予断を許さない状況が続いた。90本を超える社・論説が退陣表明を論じた。

政治の機能不全避けよ

《早く辞任を》読売「首相は退陣表明後の記者会見で、原発事故の収束に努力する考えを示し、辞任を大幅に先延ばしする可能性にまで言及した。これでは話が食い違う。民主党内からも強い反発が出ている。(略)『何も決められない国会』が続き、国政が停滞する。政権弱体化を見透かされ、国際関係の再構築もおぼつかない。そうした事態は回避しなければならない。政治の機能不全を避けるため、退陣までの期間はできるだけ短くすべきである」、福井「誰もが早期退陣と思った菅直人首相の民主党代議士会での発言。首相は一夜明けていとも簡単に〝撤回〟した。参院予算委員会で前日の発言の一部を取り上げ、震災、原発事故に『一定のめどがつくまで、ぜひとも私に責任を果たさせていただきたい』と強調、事実上の続投宣言までしてみせた。そこまで首相という地位にしがみつきたいのか。これ以上、醜態をさらすべきではない」、産経「内閣不信任決議案採決という重大局面で、最高指導者と前任者の約束のいいかげんさにもあきれてしまうが、これ以上の居座りを画策する首相の姿勢は国民を愚弄するものだというほかない。存在自体が『人災』と呼ばれてきた首相が、さらに『死に体』となった今、未曾有の震災への対応に『めど』をつけることなど困難だ。即刻、退くしかあるまい」、朝日「結果的に、与野党議員を欺いた発言に、『菅さん、それはないでしょう』というしかない。(略)いったん辞意を口にした首相が、退任時期を示さないまま地位にとどまり続けるのは無理がある。政治不信をさらに膨らませるだけだ。首相は、いつ辞めるのか。それは年内の遠くない時期というのが常識的だろう」、日経「首相は退陣時期を明確に区切ったうえで、谷垣禎一自民党総裁らに法案処理などの協力を求めるべきだ。赤字国債発行法案などの重要法案を処理して、できるだけ早く退陣する環境を整えることが、首相に残された最後の務めである」。

《野党も野党》上毛・大分など「『政治とカネ』などで批判してきた小沢氏を利用する形で内閣を揺さぶるのは筋違いではないのか。野党にとって不信任案は大きな武器だが、震災復旧もままならない段階での提出は大義を欠いていたと言わざるを得ない」、中国「自民、公明など各党は早速、時期を示さない首相の期限付き退陣表明を『茶番だ』と厳しく批判した。ならば、政策も全く異なる小沢氏らを当てにしてまで『菅降ろし』に躍起になったことはどうなのか。(略)本年度予算の財源確保に不可欠な公債発行特例法案もまだ成立していない。党利党略に走らず、ここは審議に協力するべき時ではないのか」。

二人の曖昧な「合意」

《ペテン師とは》中日・東京「前首相が現職首相を『ペテン師まがい』とののしる異常さ、首相の辞任時期をめぐる混乱にあきれ、開いた口がふさがらない。(略)不信任案の可決回避のために早期辞任をにじませた首相が老練だったのか、それを真に受けた鳩山氏ら多くの民主党議員が甘かったのか。それを問うのは、この際あまり意味がない。混乱の原因は、曖昧な『合意』をした首相と鳩山氏の双方、その内容を代議士会で確認し切れなかった民主党議員にあるからだ」、毎日「鳩山氏は復興基本法案(成立)や2次補正予算案編成にめどがついた段階で首相が退陣すると口頭で約束したという。だが、首相は否定しており、そもそも密室談合の中身を金科玉条のごとく取りあげる感覚を疑う。1年前の首相退陣の際、今期限りの議員引退を表明しながら撤回した鳩山氏に『言葉の重み』を説く資格などあるまい」。

《猛省を》福島民報「被災地である本県にとって内閣不信任決議案否決の『空騒ぎ』は一体何だったのか。東日本大震災の復旧・復興に道筋をつけ、福島第一原発事故を一日も早く収束しなければならない大事な時期に、政争で喜々として走り回る国会議員の姿に多くの被災者、県民は怒り、あきれ、失望したのではないか」、河北「被災者は生活再建の見通しも立てられず、不安にさいなまれている。(略)被災者を置き去りにしたこの時期の政争について、首相にも与野党にも猛省を促したい」。 (審査室)

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