2011年 7月5日
居直り首相の延命策

会期延長・復興関連人事をめぐる社説
政治の機能不全極まる

通常国会は会期末の6月22日、延長幅をめぐり二転三転した上で70日間延長を決めた。菅直人首相は27日に復興関連人事を行った後の会見で、退陣の「一定のめど」は第2次補正予算案、特例公債法案、再生エネルギー法案の成立と明言。しかし退陣時期がなお不透明なことや自民党議員の政務官起用に与野党内から反発が強まり、延長国会は波乱含みだ。約70本の社・論説は、政治の迷走、首相の政権運営を厳しく批判した。

国民不在の永田町劇場

《延長幅迷走》産経「延長幅をめぐる一連のドタバタほど、国民の政治不信を決定的にしたものはないだろう。退陣表明したにもかかわらず、居座りを決め込み、延命を図る菅直人首相。野党と連携して首相に退陣を迫ろうとした与党執行部。90日、120日、50日と二転三転した会期の延長幅…。政治の機能不全ここに極まれりである」、西日本「与野党の協力関係が構築できないまま、会期の延長が決まってしまった。これでは、一体何のために会期を延長するのか。震災復興に最優先で取り組む建設的な延長国会になるのか。強い疑問と懸念を禁じ得ない」、上毛・日本海など「首相の進退をめぐり真夏には再び民主党の迷走が繰り広げられるだろう。こんな政治で、一日も早い復旧・復興を望む東日本大震災の被災地をはじめ国民の理解が得られると思っているのだろうか。国民不在の永田町の政治劇にあきれているに違いない」。

《いつ辞める》中日・東京「一度退陣に言及した首相が地位に恋々とするのは、見苦しいばかりか国益を毀損(きそん)する。衆院で三百議席を超える巨大与党が首相に『鈴』を付けられないのも、どうしたことか」、北國「首相が退陣時期を明らかにすれば、自民、公明両党が法案成立に協力すると言っているのに、首相は頑として退陣時期を語らない。これでは法案成立より『延命』を優先していると言われても仕方ないだろう」、東奥「今、政治に求められているのは東日本大震災からの復旧・復興、福島第1原発事故の収束に全力を挙げることだ。そのためにも与野党の協力体制を早急に築かねばならないが、菅首相の下では無理だ」、徳島「『首相はいつ辞めるのか』といった議論ばかりを続けていいはずがない。(略)首相が退陣時期を明らかにしないことが政治空白を生んでいるのなら、首相は重く受け止めて対処すべきだ」、朝日「すべての国会議員が大胆に発想を変えたらどうか。『首相おろし』で与野党が協調できるのならば、首相が意欲を示す政策課題に取り組み、さっさと片づけてしまうのだ。(略)それで局面を変えれば、首相は続投の大義名分を失う」。

《人事に反発》日経「退陣表明した首相が閣僚入れ替えに動くのは異例だ。参院自民党から浜田和幸氏を総務政務官に起用したことには野党が猛反発しており、混乱を拡大させるような判断は首をかしげざるを得ない」、新潟「退陣の意向を表明しながら、異例の閣僚人事を断行した。中でも国民をあぜんとさせたのが、参院自民党から復興担当政務官への起用である。(略)菅政権が早晩、機能不全に陥るのは必至である」、河北「首相が今すべきことは意味もなく野党を挑発したり、奇策を用いて政権延命を図ったりすることではない。手段と目的をこれ以上混同してはならない」、京都「これは菅直人首相の『居直り宣言』なのだろうか。(略)首相の強いこだわりとは裏腹に、政権の求心力は低下している。閣僚人事をてこに政権基盤を安定させ、復興への道筋を付ける余力があるかは、疑問だ」。

政治空白長引かせるな

《退陣3条件》読売「首相が決めた新布陣で、政府・与党が一体となり、野党の協力も得て、こうした法案などをすんなりと成立させられるのか、疑問だ。これ以上、政治空白や政策の停滞を長引かせてはならない。早期の退陣を改めて求めたい」、秋田「再生エネルギー法案は与野党で賛否が分かれており、合意形成に時間がかかるのは必至。国の将来を左右する重要な法案であり、十分な議論が求められる。退陣の条件に掲げるなど、もってのほかだ」、中国「『成立しない時にはどうするのか』という問いには答えなかった。成立しなければ政権を手放さないとも受け取れる。『政権の延命策』と勘繰られるのも仕方あるまい」、沖縄「首相が退陣3条件を示した以上、野党は『復興第一』のスローガンを掲げて法案審議に柔軟に対応したほうがいいのではないか」、毎日「これまで首相が自らの役割をはっきりさせなかったことが与野党の疑心暗鬼を生み、無用の混乱を広げてきた。遅きに失した表明とはいえ、3条件で身を引くのは現状では妥当な線と言える。与野党は延長国会で合意形成に全力を挙げ、政治の歯車を前に回すべきである」。(審査室)

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