2011年 10月4日
基地問題の解決急務

野田内閣の外交始動をめぐる社説
安定政権で国際公約果たせ

野田佳彦首相は国連総会出席のため訪米し、9月22日ニューヨークでオバマ米大統領と初会談した。大統領は米軍普天間飛行場の移設問題について具体的な進展を強く求め、野田首相は沖縄の理解を得るべく「全力を尽くす」と答えた。また首相は国連で演説し、原発事故の早期収束や、安全性を高めたうえで原発輸出を継続する意向を表明した。60本を超す社・論説が内閣の外交始動を取り上げた。

移設には柔軟姿勢も

《普天間》日経「オバマ米大統領は野田佳彦首相との会談で、普天間問題で『結果』を出すよう迫った。同盟国である日本の首相との初顔合わせで、米大統領が懸案を巡り、ここまで単刀直入に善処を迫るのは異例といえる。原因をつくったのは米国に空手形を連発してきた民主党政権にあると言わざるを得ない」、中日・東京「辺野古への移設は、名護市をはじめ、公有水面埋め立ての許可権を持つ仲井真弘多県知事が反対しており、実現はかなり難しいのが実情だ。首脳同士の初顔合わせは厳しい現状を直接伝える好機だったが、首相は逸してしまった。(略)県内移設を強行すれば、県民の対米軍感情は決定的にこじれ、日米同盟の健全性は失われる。首相はそこまでを見通して日米合意推進を大統領に誓ったのだろうか」、沖縄「レビン委員長(民主党)、マケイン上院議員(共和党)ら議会重鎮は、辺野古移設計画を『非現実的』だと批判し、『手に負えない怪物』だと指摘する。オバマ政権は米議会に激しくつつかれ、野田政権は沖縄から『ノー』を突きつけられ、どちらも立ち往生―それが普天間問題の現状だ。(略)追い詰められた政権が、国家権力を背景に強引に事を進めるようなことがあれば、問題はこじれるばかりである」、熊本「普天間飛行場の移設計画では、鳩山由紀夫元首相の『最低でも県外』という裏付けのない発言が日米関係をぎくしゃくさせた。その二の舞いとなる恐れもある。日米両政府は辺野古移設に固執せず、選択肢を広げ柔軟に検討する時期にきているのではないか」。

《原発輸出》中国「事故で傷ついた日本の技術力の信頼回復をアピールした上で、ビジネスを推し進めようという意図も透けて見える。しかし、安全性の確保という点から見ても見切り発車と言わざるを得ない。そもそも第三者機関『事故調査・検証委員会』による検証作業を終えなければ、原発の安全対策は確立できないはずだ」、朝日「今後のエネルギー政策を具体的に語ることもなく、原発輸出の継続を宣言した。訪米前に米国紙に、原発の再稼働時期を『来夏に向けて』と明言したことと合わせて、菅前首相の『脱原発依存』の後退を図っているようにしか見えない。菅氏が5月の国際会議で、自然エネルギーを拡大させる野心的な数値目標を示したのに比べて、何とも見劣りする」、読売「首相の発言は、原発の安全性を徹底的に高め、引き続き活用する方向に軸足を置いたものだ。具体的な展望のない、菅前首相の『脱原発路線』と一線を画した。原子力の平和利用の先頭に立ってきた日本としては、現実的かつ妥当な判断である」。

「言ったことはやる」

《信頼回復》産経「野田佳彦首相がオバマ米大統領と初めて対面した日米首脳会談は、米軍普天間飛行場移設を筆頭に、大統領が『早く宿題を片付けよ』と言わんばかりに日米の懸案解決を次々と突きつける異例の展開となった。同盟の空洞化に加え、内政・外交でかつてない停滞にさまよう日本に対し、同盟国の米国が強い焦燥といらだちを覚えていることの証左といえる。(略)首相は『日米が基軸』といった常套(じょうとう)句を繰り返すだけでなく、速やかに結果を出すべきだ」、毎日「野田首相は、オバマ大統領が就任後2年半余で会った4人目の日本の首相だ。(略)これでは米側が日本のリーダーの言動に信頼を置けないのは当然だろう。その意味で、野田首相がオバマ大統領に『安定した政治の実現』が野田政権の使命だと強調したのは妥当な認識である。それなくしては、日米同盟の深化も、国際社会における日本の発言力強化も不可能である」、西日本「2年前の国連の会議で、当時の鳩山由紀夫首相が『温室効果ガス排出の25%削減』を表明し、喝采を浴びた。しかしその後、国内調整は全く進まず、国際公約となったはずの削減目標は宙に浮いたままだ。(略)『言ったことはやる』というのが外交の基本である。『あれは決意表明でした』では済まない。首相演説によって、原発事故の早期収束、財政健全化への着手は国際公約となった」、岩手日報「前2代の首相の失敗は政府や与党の合意もなく、不可能を可能と言って見せかけのリーダーシップを演出したことにある。地味で結構。まずは震災復興と原発事故の早期収束を確実にし、国民の信頼を取り戻すことが国際的な立場を高める大前提だ」。 (審査室)

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