2011年 12月13日
二重行政に終止符を

大阪W選・維新の会圧勝をめぐる社説
無策の既成政党に不信

大阪のダブル選挙は11月27日投開票され、市長選は前府知事で大阪維新の会代表の橋下徹氏が、知事選は前府議で同会幹事長の松井一郎氏がともに圧勝した。民主、自民両党は府連レベルで相乗りし市長選は現職を、府知事選は前池田市長を支援したが完敗した。最大の争点は、府・市の二重行政を解消するため大阪、堺両政令市を再編する「大阪都構想」だったが、有権者の支持を得た。橋下氏は都構想実現に必要なら次期衆院選に候補を立てると明言し波紋が広がった。45本の社・論説から。

橋下氏の実行力を評価

《勝因・敗因》徳島「橋下氏は、歯切れのいい演説や根強い人気に加え、府知事就任以来、積極的に課題に切り込む決断力と実行力が評価された。教育条例などでみせた〝橋下流〝の手法はやや強引さが目立ったが、それ以上に、公務員改革や脱原発のような国政の方針が定まらない府民の関心事に、しっかり応えようとする姿勢が有権者をひきつけたのだろう」、読売「民主、自民両党府連などの支援を受けた候補は、ともに都構想への明確な対案を示すことができず、支持を広げられなかった。大阪再生のためには、強い指導力と大胆な制度改革が必要だ、と有権者が判断したのだろう」。

《都構想》熊本「(大阪都は)大阪市と堺市を特別区に再編した上で、広域行政を都に一本化する構想。大阪衰退の主因が府と政令市の二重行政にあり、再編・統合が必要との主張からだ。維新の会の公約は都構想を成長戦略の実現手段に位置付け、年平均2%以上の実質成長と、10年間で2割の経済規模拡大、10万人超の雇用創出を目標に掲げた。とはいえ、選挙戦で都構想についての議論が深まったとは到底言えない状況だ」、南日本「維新の会は特別自治区の区割りや各区間の財政調整の具体的手法は示しておらず、都構想をいかに産業振興に結びつけるかのアイデアを示したわけでもない。橋下氏と橋下府政の路線堅持を明らかにしている松井氏は、具体的な制度設計を急ぎ、分かりやすく説明してほしい」、毎日「特別自治区間の財政格差や区議会の設置などによる行政コストの増大といったマイナス面も指摘されている。特別自治区の区割りも大きな論議を呼ぶだろう。住民の生活にどのような影響が出るのか丁寧に説明し、不安を取り除いていく作業が欠かせない」。

《既成政党不信》産経「民主党政権は『地域主権を確立し、財源や権限を移譲して地域の自立を促す』と公約してきたが、改革は一向に進まない。大阪の選択は、無策の民主党政権への地方からの厳しい批判でもある」、新潟「出口調査結果で注目すべきは、民主、自民両党支持層のそれぞれ4割が当選した2人に投票したことだ。自公政権から民主党へ歴史的政権交代が果たされた。にもかかわらず、国民の期待は裏切られ続けている。大阪ダブル選で示された民意は、既存の政党、政治に突きつけられた『ノー』であることは間違いがない」、朝日「民主党も自民党も、有権者の歓心を買うような甘い公約を並べたてる。玉虫色の表現で、その場しのぎを重ね、ものごとを決めきれない。こんな政治にへきえきした有権者が、良きにつけあしきにつけ、信念を掲げ、説得の前面に立つ橋下氏の指導力に賭けてみたいと思うのは、自然なことだったのではないか」、中日・東京「今回の選挙に限らず既成政党は、国民には既得権益の擁護者に映る。その根本を変えない限り、新党をつくったり政界を再編したりしても、国民のための政治を実現するのは難しい」。

理解得る姿勢が欠かせず

《期待・懸念》日経「両氏の公約をみると、自治制度そのものを手直ししなくても、早期に実現できる項目が少なくない。府内の水道事業の統合や、府と市にそれぞれある信用保証協会の一本化などだ。大阪湾の経営の一元化なども大阪の成長戦略を描くうえで重要になる。両氏が協力して、府と市の『不幸せ(府市あわせ)』といわれる縄張り争いの歴史に終止符を打ち、二重行政の無駄に切り込むことを期待したい」、佐賀「維新の会の公約は都構想だけではない。教員や公務員の規律を定める教育基本条例案と職員基本条例案の成立、原発依存度の低下がある。ほかにも市営地下鉄、バスの民営化、3万9千人の市職員のうち1万2千人の削減などを目指す。(略)どこまで公約を実現できるか、橋下氏の手腕が試される」、北海道「考え方が違う勢力を敵と見なす得意の『けんか民主主義』を、今後も続けるつもりなのだろうか。ダブル選挙の主役はまぎれもなく橋下氏だった。それだけに、このままでは『橋下氏による大阪支配』との批判が強まろう。『独裁』で押し切るのではなく、政策への理解を得ていく姿勢が、橋下氏らには欠かせない」。(審査室)

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