2011年 12月20日
政治不在、くっきりと

国会閉幕・2閣僚問責決議をめぐる社説
首相の任命責任重い

参院は9日の本会議で自民、公明両党が提出した一川保夫防衛相と山岡賢次消費者行政担当相への問責決議をそれぞれ野党の賛成多数で可決した。野田佳彦首相は2閣僚を続投させる方針を表明したが、野党は来年1月召集の通常国会では審議拒否も辞さない構え。与野党対立が強まるのは必至で、首相は困難な政権運営を迫られる。臨時国会は、国家公務員の給与を削減する臨時特例法案などの重要法案を積み残したまま、51日間の会期を延長せず閉幕した。50本を超す社・論説から。

資質欠く担当閣僚

《資質に疑義》北海道「(一川氏は)在日米軍再編のきっかけとなった沖縄少女暴行事件の詳細を知らないと答弁し、国民をあきれさせた。山岡氏はマルチ商法業界との関わりを指摘され、消費者を守る大臣として適格性に疑問符が付いた。いずれも担当閣僚としての資質を欠くと言わざるを得ない」、読売「防衛省は多くの重要案件を抱えている。次期戦闘機の選定、米軍普天間飛行場移設の環境影響評価書、南スーダンへの部隊派遣などだ。現時点での閣僚交代による悪影響を避けたい事情もあろう。しかし、一川氏には、その自覚があるのか。(略)国防の責任者としての能力と適性を欠いており、沖縄との信頼関係の回復も難しい」。

《沖縄の怒り》琉球「問責決議は『前沖縄防衛局長が女性の尊厳を踏みにじる発言をした。監督責任のある防衛相が職を辞して責任を取るべきだ』とする。残念ながら、沖縄への差別構造を問う姿勢が見えない。沖縄に真摯(しんし)に向き合っているとは言い難い」、沖縄「一川氏の資質の欠如は明らかだが、沖縄にとって問題はそこにはない。仮に防衛相が更迭されたとしても、本質的問題は残るのだ。謝罪や処分がうわべだけでないことを示すには、政府が評価書の提出をやめ、辺野古移設を断念するしかない」。

《首相の責任》日経「首相は組閣時に内閣の顔ぶれを『適材適所』と説明し、国会でもそう答弁してきた。9日の記者会見では、防衛相らを続投させる意向を示した。しかし今や『適材適所』という言葉はむなしく響く。党内融和を優先した人事のつけは大きいと言わざるを得ない」、産経「両閣僚が辞任しなければ、1月召集の通常国会は野党が審議に応じず、冒頭から混乱は避けられない。党内融和に固執し、任命責任を問われるのを避ける首相の姿勢が、改めて国政の停滞をもたらすことになる」、上毛・岐阜など「両氏の起用は明らかに『不適材不適所』人事であり、首相の任命責任は重い。背景には閣僚としての資質よりも民主党内の融和を優先した事情がある。両氏とも小沢一郎元代表に近く、首相には『親小沢』と『反小沢』の対立を回避したいという思惑があったはずだ」、京都「野田政権にとって発足以来の難関といっていい。一川、山岡両氏の更迭を早く決断し、野党が協議に応じられる環境を整えるほかあるまい」。

野党の審議拒否は疑問

《野党にも疑問》西日本「閣僚の資質や言動を含めて政権の政治姿勢を厳しく追及するのは野党の使命だが、法的な拘束力のない問責決議の政治的な威力を振りかざし、審議拒否まで言及するのは疑問である」、毎日「問責決議に存在感発揮を依存するような自民の取り組みも疑問だ。両閣僚が続投した場合でも、次期国会で最初から審議拒否戦術を用いることは許されない。谷垣禎一総裁が真に早期の衆院解散を望むのであれば、消費税や環太平洋パートナーシップ協定(TPP)などへの党の立場を固めることが先決だろう」、信毎「(一川、山岡)両氏の言動には問題が多く追及されて当然だが、自民、公明両党は問責決議案の提出には慎重であってほしかった。復興に向け協力すべき課題は山積している。対決一辺倒からの転換を求めたい」。

《政治の怠慢》朝日「懸案だった派遣法改正案は、衆院の委員会で可決したのに成立しない。国家公務員の給与引き下げは、与野党が同じ削減幅を掲げながら合意できない。(略)さらに国会の『さぼり』を象徴したのが『一票の格差』をただす選挙制度改革だ。与野党が持論をぶつけあっただけで、ちっとも進まない。何という職務怠慢か」、中日・東京「復興増税や社会保障の給付減など国民に痛みを強いるばかりで、政府や国会が身を削る努力すらしないのは納得できない。こんな状況では将来の消費税率引き上げなど認められるはずがない」、河北「政策ならぬ『政局国会』だったことがはっきりした。東日本大震災からの復興や社会保障と税の一体改革など、衆知を結集しなくてはならないこの時期に国民の期待を裏切る。政治の不在、貧困に言うべき言葉が見当たらない」。(審査室)

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