2012年 1月24日
復興への決意新たに

地方各紙の新年号紙面
成長モデルからの転換を

東日本大震災と福島第一原発事故の復旧・復興が進まない中で新年を迎えた。地方からは被災地の本格的な復興と除染など原発事故対策の着実な実行を要請。「脱原発」政策や定期検査で停止中の原発の再稼働問題、防災対策を論ずる社説も目立った。国の財政と社会保障が揺らぐ中で、一体改革による消費税増税の是非も論点に。大震災を機に、経済の「成長」路線から発想を転換するよう求める論調も多い。

原子力政策に重い課題

《復興元年》河北「新しい年を迎えても、喪失感は癒やされることがないだろう。そっと寄り添う。話を聞いてあげる。私たちができることといえば、それぐらいだ。悲しみを共有することから始めよう。死者の無念に思いを致し、残された人たちとつながることを復興の基盤としたい」、岩手日報「今年は県民が心を一つにして『ふるさと岩手』の再興に取り組む決意を新たにしたい。肉親、知人を失ったり家を流され、被災地に建設された仮設住宅で年を越した被災者は3万1400人。(略)復興に向けたさまざまな動きを加速させ、被災者が少しでも明日への希望が持てる1年であってほしい」、茨城「県が本格復旧を進める道路や河川堤防、港湾、公営住宅などの施設は700カ所、市町村分は1500カ所余り。農地や林地、漁港などの約1100カ所でも復旧を急ぐ。液状化の被害に遭った農地や津波被害の大きかった北茨城市などの漁港は被災者の生活と直結しているだけに、早期の復旧が必要だ。(略)人口減や高齢化、財政悪化など従来の課題を抱えながら、復興に取り組まなければならない。災害に強いまちづくりはもとより、復興基金や復興特区を活用して、福祉や環境分野の新産業創出や雇用確保など地域経済を再生する契機にしたい」。

《原発対策》福島民報「最大の課題は除染だ。放射性物質汚染対処特措法が一日に完全施行された。国や自治体による作業が本格化する。仮置き場など身近な問題が多いだけに、住民も積極的に関わり、注文を付けるべきだ。汚染廃棄物の中間貯蔵施設設置、避難区域などの再区分が地域で意見の違いを生みかねない。避難区域を除く住民への賠償指針は県南や会津地方を除外した。(略)県民の対立や分断を許してはならない」、福島民友「県が復興計画に『原子力に依存しない社会づくり』の基本理念を掲げたのも、県民の現実を直視してのことだ。『脱原発』は同時に、重い課題を背負うことでもある。これまでの地域づくりからの転換も意味するからだ。原発で支えられてきた立地地域の雇用をどう確保していくか、といった深刻な問いにも答えていかなければならない。(略)原発に頼らない太陽光や風力、水力といった再生可能なエネルギーへの転換にも迫られることになる」、福井「県政の難題は原子力政策だ。原発事故で政府は『脱原発』へ急傾斜。原発の安全性が問われ定期検査後の再稼働ができない状態が続く。2月中にはすべての原発が停止してしまう。政府は夏までに原発基本政策を提示する意向だが、核燃料サイクルも渦中にある。原子力政策は本県の将来を大きく左右する。立地地域は『脱・原発依存体質』が問われることになる」、山陰「最重要課題は、中国電力島根原発(松江市鹿島町)の原子力防災だ。早急に広域避難計画を細部まで策定し、住民への周知、訓練計画を整えてほしい。原子力政策上、島根県には立地県としての高度な判断が迫られることになる」。

《一体改革》北海道「野田政権は、広く国民に負担を求める増税路線をひた走ろうとする。増税すれば、社会保障制度も何もかもがうまく機能すると言いたげだ。民主党のマニフェスト(政権公約)は、ほご同然で、新年度の政府予算案からは、理念も目指す国家像も見えない。(略)与野党を問わず政党は、持てる力を振り絞って、どのような国に再生するのか、理念と道筋を明らかにすべきだ」、神奈川「近く召集される通常国会では、消費税増税が関門になろう。財政事情と高齢化社会のさらなる高進を考えれば、暮らしの安心を保障する財源の安定的な確保は避けられない。国の将来図を示してこその政府、与党である。野党とて解散・総選挙に追い込むだけの党利党略が理解されるとは思えない」、高知「野田政権が社会保障と税の一体改革への取り組みを進め、12年度を『日本再生元年』と位置付けるのは、危機感の表れともいえる。ただし、抜本改革は既得権益層を脅かすとともに、国民の新たな負担にもつながる。(略)改革によって将来ともに安心して暮らせる国にどう生まれ変わるのか、を示すことが第一となる」。

《発想の転換》西日本「発想を変えよう。低成長や超高齢化に立ちすくむことなく、諸課題の克服につながる新しいモデルをつくり出す。それを、成熟社会に向けた処方箋として世界に示そうではないか。日本には、その資格が十分ある。要は成長の条件が崩れている現実、何も変わらないことがもたらすリスクの大きさを、認識することである」、京都「超円高とデフレに苦しむ日本を襲った震災と原発事故。この国難を抜け出すのに、これまでの『成長』を前提とした思考やシステムでいいのか。根本的に問い直す時期に来ている。景気回復が必ずしも賃金の上昇につながらない経済構造。大都会に資金と人材が集中し、地方が衰退している現実を、何とかできないか」、信毎「昨年の東日本大震災、特に東京電力福島第1原発の事故は、私たちに社会のありようはこのままでいいのか、という重い問いを投げかけた。原発の『安全神話』の崩壊は、これまでの社会を引っ張ってきた『成長』という神話の行き詰まりと重なる」。

再生エネルギーに注目

【1面トップ】41紙がニュース(調査などを含む)、17紙が企画(対談などを含む)、16紙が連載でスタートした。

《ニュース》大震災や原発対策、防災関連では福島民友「帰還困難者支援へ 復興相『新法を整備』土地買い上げ、賠償継続」、デーリー東北「過半数『政策堅持を』転機の原子力 県内市町村長アンケート 脱依存へ意識変化も」、神戸「兵庫県 『県外援助隊』創設へ 大災害備え職員登録」など。再生可能エネルギー開発・活用の動きを報じたのは神奈川「洋上風力発電に参入 三菱重 横浜で実証実験」、信毎「県『1村1自然エネ』構想 太陽光や小水力…事業化支援へ」、中国「メガソーラー先進地へ 中国地方 広島や岡山 計画相次ぐ」など。まちづくりの新しい動きは京都「鴨川文化回廊整備へ 散策コース設定」、徳島「徳島駅北にスタジアム 複合施設 Jリーグ観戦も」、南日本「アミュ鹿児島増床へ 14年秋計画」など。高速鉄道や道路などインフラ整備関連では南信州「リニア地域づくり元年 着工まで2年、開業まで15年」、荘内「日沿道温海―鶴岡間26キロ 年度内の開通目指す」。奈良「県内4区、臨戦態勢 擁立作業が加速」と愛媛「今夏解散視野 県内各党の戦略」は次期衆院選を展望した。

《1面連載》3、4日付からも含め36紙が掲載。陸奥「あすへの夢 震災を越えて」、岩手日報「再興への道 いわて東日本大震災 検証と提言」、福島民友「ふくしま再興」、茨城「安全の羅針盤3・11後の防災」が復興や防災を探る。デーリー東北「転機の原子力3・11後の青森」と県民福井「原子力立県 福井の新たな挑戦」は原発が集中する地域の動向を追う。日本海「豊かさを求めて―グローバル化の中で」は地元企業の海外展開を紹介。高知「公(おおやけ)の群像」は市町村職員の在り方を考え、沖縄「本土復帰40年 沖縄の自画像」は教科書問題で揺れた石垣島で地域の変化を探った。 

別刷りに地域再生や震災復興

【ページ数】在京紙を含め別刷り込みのページ数は30紙が増加、16紙が減少、54紙が増減なし。120ページ以上の3紙を含めて36紙が100ページ以上。別刷りのテーマは地域再生や大震災の復興、防災、新エネルギーのほか、政局や選挙の展望、ロンドン五輪も目立った。(審査室)

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