2012年 2月28日
普天間固定化避けよ

在日米軍再編見直しをめぐる社説
柔軟に検討し、抑止力維持を

日米両政府は8日、2006年に合意した在日米軍再編の行程表を見直す共同文書を発表した。在沖縄海兵隊8千人のグアム移転と米軍6施設の返還を、普天間飛行場の名護市辺野古への移設から切り離して先行させ、辺野古移設の方針は堅持する。グアム移転は4700人に縮小、残りは豪州やハワイなどに分散移駐させる計画だ。見直しは、軍事費の大幅削減と、中国をにらんだ軍事展開を迫られた米国の主導とされ、沖縄基地負担の早期軽減を可能にする一方で、普天間固定化の懸念もはらむ。60近い社・論説から。

沖縄と正面から向き合え

《移設の行方》読売「最も懸念されるのは、海兵隊の先行移転によって、普天間移設の機運が低下して、辺野古への移設が進まず、普天間飛行場の危険な現状が固定化することだ。普天間移設は米軍再編の出発点であり、根幹でもある。移設先は今でも辺野古が最善だ。政府と沖縄県は、冷静に話し合い、固定化回避へ全力を挙げるべきだ」、中日・東京「米軍普天間飛行場を県内ではなく国外・県外への移設を提起する好機だ。(略)世界で一番危険とされる普天間飛行場が固定化され、継続使用される事態を避けるべきなのは当然だが、それが辺野古移設を後押しすることになってはならない」、神戸「米側は老朽化した飛行場の補修や滑走路整備などを予定しており、固定化が現実味を帯びている。野田佳彦首相は『絶対避ける』と強調するが、その決意を米側に示してもらいたいものである」。

《地元の反応》沖縄「『辺野古案がなくなれば普天間は固定化される』という言い方は、沖縄側から見れば脅し以外の何物でもない。普天間の固定化は日米の責任放棄であり、あってはならないことだ。『普天間の早期返還』と『辺野古移設の断念』は、負担軽減のための車の両輪である」、琉球「今回、日本側は嘉手納基地より南の米軍6施設・区域のうち、キャンプ瑞慶覧(ずけらん)と牧港補給地区の一部返還について早期実現を求めた。広大な基地が長年地域振興を妨げてきた経緯からすれば、2施設の返還は加速すべきだ」、中国「寝耳に水とはこのことだろう。米国が在沖縄海兵隊の一部を岩国基地(岩国市)に移転させる案を日本政府に打診してきたという。(略)だが本来なら海外に出る部隊であり、沖縄の負担軽減には結びつかない。たらい回しで日本にとどめること自体も疑問である。しかも岩国基地は米軍再編で厚木基地(神奈川県)の空母艦載機部隊の受け皿となる。地元からすれば、それ以上の負担は到底受け入れられない話だ」。

《日本主導で》高知「行程表が変更できたのだから、辺野古への移設も見直し可能ではないのか―名護市の稲嶺進市長は米ワシントンでの講演でこう訴えた。行程表見直しを機に、日本政府は沖縄の声に正面から向き合う必要がある」、デーリー東北「今回の大きな変更は、残念なことに米国側の主導でなされた。双方の思惑が一致したとはいえ、日本側は追認したにすぎない。基地再編を柔軟に考えられると分かった以上、今度こそ日本が主導権を発揮する番だ。米議会内にある嘉手納基地への統合など選択肢を広げて検討してはどうか」、南日本「グアム移転の経費総額102.7億ドルのうち、60.9億ドルを日本側が負担するとした合意も当然見直すべきだ。(略)野田政権は態勢をしっかりと固めて米側との交渉に臨み、普天間の早期返還に加えて辺野古移設の見直しも提案していくべきだ」、日経「日本としては在日米軍再編をめぐる今後の日米協議で、部隊の移設先やその人数だけでなく、その底流にある対中戦略の進め方についても突っ込んで協議すべきだ。特に重要な議題は、日本周辺の米軍の抑止力をどう保つかである」。

具体的な成果につなげよ

《負担を削れ》産経「普天間が現状で固定化され、事故などが起きた場合、日米同盟の抑止力を大きく損ないかねない。首相は移設の実現が日本国民の平和と繁栄を守るためにいかに必要不可欠であるかを語り、理解を取り付けなければならない。政治生命を賭するテーマである」、毎日「日本政府は、辺野古への移設が困難になっている沖縄の政治状況を米側に正確に伝え、見直しを視野に入れて再検討するよう強く申し入れるべきである。辺野古への移設でなければ抑止力が維持できないというのは、今回の見直しの経緯を見ても説得力に欠ける」、朝日「返還合意からすでに16年、いっこうに動かぬ普天間とは別に、できるところから着手しようというわけだ。従来のかたくなな姿勢を改めたことは評価する。今後の交渉で、具体的な成果につなげてほしい。両国政府はこれを機に、在日米軍基地の4分の3が集中する沖縄の過重な負担を、確実に削っていくべきだ」。(審査室)

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