2012年 6月5日
独仏は危機封じ込めを

ギリシャ再選挙をめぐる社説
世界経済への波及を懸念

5月6日の総選挙後、連立交渉が決裂したギリシャ。6月17日の再選挙で再び財政緊縮反対派が勝てば、欧州連合(EU)による追加支援の取り消し、ユーロ圏離脱という、欧州統合の根幹が揺らぐ事態も予想される。世界経済への危機波及を恐れる独仏をはじめEUや主要8か国(G8)は、首脳会議を通じて財政再建と成長戦略の両立の必要性を掲げ、ギリシャに対しユーロ圏残留を求めているが、情勢は予断を許さない。ユーロ圏に残留するのか、それとも離脱の道を選ぶのか。50を超す社・論説が、ギリシャ危機の再燃に懸念を示した。

背景に緊縮策への反発

《欧州大混乱も》高知「総選挙では、反緊縮派の急進左派連合が第2党に躍進するなど野党が議席を伸ばした。再選挙でも、急進左派連合が第1党へとさらに議席を増やすとの見方がある。賃金抑制や社会保障費削減など政権与党が進めた緊縮策への反発が背景にはあるだろう。しかし政局混迷が続けば、欧州債務危機の再燃やギリシャのユーロ圏離脱が現実味を帯びてくる」、岐阜・日本海など「ギリシャ支援の枠組み崩壊やユーロ離脱が現実のものとなれば、財政再建が道半ばのイタリアやスペインなどにも危機が波及し、欧州経済は大混乱に陥るだろう。欧州向け輸出の比率が高い中国など新興国の景気は低迷し、世界経済への打撃は計り知れない」、信毎「日本への影響も大きい。東京株式市場は大幅に下がった。極端な円高に戻れば、回復の兆しが見えた企業業績もしぼみかねない」、中日・東京「ギリシャの苦境はユーロによる規律付けの失敗でもある。『いまさら後戻りできない』と判断するのか。それともユーロを離れて根本治療を目指すのか。ギリシャ国民は正念場を迎えている」。

《覚悟あるのか》河北「ギリシャ中銀総裁は昨年末、『通貨ドラクマ復活なら60~70%の大幅な切り下げ』を予想している。EU域内からの輸入品は、2倍以上に値上がりする計算だ。国民生活の大混乱は避けられない」、佐賀「ユーロ建て預金を引きだそうと銀行に殺到する取り付け騒ぎが発生するなど、混乱は必至だ。通貨下落を受けハイパーインフレが起き、国や企業が支払い不能に陥ることによって、投融資している外国の企業や銀行に損失が及ぶことになる」、産経「ギリシャの国民や政治家が、こうした自国や欧州の混乱をも想定し、『ユーロ離脱』の覚悟をしているかは疑問だ。調査では、今もギリシャ国民の約8割がユーロ残留を希望している。だが、『緊縮はもうごめん。ユーロ離脱もいやだ』というのでは通らない」、新潟「ドイツ、フランスが主導してまとめた支援策は、ギリシャが自国の財政健全化に取り組むことが必須条件である。国際社会との約束をほごにすることは許されない」。

《独仏の責任で》読売「フランスのオランド新大統領が就任直後にベルリンへ飛び、メルケル独首相と会談した。(略)独仏両首脳が、欧州は財政緊縮一本やりでなく、新たな成長戦略を必要としている、との認識で一致した意義は大きい。危機封じ込めに全力を挙げてもらいたい」、朝日「EU内にも見直し論議が浮かんでいる。政策金融機関である欧州投資銀行の増資や、EU構造基金の南欧諸国での活用といったアイデアだ。歴代の仏独首脳は欧州統合のエンジン役を果たしてきた。仏独はEUの新戦略を主導する歴史的責任がある」、日経「欧州連合(EU)は(5月)23日開いた非公式首脳会議で、ギリシャに財政再建策の実行とユーロ圏残留を求めたが、金融市場ではむしろギリシャのユーロ離脱を懸念する声が高まっている。欧州のリーダーは意見の違いを乗り越え、まず目の前の危機悪化を食い止める策を打ち出すべきだ」。

国家再生への道筋示せ

《正しい選択を》神戸「EUの支援は欠かせない。だが、まずギリシャが自ら立ち上がることだ。国民の大多数はユーロ圏残留を望んでいる。ただ、緊縮策だけではそっぽを向くのも無理はない。将来への展望と国家再生の道筋を示したうえで国民に理解と協力を求める。それしかない」、琉球「一方、各国政府も経済政策の根本的見直しを迫られよう。経済は労働者、消費者なしに機能しない。各国が市場を万能視するあまり、生身の人間を粗末に扱えば、世界中に『反緊縮』のうねりが広がるだろう。ギリシャ危機を反面教師とし、行き過ぎは正したい」、毎日「問題は、時間である。ユーロ離脱が現実味を帯びてきたギリシャでは、銀行預金の流出がすでに始まっている。動きが本格化し、周辺国に波及する恐れもある。そうなってからでは手遅れだ。ギリシャ人、そしてユーロ諸国全体が、正しい選択をしてくれるよう祈らずにいられない」。(審査室)

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