国民の不安解消せよ

大飯原発再稼働をめぐる社説
安全対策「暫定」でよいか

野田佳彦首相は8日、関西電力大飯原発(福井県おおい町)3、4号機について「国民生活を守るため、再稼働すべきだというのが私の判断だ」と表明。地元の福井県も再稼働の同意に向けた手続きに入った。地元同意を得て、政府は福島第1原発事故後では初の再稼働を決定する。ただ、関西広域連合の自治体首長らは「夏場限定」の再稼働を主張。夏の電力不足への懸念と安全対策への不安が交錯する中で、約60本の社・論説が再稼働の是非などを論じた。

首相の判断、賛否割れる

《賛否》産経「『国民の生活を守る責務』から自らの責任で大飯原発再稼働が必要とした首相の決断を高く評価したい。エネルギー安全保障や電気料金値上げ抑制にも欠かせない。福井県はこの決意を受け止め、再稼働の早期実現に向けて政府とともに全力をあげてもらいたい」、読売「首相が原発を日本に欠かせない電源だと、明確に位置づけた意味は大きい。当面のエネルギー政策で、『原発ゼロ』の路線は回避される方向となろう。(略)福井県が了承する環境は整ったと言える。福井県とおおい町が早期に再稼働に同意し、手続きが加速するよう期待したい」、朝日「私たちは、見切り発車のように原発を再稼働させることに反対してきた。原発の安全性確保をめぐる状況に、大きな変化があったわけではない。野田政権の判断に強い疑問を抱かざるをえない」、中日・東京「国民の生活を守るため、野田佳彦首相は関西電力大飯原発3、4号機を再稼働させるというのだろうか。国民は知っている。その手順が間違っていることを。このままでは安心などできないことを」。

《安全性》北海道「細野豪志原発事故担当相は再稼働の判断を『暫定的』と述べた。政府自ら見切り発車と認めたようなものだ。これでは原発の安全性に対する国民の不安は解消できない。再稼働については、刷新された規制体制の下、福島第1原発事故を踏まえた厳格な安全基準を策定した上で、その是非を判断するのが筋だ。いずれの条件も満たしていない現状では、再稼働に踏み切る根拠はない」、毎日「私たちは原発再稼働のためにはいくつかの条件を満たす必要があると考えている。事故の検証を踏まえ、新しい規制組織が再稼働の判断基準を示すこと。その基準は各原発の弱点を比較できるようなものであること。免震棟のように時間のかかる対策が未整備であることのリスクも評価すること。原発を動かさないリスクが動かすリスクを上回ることをきちんと示す、といったことだ。しかし、いずれも納得のいく状況ではない」、信毎「大飯原発には、免震事務棟や大事故のときに原子炉格納容器の圧力を下げる『ベント』と呼ばれる設備がない。いずれの整備もこれからだ。それでも構わない、背に腹は代えられないというのが、今回の合意の意味だろう。これで政府や自治体は『住民の安全を守る』と断言できるのだろうか」。

関西首長の豹変に違和感

《容認》佐賀「橋下徹大阪市長も(5月)31日、関西電力が掲げる15%の電力不足を踏まえ、『夏を乗り切るためなら』と期間限定を強調して容認を表明した。原子力規制庁設置関連法案がようやく衆院で審議入りした以外、何ら大きな進展がない中での方向転換は唐突感が否めず、首長たちの豹変(ひょうへん)に失望した人も少なくあるまい」、山陽「厳しい安全対策を政府に突きつけ、徹底抗戦も辞さない構えだった関西広域連合の軌道修正にも違和感がある。電力不足と再稼働を切り離し、原発なしで夏を乗り切る節電策などに取り組んでいたからだ」、京都「再稼働を判断するのは国か、『地元』か―の責任の押し付け合いとも見える議論だ。(関西)広域連合に対する不信も飛び出した。消費地である関西は再稼働を『容認』すると言える立場なのかというわけだ。本質的なところからずれ始めている」。

《期間限定》琉球「『あくまで暫定的容認』とする橋下徹大阪市長ら関西の一部首長は、稼働期間を電力がひっ迫する夏に限定すべきと主張している。『安全は不十分』(橋下市長)としつつ、臆面もなく電力不足回避に向け、短期的な再稼働を認める連合側の姿勢は『ご都合主義』(西川一誠福井県知事)という批判を免れまい」、福井「『安全は不十分』と政府を批判しながら、電力不足の回避へ再稼働を『容認』し、かつ『夏場限定』を要求する関西の首長。当事者能力が疑われる言動は世論を背景にし、結果として立地地域悪者論にすり替えている」、秋田「大飯原発を再稼働させるにしても、夏が過ぎたら重要な設備の完成まで再停止させることも検討すべきではないか。信頼するに足る新安全基準が策定され、厳格に運用する体制が整備されない限り、原発再稼働に対する国民の理解は得られまい」。(審査室)

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