2012年 7月17日
"選挙互助会"矛盾噴出

民主党分裂・小沢新党をめぐる社説
小沢氏は具体的に政策示せ

野田佳彦首相の消費税増税方針に反対して民主党の小沢一郎元代表は2日、支持グループ議員50人と共に離党届を提出した。11日には小沢氏を代表として衆参49人の国会議員が参加した新党「国民の生活が第一」を旗揚げした。2009年9月の政権交代からわずか3年弱での「民主党分裂」で、挙党体制を唱えながら、常に内紛を繰り返してきた政権党の内部矛盾が、限界点に達した格好だ。新党は衆院で自民党に次ぐ野党第2党となり、民主党との対決姿勢も鮮明にした。解散・総選挙をにらんだ政局の展開を論じた社・論説は90本を超えた。

理念・政策の再構築を

《矛盾の噴出》河北「党綱領がない上、安全保障やエネルギーなど国家の基本政策でも合意がないまま、『政権交代』を旗印に集まった選挙互助会。所期の目的を達成し、与党としての責任を問われる段になって、党の矛盾が一気に噴き出したと言っていいだろう」、日経「野田政権にとって打撃だが、これは避けられない道だろう。基本政策で真っ向から対立する元代表らの離党は当然である。野田佳彦首相は分裂を奇貨として、党の立て直しに取り組むべきだ」、毎日「理念を置き去りにしたまま小沢元代表の力を借りて政権を獲得し、混乱を招いた民主党の責任は重い。野田佳彦首相は一体改革の3党合意に至った説明を国民に尽くし、党の理念と政策の再構築を早急に進めるべきだ。さもないと党の存在意義が問われよう」。

《小沢新党》神奈川「小沢氏は民主党のマニフェスト(政権公約)にこだわり、『増税の前にやるべきことがある』と繰り返すことで野田政権を批判してきた。ならば、『最後の戦い』と位置付ける4回目の新党では、増税の前にやるべきこととその工程表を明示したマニフェストを掲げることが筋だろう。それは、この20年、小沢氏に期待し続けてきた人たちへの責任でもある」、読売「小沢氏は、自らの新党について『政権交代の原点に立ち返り、国民が選択できる政治を構築する』と語った。『反消費増税』を掲げ、地域政党との協力を模索する構えだが、展望は開けていない。世論調査では、小沢新党に『期待しない』との回答が圧倒的に多い」、茨城・岐阜など「持続可能な社会保障制度の構築が増税なしで可能なのか。デフレ対策を優先するにしても、いずれ増税が必要だと考えるのか。脱原発にしてもスローガンではなく、現時点での再稼働の是非、原発ゼロへの道筋、電力供給の在り方などの具体的な説明が求められる」、中日・東京「衆参合わせて五十人規模の新党は、野田政権の暴走を止めるには力不足かもしれない。小異を捨てて大同につき、『反消費税増税』や『脱原発』など同じ政策の実現を目指す他党議員との連携を粘り強く模索する必要がある」、岩手日報「民主党の理念を継承しようという新党には『理』はあるといえる。しかし、それを実現する『道』が見えない。(略)旗揚げの日は、東日本大震災から1年4カ月の節目でもあった。被災地の復旧・復興は牛歩の歩みだ。新党はこの日に生まれたことを自覚してほしい」。

国民の信を問え

《懸案処理を》朝日「与野党を超えて懸案処理で協力しつつ、社会保障や原発をはじめ基本政策の方向性と、たしかな財源の裏付けがある現実的な公約づくりで競い合う。民主党の分裂を機に、各党はそうした作業を急ぐべきだ」、産経「民主、自民、公明による3党合意は、日本の危機を深めている重要課題に与野党が協力して取り組む政策連合だ。首相はこの枠組みを生かし、喫緊の諸懸案の解決を目指すべきだ。『決められない政治』を前に動かし、具体的な実績を上げていってほしい」、西日本「赤字国債を発行するための特例公債法案や、衆院の『1票の格差』是正に向けた選挙制度改革関連法案などが積み残されている。民主党の分裂騒動で政治が停滞している場合ではない。政権運営は一段と厳しさを増すだろうが、それは首相も覚悟しているはずだ。国民本位の政治を実践することで活路を切り開くしかない」。

《民意を問え》中国「首相は『関連法案を成立させるために責任を果たしたい』と参院での審議に意欲を見せたが、公債発行特例法案という難題も抱える。これまで以上に、自公両党に擦り寄らざるを得ないだろう。だが民主党の分裂を受け、自公両党を含めた野党は衆院解散の要求を強めている。もはや国民の信を問うしかあるまい」、沖縄「今後、野田政権は自公の協力なしにはますます立ちゆかなくなる。その代償は公約の放棄である。民主党は3年前とは似て非なる党になってしまった。野田政権は正統性を失った。早期に衆院を解散し国民の信を問うときである」。(審査室)

ページの先頭へ