2012年 9月11日
与野党の責任感疑う

野田首相問責決議をめぐる社説
早期解散・総選挙を

野田佳彦首相への問責決議が8月29日、参院本会議で可決された。「国民の生活が第一」など野党7会派提出の決議案採決に公明党は棄権したが、早期解散を狙う自民党が賛成。民主党による特例公債法案と衆院選挙制度改革法案の衆院強行採決への反発に加え、参院の問責決議で野党は審議を拒否、国会は重要法案を放置したまま閉会した。約40本の社・論説が国会の混迷を招いた与野党の責任を厳しく追及した。

「決めない政治」に逆戻り

《無責任》朝日「政治の無責任、無節操ぶりにあきれるほかはない。とくに驚くべきは自民党の対応だ。国民の生活が第一などが提出し、自民党が賛成した決議は問責の理由として『国民の多くは今も消費増税法に反対』と明記。民・自・公の3党協議で決める手法についても『議会制民主主義が守られていない』と批判している。これでは自民党の自己否定にほかならない」、北海道「自民党の行動は支離滅裂である。(略)自民党は自らを批判する決議に、他人のふりをするかのように賛成した。首相を衆院解散に追い込もうとするあまり、身勝手な振る舞いが目に余る」、毎日「無責任のきわみである。(略)野党は一部案件を除き参院で審議を拒否する構えで、通常国会は空転したまま事実上、閉幕しそうな状況だ。民主、自民両党とも筋の通らぬ強硬策に訴えたあげくの混乱だが、実態は違憲状態である衆院の『1票の格差』など懸案を放り出し、国会の幕引きを図る茶番劇に等しい。『決めない政治』に逆戻りした首相と谷垣禎一自民党総裁の責任感を疑う。どっちもどっちと言わざるを得ない攻防だ」、京都「民主党と自民党は混乱の責任をなすりつけ合う。解散を巡る駆け引きで党利党略をむき出しにし、国会の責務を投げ出してしまった。(略)国民を甘くみている。機能不全に陥ったのではなく、与野党の意図的な怠慢だ」。

《審議拒否》読売「参院の問責決議には法的根拠がない。それを政府・与党攻撃の手段にして審議を拒否し、首相・閣僚の交代を迫る。こんな悪習をいつまで繰り返すのか。参院を『政局の府』にしてはならない」、日経「参院の問責には法的な拘束力はない。問責された首相・閣僚相手の国会審議をしないという慣例にとらわれなければ、空転は直ちに解消できる」、高知「首相問責決議が可決された以上、話し合いの余地がないというのも単なる言い訳にしかならない。(略)審議拒否と非難の応酬に明け暮れながら過ごすのは、国会が仕事をサボるのと同じだ。こんな現状から生まれるのは、有権者の政治不信と既成政党への失望でしかない」。

国会空転、課題先送りに

《先送り》福島民報「多くの重要課題が先送りされた。今年度予算の執行に不可欠な公債発行特例法案は廃案となる見込みだ。東日本大震災や東京電力福島第一原発事故からの復興を目指す本県への影響も懸念される。党利党略を優先させた与野党対立のツケを国民に回すことは許されない」、信毎「赤字国債の発行に必要な公債発行特例法案や衆院の『1票の格差』是正など課題が山積している。外交面では、中国、韓国との緊張が高まる一方だ。こんなときに、なぜ国会を空転させるのか、理解に苦しむ。国民不在の混迷を招いた二大政党の責任は重い」、福井「もし政治に冷静な判断力があるなら、残された重要法案の処理に知恵を出すべきだ。2012年度予算執行に不可欠な公債発行特例法案は廃案になる見通し。衆院選挙制度改革関連法案を放置し『違憲状態』で選挙に突入することは許されない」。

《解散を》中日・東京「首相は二〇〇九年衆院選の民主党マニフェストにはない消費税増税を強行し、明確な安全基準を欠いたまま関西電力大飯原発3、4号機を再稼働させた。内閣不信任にも値する状況だ。首相は問責決議を重く受け止め、内閣総辞職か、『一票の格差』解消を速やかに実現した上で、衆院解散に踏み切るべきだ」、産経「赤字国債発行に必要な特例公債法案は成立していない。原子力規制委員会の同意人事も残されている。一票の格差をめぐる違憲状態の解消に必要な衆院小選挙区の『0増5減』も実現していない。歩み寄りができないなら、早期解散して国民の信を問うべきだ」、中国「この際、国民生活に直ちに影響を与える重要法案に絞って与野党一致で解決を急ぐ。(略)そのうえで野田首相は早期の衆院解散・総選挙に踏み切り、国民の信を問うしか道はないのではないか」、佐賀「問責決議によって、民主側では『近いうちに』解散するとした3党合意は破棄されたという認識が広まるだろう。それではいっそう国政が混迷するだけである。首相は速やかに解散して、国民に信を問う決断をするべきではないだろうか」。(審査室)

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