2013年 3月12日
「絆」復活へ課題重く

日米首脳会談をめぐる社説
TPP参加なら丁寧な説明を

安倍晋三首相は2月22日、オバマ米大統領とホワイトハウスで初の首脳会談を行い、日米同盟を強化することで合意、首相は「日米同盟の信頼、強い絆は完全に復活した」と強調した。最大の焦点である環太平洋連携協定(TPP)については「全ての関税撤廃をあらかじめ約束することを求められるものではない」とする共同声明を発表。首相は28日の施政方針演説で「政府の責任で判断する」として、交渉参加に積極姿勢を示した。約50本の社・論説から。

米政府の期待、鮮明に

《同盟深化》読売「安倍首相に対する米政府の期待の大きさが鮮明になった。首相は政治、経済両面で『強い日本』を復活させ、その信頼に応えるべきだ。(略)安全保障分野で安倍首相は、防衛大綱の改定や、集団的自衛権の行使問題、日米防衛協力指針(ガイドライン)見直しなどに積極的に取り組む方針を説明した。いずれも日米同盟を実質的に強化する重要課題だ。優先順位をつけて、着実に実績を上げたい」、山陽「民主党政権で日米の絆が揺らいだとする安倍首相にとって、会談には安全保障や経済での広範な関係強化をアピールすることで外交の足場固めを図る狙いがあった。米側もTPPで日本に一定の配慮を示し、同盟重視の姿勢を見せたといえよう」、岩手日報「米国との『蜜月』は確認した。一方で、東アジアの隣国である中国、韓国との関係改善の具体的な道筋はまだ見えてこない。首脳会談の第一の目的は、首脳同士の信頼関係を構築することだ。そうした関係を東アジアで築くことも、日本にとっては欠かせない」。

《普天間》西日本「会談で両首脳は、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への県内移設を早期に進める方針で一致した。政府は近く、辺野古移設に向けた埋め立て申請を行う構えだが、地元の同意を得られるめどは全く立っていない。安倍首相がこうした調整の手順を誤れば、『米国優先で国内軽視』との不満が噴き出しかねない」、琉球「普天間問題で両首脳は、名護市辺野古移設の推進方針で一致した。だが、県内移設は知事が事実上不可能との立場を鮮明にし、県内全41市町村長が明確に反対している。日米合意自体が有名無実化している現実を、両首脳はいいかげん直視すべきだ」、沖縄「辺野古への強引な移設作業によって『日米同盟の強い絆が復活する』と考えるのは、あきらかな誤りだ。希望的観測に浸るのではなく、厳しい現実を直視すべきである。日米安保体制は、米国が人(軍隊)を提供し、日本が物(基地)を提供する『人と物の協力関係』で成り立っているといわれるが、沖縄は復帰後も、物の大部分を負担し続けてきた」。

中国とどう向き合うか

《日中問題》日経「日米両国にとっての最大の課題は、台頭する中国にどう向き合い、協力を引き出していくかである。TPPはそのための経済の枠組みだ。両国は同様に、外交・安全保障面でも協力の足場を固めなければならない。今回の会談はその意味でも成果があった」、産経「尖閣諸島問題について、首相は『日本は常に冷静に対処してきた』と説明し、オバマ氏が『日米が協力して対応していく。日米協力が地域の安定につながる』と応じたことは重要だ。(略)ただ、米側には『重大な衝突に発展しないように』日中双方に自制を求める姿勢も強い」、朝日「経済の相互依存が進み、米国は中国と敵対したくない。米中よりも日中のあつれきのほうが大きく、米国には日中の争いに巻き込まれることを懸念する声が強い。だから米国が日本に求めるのは、いたずらにことを荒立てない慎重さだ。そこを見誤れば、日米の信頼も崩れてしまう」。

《TPP》信毎「TPPは今回、日米の絆の象徴とするだけでなく、成長戦略の柱に位置付けようとする首相サイドの思惑が見える。(略)オバマ大統領は現実的な政治家である。日本の対応の仕方によっては、厳しい注文を突き付けてくるだろう。日本が求める例外が認められる保証もない」、新潟「肝心なのは、首相が会談の中身について丁寧に説明し、国民的議論を深めることである。参加へとはっきり軸足を移すというなら、農業の強化策も当然示さなければならない」、毎日「国民皆保険制度の形骸化や食品安全基準の切り下げなどを心配する声も根強い。交渉の中で守るべき課題であり、政府は交渉の情報をできる限り開示し、こうした不安の払拭(ふっしょく)にも努めるべきだ」、中日・東京「ルールづくりでは世界経済の覇権をいかに牛耳るかという主要国の思惑も見据えるべきだろう。(略)米国のTPP推進にも『先進国対新興国』の力学が潜む。その表れが環太平洋諸国を米国の傘下に収める多数派工作であり、オバマ氏の日本に対する参加期待だ」。(審査室)

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