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平成15年度税制改正について要望の件

平成14年9月20日

自由民主党
政務調査会 殿
税制調査会 殿

社団法人日本新聞協会
会長 渡辺 恒雄

平成15年度の税制改正のご審議にあたり、次の2点について、新聞界の考えをお伝えいたします。よろしくお取り計らいくださるようお願い申しあげます。

消費税について

  1. 新聞は広く国民に、日々生起する内外の広範な情報や多様な意見、評論を正確かつ公正に提供することにより、現代社会の全体像を分かりやすく伝え、民主主義社会の健全な発展と文化の向上に大きく寄与しております。今日多様な情報伝達手段が登場しておりますが、その正確で良質の情報内容、情報接触の容易さ、国民への浸透度と世論形成への貢献等、新聞に代替しうるメディアは存在しないといっても過言ではありません。
    多くのメディアが出現する中にあって、新聞が持つ高い倫理水準の維持と基幹メディアに課せられた使命は、今後ますます重要になるものと確信いたします。
  2. 新聞については、付加価値税を導入している各国においても、ゼロ税率や軽減税率などの特例措置を設けることが一般的です。
    例えば、英国、ベルギー、デンマーク、ノルウェーなどにおいては、新聞購読料はゼロ税率もしくは非課税となっており、またオーストリア、フランス、ドイツ、ギリシャ、イタリア、オランダ、スペイン、スウェーデンなどの国では、軽減税率を適用しております。
    これらはあらためて申し述べるまでもなく、新聞、放送、出版など知識・情報・文化にかかわる事業の公共性を社会が高く評価するがゆえに、「知識・情報・文化には課税すべきではない」との認識に基づくものであります。こうした諸外国の事例は、自由かつ独立した言論・報道活動を、一種の社会的制度として保障すべきであるという、民主主義国家のとるべき方策として、わが国においても当然に考慮されて然るべきものと考えます。
  3. 日本における新聞は質の高さとともに、世帯当たり普及率はほぼ100%と、世界のトップ水準に達しております。これは、新聞に対する社会的評価と、93%に達する優れた戸別配達システムの整備、同一紙同一価格と購読料を低い水準に抑える新聞社の経営努力などによって、全国どこでも新聞を容易に購読できる機会が確保されている結果であります。どこでも数紙の新聞から選択購読できることも世界に例を見ません。

われわれは、今後とも国民がより少ない負担で新聞を購読できる状態を維持していくことが、わが国の取るべき方向であると確信しており、新聞購読料への課税は、前述の諸点から、民主主義国家の健全な発展と国民文化の向上に、大きなマイナスになることを憂慮しております。

貴会において、今後消費税のあり方を再検討される際には、以上、新聞界の意のあるところを十分におくみ取りのうえ、しかるべき措置をお取りくださるよう要望いたします。

法人事業税への外形基準の導入について

  1. 昨年の貴税制調査会は、法人事業税への外形基準の導入について、「今後、各方面の意見を聞きながら検討を深め、具体案を得たうえで、景気の状況等も勘案しつつ、平成15年度税制改正を目途にその導入を図る」とされておりました。新聞界として、外形基準の導入が検討課題となることについては理解しておりますが、新聞事業にとっては、付加価値などを一律的に外形基準として導入されると、場合によっては少なからぬ影響を被る可能性があり、大きな懸念を持たざるを得ません。
  2. 新聞事業はその性格上、人件費が大きなウエートを占めており、付加価値率の高い業種であります。従って外形基準として付加価値が導入されると、法人事業税の減税効果どころか、むしろ実質的に大幅な増税となるケースも想定されます。これにより新聞の経営を圧迫し、新聞の公共的使命の達成に大きな影響を与える結果となりかねません。
  3. 新聞業は、事業税の前身である営業税法の施行(明治43年)以降、長年にわたって、その高い公共性・公益性ゆえに非課税の適用を受けていましたが、昭和60年度の税制改正で新聞発行・新聞送達事業にも事業税が課税されることが決定されました。その後、新聞をはじめとするマスコミ関連7業種に適用されてきた事業税の軽減措置は、平成6年の地方税法改正により段階的に縮小され、法人にあっては平成10年度をもって経過措置が終了し、個人にあっても11年に終了いたしました。

本来、新聞事業にあっては、非課税であった事業税が、付加価値を外形基準とすることにより、他産業よりもさらに税負担が増えるのであるとすれば問題なしとしません。

貴税制調査会がご指摘のように、新聞事業における「税負担の変動」にも十分配慮され、慎重なご審議をいただきたくお願い申しあげます。

以上

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