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総務省「マスメディア集中排除原則(地上放送関係)の見直しに関する基本的考え方」に対する意見

2003年7月25日
社団法人日本新聞協会
メディア開発委員会

 日本新聞協会メディア開発委員会は、これまで機会をとらえて、マスメディア集中排除原則の撤廃を含めた同原則の大幅な緩和を行うよう求めてきました。

 マスメディア集中排除原則の見直しは、時代の要請であると考えます。1959年の同原則制定以降、メディアの質的多様化や量的拡大は急速に進んでおります。全国紙、地方紙、雑誌等の印刷媒体やラジオ、地上波テレビジョン、BS、CSの各衛星放送、CATVといった各種放送メディアに加え、インターネットを利用しての情報入手も急速に発達・普及しており、人々の情報入手手段はますます選択の幅を広げています。

 そもそもメディアである放送に対する公的規制は、言論・表現の自由を踏まえ、混信防止対策など必要最小限にとどめるべきであり、新しい時代の放送局経営にあっては、経営の自由度をできるだけ高めることも重要だと考えます。米国でもメディア所有規制を緩和する動きが明らかになっています。これらの観点からも、同原則は撤廃されるべきものです。

 こうした中、今回、総務省が示された「マスメディア集中排除原則(地上放送関係)の見直しに関する基本的な考え方」(以下、「基本的な考え方」)は、地上放送における支配の基準について、出資比率・兼営の制限等を、隣接地域のローカル局間についてのみ緩和するという限定的なものであり、放送局の「経営破たん」の概念等についても具体的に言及していません。とはいえ、全体としてはマスメディア集中排除原則を緩和する方向でまとめられており、これまでの当委員会の主張と重なる点があると考えます。

 その一方、同原則に含まれる、いわゆる「三事業支配の禁止」規定については今回、「新聞と放送の相互の間での連携は社会的影響力が大きく、特に地域における情報源の多様性が損なわれるおそれがある」との考え方を記述し、制度見直しの具体的な方向性は何ら示されませんでした。「三事業支配の禁止」規定は、地上放送に関する同原則を定めた「放送局の開設の根本的基準」9条ただし書きにあるとおり、「ニュース又は情報の独占的頒布を行うこととなるおそれ」を防止することが目的であると考えますが、メディア環境が大きく変化している今日、新聞と放送の連携がさらに進むとしても、情報入手手段や言論の多元性、多様性は引き続き確保されると考えます。

 当委員会は、国民生活にとって重要な情報を発信している新聞・通信社が放送事業に進出することを制約している「三事業支配の禁止」規定は、言論・表現の自由に対する行政府の介入や、国民の知る権利の制約につながるおそれがあると考えます。

  こうした点から、今回の「基本的な考え方」は、十分な内容とは言えません。当委員会としては、マスメディア集中排除原則の見直し、とくに「三事業支配の禁止」規定について撤廃を含めた見直しを検討するよう求めます。

  なお、策定にあたり参考にしたとされる貴省「放送政策研究会」最終報告に比べ、この「基本的考え方」は、内容の異なったものとなっています。しかし、そのような変化の背景や検討のプロセスは全く明らかにされていません。今後のマスメディア集中排除原則に関する議論をより実りあるものとするためにも、当委員会としては、この点を明らかにすべきだと考えますので、あえて付記いたします。

以上

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