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NHK経営計画(2024-26年度)、24年度予算・事業計画案に対する見解

2024年2月9日

一般社団法人日本新聞協会
メディア開発委員会

 日本新聞協会メディア開発委員会は、本日国会提出された2024年度NHK予算・事業計画案と、先に公表されたNHK経営計画(2024-26年度)について以下の見解を表明する。

【NHK2024年度予算・事業計画案について】

 インターネット活用業務について、「既存サービスについては整理・見直しにより費用を削減」するとした点は、総務省公共放送ワーキンググループ(WG)の取りまとめなどを踏まえると妥当だ。インターネット業務に関わる費用も前年度からほぼ横ばいの195.0億円だが、このうち既存サービスに関する費用は180.0億円と17.5億円減で計上されている。費用明細表からも、「常時同時配信業務」に係る費用は10億円増の74.6億円なのに対し、「同時配信以外の業務」は11億円減の90.9億円と、「理解増進情報」を縮小する方針も読み取れる。しかし、依然として巨額である上、どのような方針でサービスを削減していくのかが不明瞭だ。当委員会は必須業務化後のネット業務の具体像を早期に説明するよう求めてきたが、24年度の業務についても具体的な方針を明らかにすべきだ。

 また、削減・縮小の方向性を打ち出した理由について、明確に説明する必要がある。公共放送WGが廃止を提言した理解増進情報は、公正競争への懸念だけでなく、受信料制度との矛盾が指摘されてきた。受信料を原資にして制作したコンテンツを、受信料を支払わない人が見られるような形でインターネット空間に提供することは、フリーライドを許容するのではないかという課題だ。受信料を支払って放送だけを見る人にとっては、受信料を支払わずに番組内容やプラスアルファのコンテンツを利用できるのは公平さを欠く。NHKもこれまで「放送の視聴者だけが負担する『公平性』の課題」があると説明してきた。今後のネット業務の方向性についても「基本は放送番組と同一のもので、ネット独自コンテンツを作るつもりはない」などと述べてきた。NHK自身が、理解増進情報がはらむ現状の受信料制度とネット業務の範囲の矛盾という課題を挙げてきたといえる。

 災害時などに広く国民・視聴者に対して情報提供する役割や意義は重要だ。しかし、理解増進情報自体は受信料制度との矛盾を含む制度である上、NHKはこれを野放図に運用してきた。現状の仕組みに疑義があるのであれば、将来の必須業務化の是非にかかわらず、直ちに現行制度を改めるべきだろう。今回の予算案で理解増進情報に巨額の支出をする方針は整合性がない。NHKは自らの責任によって、理解増進情報の運用について総括するとともに、指摘されてきた問題点を予算案の段階で十分に反映すべきだ。特に、放送とは別の内容を配信するようなものは自身が表明した「フリーライド」「不公平」の観点から見直すべきだ。

 また、プラットフォーム事業者を通じたコンテンツのネット展開は、限定的にすべきだ。外部事業者を通じた配信は3号業務として、自社サイトでの配信(2号業務)と区別されている。3号業務では予算や提供条件を限定的に規定し、24年度は8500万円の予算が計上されている。他方、先に公表されたインターネット活用業務実施計画では、2号受信料財源業務について「原則としてNHKオンライン上のウェブサイト、NHK公式アプリを通じて提供する」としつつ、「外部プラットフォームを通じて提供」「ソーシャルメディア等を積極的に活用」すると規定している。実際にNHKはLINEなどの外部プラットフォームを通じてニュース記事を提供しているが、プラットフォームを通じた2号業務の展開は、外部配信を限定的に規定した3号業務の趣旨と矛盾するのではないか。ニュースプラットフォームでは民間の報道機関が対価を得てコンテンツを配信する場合が多く、NHKが無料で提供しているとすれば取引条件などに悪影響が出かねない。当然、プラットフォーム上では受信料の支払いとは関係なくコンテンツに接触でき、受信料制度の整合性の観点からも問題だ。NHKがプラットフォームとの結びつきを強めることは慎重であるべきだ。

【NHK経営計画(2024-26年度)について】

 当委員会は「NHKが巨大な受信料をもとに業務を際限なく展開すれば、メディアの多元性や言論の多様性に影響が出かねない」との懸念を繰り返し指摘した。経営計画が、NHKに求められる役割の基軸として「信頼できる多元性確保」への貢献を位置づけたことは極めて重要だ。また、「基幹となる二元体制維持」と「メディア産業全体のために」として具体的な予算規模とともに取り組む方針を示したことも適当だ。後者について、オリジネーター・プロファイル技術研究組合への参加などの言及はあるが、より具体的に方針を示すことを求める。

 また、2023年10月からの受信料の値下げを踏まえ、24~26年度は赤字予算を編成している。27年度の収支均衡を目指し、事業規模を段階的に縮小するとの方針を示している。不断に業務範囲の見直しを進め、国民・視聴者に還元していくことは重要だ。他方、かねて指摘している通り、予算の編成段階では厳しい見通しを示しながら、結果、黒字となり、収支差金を繰越金に蓄積していくという構造的な課題がある。18年度以降、毎年度の決算は予算から200億円以上の上振れがあり、21年度の差額は630億円に達した。22年度は収支均衡予算だったが、決算段階で263億円の黒字を計上している。検証していくためにも、実態を踏まえた内容にすべきだ。また、経営計画期間中に黒字に転換した場合、値下げの原資をさらに確保できる。不断に業務範囲の見直しを進め、さらなる受信料の値下げなどによって国民・視聴者に還元していくことは重要だ。

以上

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