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「『氏名の公表と人権』に関する検討委員会」設置に対する意見
2002年12月5日
日本新聞協会編集委員会
日本民間放送連盟報道委員会
日本新聞協会と日本民間放送連盟は、貴団体から提示のあった標記検討委員会の設置自体に対し、強い危ぐを抱いております。よって、委員会に委員として参画することはお 断りいたします。その理由は次のとおりです。
報道機関がプライバシー、人権に十分配慮した報道を行うことは当然です。ただ、これらは報道に携わる各社が自らの判断と責任において行うもので、その基準などについて公的機関から一方的に押し付けられるものではありません。こうした観点から、人権擁護法案、個人情報保護法案などメディア規制法案が国会で議論されるなど、プライバシー保護、人権尊重の名の下に、報道の自由、国民の知る権利を侵害するメディア規制の動きがいろいろ出ていることを、我々は大変憂慮しております。公的機関はあくまでも情報を全面開示し、報道各社の判断と責任で報道するというのが、我々の譲れない基本的な考え方です。 今回の検討委員会の提示はあまりにも唐突、一方的と言わざるを得ません。公的機関が「表現の自由」「国民の知る権利」を縛る公表の基準を作ろうとする事自体、誤りであると我々は考えます。
「委員会設立の目的」にある「発表を差し控えたり、取り扱いの注意を与えるなどの配慮」は、公的機関が行うものではないと考えています。自分たちの都合で、公表したりしなかったりということはあってはなりません。「対人権的限界がどこにあるか」についても、公的機関が決めるものではなく、あくまでも報道する側が自主的に判断するものです。「目的」の中に、「報道の自由」や「国民の知る権利」といった言葉が全く出て来ないことから見ても、委員会設置の意図が報道規制にあると疑わざるを得ません。
真実を報道することとともに、プライバシーの保護、人権の尊重は報道機関に求められる最も大きな責任です。このため、報道各社は社内にこうした問題を検討、検証する独自の機関を設置するなど、自主的な対応を進めています。また、日本新聞協会、日本民間放送連盟としても、集団的過熱取材(メディアスクラム)に対応するため、苦情受付窓口や協議機関を公表するなど努力を続けているところです。
委員会設置提案の発端になったのが、昨年9月に起きた新宿・歌舞伎町のビル火災にあったと聞いています。しかし、その際、報道各社は被害者の氏名を実名にするか匿名にするか、店の名前、業種をどう表記するか、各社が自分たちの責任において、真剣に社内で検討して報道しました。その結果、各社で対応が分かれた面もありましたが、その後も、その時の対応が良かったか、どう報道すべきだったか、などについて、様々な機会をとらえて検討が続いています。
以上が委員会設置に反対する理由です。報道機関はこれまで火災・災害に関する報道を通じ、防火・防災に関する啓発にも協力してまいりましたが、こうした報道活動の規制につながる恐れのある委員会が一方的に設置されることは誠に遺憾であります。