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取材源秘匿を否定する東京地裁決定に対する緊急声明

2006年3月17日
社団法人日本新聞協会
社団法人日本民間放送連盟

 米国企業への課税処分に関する報道に関連して、昨年10月の新潟地裁と本日の東京高裁で記者の取材源の秘匿を認める決定が相次いでいる中で、東京地裁は14日、記者の「取材源秘匿」を認めず、取材源を明かすよう命じる決定を下した。これは、取材と報道の手足を縛り、国民の知る権利に重大な影響を及ぼす不当な決定であり、とうてい容認できない。

 報道機関で取材活動に従事するすべての記者にとって、「取材源(情報源)の秘匿」は、いかなる犠牲を払っても堅守すべきジャーナリズムの鉄則である。隠された事実・真実は、記者と情報提供者との間に取材源を明らかにしないという信頼関係があって初めてもたらされる。その約束を記者の側から破るのは、情報提供の道を自ら閉ざし、勇気と良識をもつ情報提供者を見殺しにすることにほかならないからである。

 地裁決定は、情報源が仮に国家公務員だった場合、一般に明らかにされていない情報を記者に伝える行為は国家公務員法の秘密漏洩(えい)罪に当たる、とした。その上で、記者の証言拒否を認めるのは「犯罪行為の隠蔽(ぺい)に加担し、奨励するに等しい」と述べ、記者に、取材源に関する証言拒絶権は認められないとの結論に至っている。

 今回と関連する裁判で、昨年10月に新潟地裁が出した決定は、記者にとっての取材源を、民事訴訟法上、証言拒絶が許される「職業の秘密」に当たると認定し、証言拒絶を正当と認めている。東京高裁は本日、この決定を支持し、「取材活動が、取材源たる者に国家公務員法違反の行為を要請する結果になるとしても、直ちに当該取材活動が違法となることはない」との判断を示した。

 そもそも、記者が公務員に秘密情報の提供を働きかけることは、真にそれが取材目的であり、社会観念の上でも是認されるものであれば「正当な業務行為」と認められる、との判例(1978年最高裁第一小法廷決定)が確立している。国家公務員が、記者の良識的かつ根気強い要請に応じて情報提供することは、直ちに違法行為となるものではない。決定は明らかに判例に違反している。

 民主主義社会において、主権者たる国民の「知る権利」が尊重されるためには、報道機関に、公権力に対する「取材・報道の自由」が保障されることが最低必要条件である。我々は、権力の行使者としての公務員らから直接、政策の決定過程、事件捜査の状況などに関する「真実」の情報を得る努力を重ねている。それが、権力監視というジャーナリズムの根源的使命と考えるからだ。今回の決定で、公務員が記者と接触することに憶病になり、その結果、国民が必要とする情報の流通が阻害され、公益性の高い内部通報なども激減してしまうことを、強く懸念する。

 今後、上級審等がいかなる判断を下そうとも、取材源を守る姿勢は最後まで貫き通すことを改めて確認しておく。

以上

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