1. トップページ
  2. 声明・見解
  3. 取材と報道
  4. 再審制度の見直しに関する見解

再審制度の見直しに関する見解

2026年1月16日

一般社団法人日本新聞協会

 再審制度の見直しを議論している法制審議会刑事法(再審関係)部会において、法務省は、再審請求審で検察官が開示した証拠の「目的外使用」を禁じる規定の創設を盛り込んだ「検討資料」を示した。同資料は、再審請求者が、再審請求の手続きに使う目的以外で第三者に証拠の写しを提供したり示したりすることを禁じ、違反すると1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金を科すとしている。弁護士についても、対価を得る目的の場合は同様の罰則が科されることになる。だがこうした規定の法制化は、再審請求者や弁護士らが証拠を公益目的で活用したり、報道機関等に提供したりすることを困難にさせる。日本新聞協会は国民の知る権利を守る観点から、罰則規定の創設に反対する。また報道機関への情報提供は「目的外使用」の禁止の適用除外とすることを求める。

 上記規定の創設は、通常の刑事裁判における証拠の目的外使用禁止と同様の制度を再審請求審にも導入しようとするものと言える。ただ通常の刑事裁判の審理は公開されており、証拠の内容は、傍聴などによって一定程度知ることができる。これに対し、再審請求審は非公開で行われており、証拠の内容を検証することは困難であり、同じ扱いをすべきではない。「目的外使用」を禁止し罰則を科せば、再審請求者や弁護士を萎縮させ、証拠を検証のため外部に開示するといった公益目的の行為も阻害され、再審請求審をさらに不透明にしかねない。静岡一家4人殺害事件の再審請求審では、検察が開示した「5点の衣類」のカラー写真を弁護士が支援者らに共有して血痕の変色に関する実験が行われ、その報道もされて結果的に袴田巌さんの再審無罪につながった。

 報道機関は、憲法上保障された「表現の自由」、「国民の知る権利」に奉仕するために、真実を明らかにし、社会が共有すべき情報を伝え公益を図る公共的使命を負っている。再審請求審での証拠の「目的外使用」の禁止を報道機関への情報提供に適用すれば、取材・報道の実質的制限につながり、ひいては国民の知る権利に奉仕する報道機関の役割が十分に果たせなくなる。表現の自由の尊重と報道機関の公共的使命は法律にも反映されており、例えば個人情報保護法は、報道機関による報道活動や、そのための個人情報等の提供を同法の適用除外とする規定を設けている。また、公益通報者保護法は、公益通報先として「報道機関等」を含め、要件を満たしていれば報道機関への通報者は不利益な扱いを受けないとされている。

 「目的外使用」の禁止は、証拠が第三者にわたることで起きうる関係者の名誉毀損(きそん)やプライバシー侵害を防ぐ目的とされている。日本新聞協会はこれまでの声明等の中で、社会に伝えるべき情報が提供された場合、プライバシーや人権に十分配慮し各報道機関の責任において報道する旨、表明している。また新聞倫理綱領は「新聞は人間の尊厳に最高の敬意を払い、個人の名誉を重んじプライバシーに配慮する」と掲げている。加盟各社はそれぞれ、常日頃から報道倫理の順守に努めている。

 以上の理由から、再審請求審で開示された証拠の「目的外使用」の罰則規定の創設に反対する。また「目的外使用」の禁止対象から報道機関への情報提供を除外することを求める。

                                                            以  上

ページの先頭へ