11月11日付 止まらぬ衝動と向き合う

高知「クレプトマニア 本紙記者が見た窃盗症という病」 

 「盗みたい」衝動が抑えられず、万引きを繰り返す―。クレプトマニア(窃盗症)は、物欲に駆られた結果でなく、窃盗行為そのものを目的とする精神疾患だ。

 社会部の海路佳孝記者が専門的な治療を施す赤城高原ホスピタル(群馬県渋川市)への取材を足掛かりに、患者心理の根底を探った。

 竹村道夫院長は、クレプトマニアに刑事責任能力はあるとしつつ、「病的な心性に基づく窃盗行為だから、刑罰を与えても治らない」と話す。同院ではこれまでの過ちを包み隠さずに人前で打ち明ける「ミーティング」を治療の柱にする。

 取材の発端は2年以上前にさかのぼる。社会部で警察を担当していた当時、窃盗を繰り返す再犯者の問題や、その治療に取り組む高知市出身の竹村医師の存在を知った。当時は高知と群馬の距離的な問題もあり直接取材は難しかったが、2012年、東京支社編集部への異動を機に取材を重ねた。今年4月から本社社会部に戻った後にも補足で取材した。計6回の連載にまとめ、10月に掲載した。

 クレプトマニアは摂食障害との併発が多く、患者の中心は女性だ。30代女性は高校時代の無理なダイエットが原因で過食と自発性の嘔吐(おうと)を繰り返す摂食障害を患った。膨らむ一方の食費に自己破産、そして窃盗が始まった。食品を盗んでは食べ、吐く。5回目の逮捕で一審は実刑判決。保釈後に同院で入院治療を始め、控訴審で執行猶予を言い渡された。

 「取材に応じた患者は、『これもまた治療の一環』と過去を隠さずに話してくれた」と海路記者。「一般には理解されがたい症状をしっかり聞き取った上で、読者に対して説得力を持つ記事にしよう」という思いの反面、本人の社会復帰を妨げないよう配慮も欠かさない。(夏)

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