8月 9日付 山間部で子供の居場所は

紀伊民報「学童保育所がない ―田辺の現場から」

 和歌山県田辺市の山間部、龍神、中辺路、本宮の3地域には学童保育所がない。放課後や長期休暇中、子供を預けられず仕事との両立に難しさを感じる親もいる。報道部の中澤みどり記者は夏休みを前に3地域の現状を取材。7月15日から3回にわたり連載した。

 中澤記者は「都市部では学童保育の質が議論されているが、田辺市は学童自体がない地域がある」と話す。同じ市内でも市街地と山間部の地域格差があると指摘し、子育ての環境が整わなければさらに過疎が進むと問題提起した。

 中澤記者自身も小学生の子供を持つ。共働きやひとり親の家庭にとって、長期休暇中の子供の居場所は死活問題だ。にもかかわらず「行政の設置基準は山間部では到底達成できない」という。

 龍神、中辺路では、保護者が協力し子供の居場所を作る取り組みが始まった。一昨年、村内の学童開設を求めた龍神村の親たちは市に「利用する子供が20人以上必要」と告げられた。このため昨夏から保護者でサークルを作り、当番制で子供を預かる体制を整えたという。中辺路町でも保護者有志が専任指導員を雇い自主的に学童保育を運営する。13世帯16人が申し込んだ。

 一方、市の中心部から遠い本宮町では「子供に携帯を持たせて出勤したが心配だ」など切実な声が挙がる。これまで学童がなかったため必要性が十分理解されていないという。

 安心して預けられる場所はどこか、毎日のめどを立てるのが精神的につらかったと振り返る母親もいた。「できるだけ時間を取り、母親たちの本音を丁寧に取材するよう心掛けた」という。3時間以上話を聞いたこともあった。

 連載後「子供の居場所作りをしなければならない実情を地域に分かってもらえた」などの声が寄せられている。(愛)

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