7月 9日付 特区、原発、農業に賛否

財政再建は踏み込み不足

 参院選で、安倍政権の経済政策「アベノミクス」が最大の争点になっている。6月14日に「成長戦略」と「経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)」が閣議決定された。主要8か国首脳会議(G8サミット)で、首相がその概要を説明し、参加国から一定の理解を得た。ただ成長戦略第3弾の中身が薄いため市場の反応は冷淡で、安倍政権は秋に追加戦略をまとめる方針だが、有権者が参院選でどういう審判を下すのか。6月中に「アベノミクス」を社説・論説で取り上げたのは少なくとも46社に上る。閣議決定のあった14日を軸に、各紙の論調をまとめた。

地方紙に懸念強く

成長戦略について、読売、日経、産経は一定の評価をする。日経は「企業や個人の活力を引き出すという方向は正しい」とする。その上で、「規制緩和や税制措置の踏み込みが足りず、満足のいく内容とは言い難い」(13日)と指摘。「法人実効税率の引き下げや混合診療の全面解禁などに踏み込めなかったのは残念だ」とし、一層の改革を求める。

これに対し、朝日は「国民総所得」(GNI)という指標自体に疑義を投げ掛ける。「『10年後には1人あたりで現状から150万円、約4割増える』と言われても、それが年収と直結しない指標だと知るにつけ、『まゆつば』と思うのがオチ」とやゆする。その上で新たな雇用と所得を生む「成熟国戦略」づくりを唱える(11日)。

地方で懸念が強いのは目玉政策の一つ、「国家戦略特区」の設置だ。信濃毎日は「まず有利な大都市を伸ばす戦略だが、これが地方の底上げになるのか不透明だ」(14日)と、心もとない様子だ。国民総所得についても、沖タイは「GNIの増加は必ずしも個々の労働者の賃金アップにつながるとは限らない」(12日)と批判する。

規制緩和については大胆な緩和策を求める主張がある一方で、「緩和で痛みを受ける人たちへのセーフティーネット構築が必要だ」(熊本日日15日)と、経済的弱者や地方への目配りを求める声も強い。

追加戦略にも注文

各論をみると、政策によって賛否両論に分かれる。

例えば原発再稼働。産経は13日社説で、「安全性を確認した原子力発電所の再稼働により電力の安定供給を確立するとうたったことは、とくに評価できる」と指摘。設備投資減税とあわせ首相の主導権発揮を求めた。これに対し東京・中日は、「デフレ脱却のために経済成長は必要である。だとしても、そのために原発再稼働を急いだり、他国に原発を輸出するのは間違っている」(7日)と反発する。

地方は反対論が強いようだ。徳島は「東京電力福島第1原発事故の原因究明は終わらず、収束の見通しも立たない。(中略)そんな状況で、産業界の期待に応えて再稼働を急ぐ姿勢に疑問を覚える」(15日)。

農業の規制緩和も意見が分かれる。福島民友が「農業への企業参入を促す規制緩和の実現可能性を慎重に探ってもらいたい」(18日)と主張すれば、日本農業は「TPP(環太平洋連携協定)交渉からの脱退を急ぎ、効率化一辺倒の価値観を転換する必要がある」(15日)と異を唱える。   

秋の追加戦略に盛り込む予定の「設備投資減税」には早くも注文が出ている。京都は「国家戦略特区に集中すれば、都市間の競争を激化させかねない。地域の視点で、吟味する必要がある」(18日)と訴える。一方、東日本大震災の被災地からは「復興を足踏みさせないよう、細心の経済運営を求めたい」(岩手日報14日)との声が出ている。

痛み伴う政策の議論を

経済成長と財政健全化は「車の両輪」で、その両立が欠かせない。「骨太の方針」については財政規律重視を評価しつつ、踏み込み不足を指摘する社が多い。読売は「特に歳出削減は歯切れが悪い」とした上で、「財政再建を成功させるには、国民に痛みを強いる歳出抑制や規制改革を避けてはなるまい」(15日)と主張。毎日も「骨抜きの方針」と嘆き、特に社会保障について「効率化は不可欠で給付削減や負担増から目を背け続けるわけにはいかない」(14日)とする。秋田魁も「いつまでも先送りするわけにもいかない。参院選後になるにしろ、踏み込んだ議論がいずれ必要になる」(15日)と訴える。参院選では各党がどこまで「痛み」を伴う本音の政策を訴えることができるかが問われよう。

このほか地方が気にしているのは地方交付税の重点配分問題。中国は「地方の行政改革や地域活性化の努力を政府側が『査定』した上で交付税の額を決めるという。その発想自体に違和感を覚える」(11日)と、その行方を心配する。(審査室)

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