1月14日付 混迷の時代、内外に難問

対中戦略の再構築訴える

 長いトンネルを抜け、日本経済が明るさを取り戻しつつある。が、デフレ脱却はまだ道半ばだ。内には特定秘密保護法に象徴される民主主義の在り方、外には台頭する中国にどう向き合うかという難問を抱える。政権発足2年目に入った安倍政権は混迷の時代をどう切り抜けるのか。在京各紙の元日紙面は、日本経済の立て直しや民主主義の確立、対中外交戦略の再構築を訴えた。

4紙が独自ダネ、2紙が連載

【1面トップ】毎日、読売、産経、東京が独自ニュースを据え、朝日、日経は連載企画を置いた。

毎日 「中国、防空圏3年前提示 日本コメント拒否 非公式会合 発表と同範囲」。中国が東シナ海に設定した防空識別圏について、2010年5月に開かれた非公式会合で、中国側が既に設定し、その存在を説明していたことが分かった。日本政府側は「コメントできない」と突っぱねたが、防空識別圏の範囲は沖縄県・尖閣諸島を含んでおり、中国側が3年以上も前からその設定をにらんだ作業を進めていたことが裏付けられた。

読売 「中国軍有事即応型に 陸海空を統合運用 機構再編案 7軍区を5戦区に」。これも中国が素材で、中国軍が、国内の地域防衛区分の「7大軍区」を、有事即応の「5大戦区」に改編することを柱にした機構改革案を検討していることが判明した。陸軍主体の防衛型の軍から転換し、4軍の機動的な統合運用を実現することで、尖閣諸島や南シナ海での制空・制海権の確保を目指す。新型装備の増強、運用の近代化が実現すれば、日米両国の脅威になる、と懸念する。

産経 「河野談話 日韓で『合作』 原案段階からすり合わせ 関係者証言 要求受け入れ修正」。従軍慰安婦で日本軍の強制性を認めた1993年の「河野官房長官談話」は、政府が原案段階から韓国側に提示し指摘に沿って修正するなど、事実上日韓の合作だった、と報じた。原案に対し、韓国側は約10か所の修正を要求。例えば「慰安婦の募集については、軍の意向を受けた業者がこれに当たった」との箇所の「意向」は「要請」とのより強い表現になったという。

東京 「東電海外に210億円蓄財 公的支援1兆円裏で税逃れ 免税国オランダ活用」。東京電力が海外の発電事業に投資して得た利益を、免税制度のあるオランダに蓄積し、日本で納税しないままとなっていることが判明。投資利益の総額は2億ドル(約210億円)に上るという。東電は福島第一原発事故後の経営危機で国から1兆円の支援を受けながら、震災後も課税回避を続けていた、と指弾する。

朝日 連載「教育2014」。誰もが持論を語り、正解は一つと限らないのが教育だ。例えばグローバル人材の育成に当たり、優先すべきは競争社会を生き抜く強さなのか、異質な他者を認めるしなやかさなのか。初回は「グローバルって何」。「世界1%のグローバルリーダーを育てる英語教育都市」づくりを目指す韓国など世界の動きや、国際バカロレア教育を進める静岡県沼津市の認定校など国内の動きを追った。

日経 連載「リアルの逆襲」。「速すぎる科学や技術の進歩に一線を越えたような空恐ろしさを感じることはないだろうか」と問いかける。初回は、絶滅した動物をDNAをもとに復活させる「絶滅解消計画」の試みを紹介したり、インターネット上の影響力を用いて個人を評価する試みに注目し、企業が採用で高得点者を優遇する事例が出始めたことなどを取り上げた。

日本の針路を問いかける

【社説・論説】混迷の時代に日本の針路を問いかけた。

朝日 「政治と市民 にぎやかな民主主義に」。東京・小平市の雑木林に都道を通す計画への異議申し立て運動を導入部に、「ものごとを実質的に決めているのは『行政機関』ではないか」との哲学者の問題提起を投げかける。特定秘密保護法も同じ動きだとし、民主主義を「強化するパーツ」の必要性を説く。すなわち、議会に加えて、住民投票や審議会、パブリックコメントの充実などで、行政を重層的に監視する回路を作ることだ。その上で、「静かな雑木林からの呼びかけに、もっとにぎやかな民主主義で応える新年にしたい」と結ぶ。

毎日 「民主主義という木 枝葉を豊かに茂らそう」。2013年から14年にかけて貫く棒は、安倍首相の「強い国」路線ではなく、「寛容で自由な空気」でありたい、と主張する。「民主主義とは、納得と合意を求める手続き」なのに、それを突き崩す象徴的な動きが首相の靖国神社参拝だとする。民主主義を1本の木になぞらえ、幹に当たるのが選挙と議会での多数決とすれば、「豊かな枝葉が幹を支え、大地に根を張って初めて、その木は、すっくと立つことができる」。そのためには非営利組織(NPO)の活動に尊敬の気持ちを持て、と訴える。

読売 「日本浮上へ総力を結集せよ 『経済』と『中国』に万全の備えを」。今年も「経済」と「中国」が焦点と位置づける。その上で、「経済」では「アベノミクスの真価が問われる」とし、「当面は、財政再建より経済成長を優先して日本経済を再生させ、税収を増やす道を選ぶべきだ」と主張。さらに、10%への消費増税時の軽減税率導入、安価な電力供給の基礎となる原発再稼働を求める。対「中国」外交では、日米同盟強化のための日米防衛協力指針の見直しや、集団的自衛権行使の憲法解釈変更などを通じ、戦略の練り直しを強調する。

日経 「飛躍の条件 伸ばす 変わる世界に長期の国家戦略を」。日本が再飛躍するための戦略として、影響力を持つ地域が米欧からアジア、特に中国に移行していることを踏まえ、「日米同盟というハードと、日本の文化と価値観というソフトのふたつの力をうまく使い分けるスマートパワーで、中国と向き合っていくしかない」と説く。そのために不可欠なのは「強い経済の復活」で、「成長戦略」がカギを握る。参考になるのは日本アカデメイアが進める長期ビジョンづくりで、経済力や競争力だけでなく、魅力や尊敬、信頼も含めた「日本力」をデザインし直すとともに、「進取の勇気」を取り戻せ、と訴える。

産経 「年のはじめに 国守り抜く決意と能力を」。故ケネディ米大統領がハーバード大卒業論文で、第2次世界大戦の原因は「英国の失敗」、すなわち融和政策がナチス・ドイツの台頭を許したと分析した逸話から説き始める。その上で、いま最重要なのは安全保障、「国のかたち」の在り方の論議だと主張。50年前の東京五輪当時と違うのは中国の台頭と米国の相対的な衰退だと分析する。そして「日本は戦後秩序の『他者依存』から脱却し、自ら国を守らなければならない」と、”自主防衛”強化を力説する。

東京 「年のはじめに考える 人間中心の国づくりへ」。安倍政権が目指す「強い国」は中国を念頭に自衛隊を拡大するもので、疑心暗鬼から軍拡競争に陥ると憂慮する。世界の見方も、首相の靖国参拝に象徴されるように「戦後積み上げてきた平和国家日本への『尊敬と高い評価』は崩れかかっている」と指摘。アベノミクスも綱渡りだとする。「社会にも未来と希望があってほしい」とし、税を教育や若者・女性支援など人間社会構築のために振り向けるべきだと提案する。

東京五輪から教育、食まで

【連載・企画】 朝日1面「教育2014」、社会面「脱『主流派』宣言」、毎日3面「隣人 日中韓」(12月31日から)、社会面「青い鳥を追って」、読売1面「日本2020」(3日から)、社会面「選手と駆ける」(同)、日経1面「リアルの逆襲」、社会面「家族のかたち」(12月30日から)、産経1面「貳阡貳拾年」、社会面「未知国へ 『食』を伝える」、東京1面「未来の食卓」、社会面「曲がり角のところで」

【ページ数】かっこ内の数字は2013、12年の順

朝日132(116、112)▽毎日76(80、76)▽読売104(104、104)▽日経108(100、102)▽産経80(86、80)▽東京56(56、68)(審査室)

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