6月 3日付 集団的自衛権容認に賛否

在京紙二分、反対目立つ地方紙

 日本国憲法施行から5月3日で67年を迎えた。「憲法記念日」の各紙社説は、集団的自衛権をめぐる賛否で渦巻いた。安倍晋三首相が有識者会議「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」から報告書を受け、行使容認のレールを敷こうという矢先で、日本を取り巻く安全保障環境が悪化をたどっている最中でもあった。

 目を引いたのは在京6紙のうち、「賛成」は読売、産経、日経3紙、「反対」が朝日、毎日、東京3紙と真っ二つに分かれたことだ。それ以上に際だったのは地方紙で、「賛成」は北國だけで、残りは「反対」と温度差が鮮明になった。5月3日の社説を軸に検証したい。

「賛成」の読売、産経、日経 

 「賛成」の立場を明確にしたのは読売。安倍政権の取り組みを「高く評価したい」と支持を打ち出した。「解釈変更は、戦争に加担するのではなく、戦争を未然に防ぐ抑止力を高めることにこそ主眼がある」とし、一部にある立憲主義無視の批判にも、「内閣には憲法の公権的解釈権がある。手順を踏んで解釈変更を問うことが、なぜ立憲主義の否定になるのか。理解に苦しむ」と意に介さない。

 産経はより積極的で、同時に憲法改正を訴える。「解釈変更は行使容認を急ぐためにとる方法であり、真に国の守りを高めるためには9条の条文、つまり憲法を改正して必要な態勢を整えなければならない」と説く。反対派の一部にある憲法改正論に対しては、「その真意は、憲法改正にはより時間がかかることを見越して、行使容認を妨げ、あるいは先送りしようという手段としか思えず、同調できない」と突っぱねる。

 日経は、2紙よりやや慎重だが、「3つのジレンマ」解消を提唱する。すなわち、①安倍首相のジレンマ②政権公約のジレンマ③改憲のジレンマ―の三つの解消策として、公明党への説得や国家安保基本法と個別法の同時処理、憲法改正との仕分けなどを求める。

「反対」の朝日、毎日、東京

 これに対し、「反対」論の朝日は、閣議決定による解釈変更という方法は国会の議決を無視し、「(日本国憲法の平和主義の)魂が奪われることになるのは明らかだ」と主張。そして「集団的自衛権の本質は、他国の防衛という点にある。アリの一穴は必ず広がる」と強調する。ただ東アジアの安保環境悪化も否定できないとし、「個々の案件に必要な法整備は何かという点から議論を重ねるべきではないか」と、個別的自衛権や警察権での対応を唱える。

 同じく「反対」の毎日も、抑止力強化論への疑念を突きつける。「集団的自衛権さえ行使できれば抑止力が高まり平和が維持される、と解釈改憲に走るのは、憲法という国家の体系を軽んじた、政治の暴走である」と非難。それより、「個別的自衛権の穴を埋める作業を早急に進める方が、はるかに現実的」と説く。中日・東京は、江戸川乱歩の探偵小説「怪人二十面相」と重ね合わせ、安倍政権の解釈改憲の動きを「驚くべき変装術」とし、「集団的自衛権行使を封じることこそ、九条の命脈と言っても過言でありません」と指摘。「専守防衛」の重要性を訴える。

平和主義否定を警戒

 一方の地方紙。「賛成」の北國は「東アジア情勢の緊迫化を鑑みて、限定容認はやむを得ない」と理解を示した上で、「原子力事故の脅威をあれほど強調する野党や一部マスコミが中国の脅威に比較的寛容なのはなぜだろう」と皮肉る。

 しかし地方紙全体は「反対」一色だ。見出しを見ても、▽「平和主義の破壊許さない」(北海道)▽「平和主義の尊さ認識を」(秋田魁)▽「空洞化する平和主義の理念」(神戸)▽「平和国家の基盤を危うくする」(愛媛)▽「平和主義の"重み"想起を」(熊本日日)―と、解釈変更が「平和主義」の否定につながるとの立場が大勢だ。静岡も「9条の空文化は、『国民主権』『基本的人権の尊重』と並ぶ日本国憲法の三大理念の一つ『平和主義』を捨てることである」と力説する。

 「戦争巻き込まれ論」への警戒も強い。山陽は「行使に慎重論が根強いのは、米国が行う戦争に巻き込まれる恐れがあるからだ」と指摘。琉球も「集団的自衛権の名の下にかつて行われてきたのは、大国による道義なき戦争ばかりだ」と批判する。また首相の狙いは、祖父の岸信介元首相と同じく日米の双務性を高めることだとみるのは京都。「集団的自衛権行使に向けた執念の背景には、そうした対等な『血の同盟』を目指す国家観がある」と独自の首相観を示す。

 他方、南日本は、平和主義を生かした外交を訴える。非戦の誓いを述べた前文と、それを担保する9条の規定こそ「最大のソフトパワー」であり、それを外交に活用すべきだと唱える。(審査室)

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