2月 3日付 表現の自由へのテロ許すな

寛容の精神、衰え憂慮

 フランスの風刺週刊紙シャルリエブドの本社が武装した男たちに襲撃され、編集長ら12人が殺害された。一連の立てこもり事件で犠牲者は計17人になった。各紙は「表現の自由への許せぬ蛮行」などと一斉にテロを非難、欧州の寛容の精神が揺らぐことを憂慮した。

イスラム社会との軋轢も

 社説は一様に言論の自由を暴力で封じることに怒りを表明した。「ことばを失う凄惨(せいさん)なテロである。民主社会の根幹である言論の自由への重大な挑戦だ」「いかに気に食わなくとも、言論を暴力で封じる行動は断じて許されない」「戒めるべきなのは、こうした事件の容疑者と、イスラム教徒一般とを同一視することだ。そのような誤った見方が広がれば、欧米市民社会とイスラム社会との間に緊張関係をつくりたい過激派の思うつぼである」(朝日)「『宗教への冒涜(ぼうとく)』に対する抗議としてテロという卑劣な暴力に訴えるのでは、イスラム教への偏見を強め、社会の分断と憎しみをあおるばかりだ」「一方、イスラム系移民の2世や3世が欧州社会での疎外感から過激思想に走る傾向も強まっているという。戦後の欧州が重視してきた寛容の精神が、(略)一層揺らいでしまうことを強く懸念する」(毎日)「懸念されるのは今回の事件が、各国でのイスラム教徒を巡る社会的な軋轢(あつれき)に拍車をかけかねないことだ」「欧州各国は、穏健なイスラム教徒の孤立を回避し、社会的共生を進める努力が求められよう」(読売)

表現の自由に制限必要か

 また、表現の自由が無制限に許されるのか問う論調も見られた。「表現の自由は侵すことのできない民主主義の基本的な価値である。ただ、預言者に対する侮辱がイスラム教徒に呼び起こす強い反発も、非イスラムの人々は知る必要がある。多様な文化、宗教が共存するためには対話と相互理解が不可欠だ」(日経)「信教に関わる問題では、侮辱的な挑発を避ける賢明さも必要だろう。だが、漫画を含めた風刺は、欧州が培ってきた表現の自由の重要な分野である。テロの恐怖に屈し、自己規制してしまってはテロリストの思うつぼだ」(産経)「東京電力福島第一原発事故後、人体の奇形を扱ったフランスの漫画は無神経と批判されました。表現の自由はもちろん重要ですが、価値観や立場の違いによっては容認されないものもあることも忘れずにいるべきでしょう」「グローバル化で、民族、文化、立場など、さまざまなものが共存しなければならない時代です。共存社会をどう築いていくのか。(略)欧州の取り組みを注視したいと思います」(中日・東京)「イスラム教は偶像崇拝を禁じており、イスラム教徒はムハンマドの風刺画を信仰への冒涜(ぼうとく)と受け止めている。表現する側はこうした理解を深める必要もあるだろう」(北海道)

極右の台頭を懸念

 反イスラム感情に乗じた極右勢力の台頭を懸念する声もあった。「国連の潘基文事務総長は、銃撃は社会の分断を狙ったものだと指摘する。むろん、断罪されるべきはイスラム教ではなく、テロという犯罪行為だ。自由と人権を守るため、(略)その蛮行にこそ断固とした態度を取らなければならない」(河北)「テロに走る過激派は世界で十数億人といわれるイスラム教徒のほんの一部であることを忘れ、宗教的偏見を助長してはならない」(茨城・山陰中央など)「(テロが)宗教や人種、価値観の違いによる差別の顕在化につながることも心配だ。(略)移民排斥などを訴える極右勢力の台頭を招けば、社会を分断する懸念もある」(静岡)「それ(テロ批判)をイスラム社会への排撃や敵視につなげてはならない」「憎悪が膨らみ、分断が深まれば、暴力を防ぐことはより困難になる」(信濃毎日)「欧州では最近、イスラム教を異質な価値観として社会から排除しようという空気が広がり、移民排斥を訴える政党も勢力を伸ばしている。(略)しかし、短絡的にイスラム教の敵視に走れば、憎悪と暴力の連鎖に陥りかねない。社会の安定を追求しつつも、寛容さを失わない。そんな先進国の底力が試される局面でもある」(西日本)

 日本の問題として考えるべきだとの主張も見られた。「西宮市の朝日新聞阪神支局で男が散弾銃を発砲し、記者2人が死傷した事件が起きたのは28年前のことである。未解決の事件は今も、日本社会に影を落とす。言論へのテロは根絶しなければならない」(神戸)「日本政府は安全保障という名目で、自衛隊の海外派遣を随時可能にする恒久法を制定する方針を固めている。イスラム国などへの軍事対応で米国から支援を求められた場合、(略)日本も攻撃対象になる恐れがあることを認識する必要があろう」(新潟)  (審査室)

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