3月 7日付 安保を評価、通商に懸念

国際協調説く関係目指せ

 安倍首相はワシントンでトランプ米大統領と初の首脳会談を行い、日米同盟と経済関係の強化を確認する共同声明を発表した。沖縄県の尖閣諸島が米国の対日防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条の適用対象と明記し、麻生副総理兼財務相とペンス副大統領をトップとする経済対話の枠組み新設で合意した。首相がフロリダ州のトランプ氏の別荘に招かれ、食事やゴルフを共にする異例の厚遇ぶりも注目され、多くの社が2月12日を中心に社説で取り上げた。

「蜜月」の見極め必要

 産経は「両国はもとより、アジア太平洋地域や世界の平和と繁栄に寄与する合意として評価したい」。日本の防衛に米軍の「核及び通常戦力の双方」を使用することを共同声明に明記したことについては、「軍事力の行使をためらわない中国や北朝鮮を抑止する効果的なメッセージとなる」と主張した。読売は「日米が緊密な同盟をアピールすることは、地域の安定に寄与する。両首脳の親密な関係は、両国間で意見の相違があっても、双方が歩み寄り、生産的な結論を見いだす機運となる効用があろう」と評し「『米国第一』主義を振りかざすトランプ氏の型破りの外交には、多くの国が懸念を持つ。日本は、良き友人として、国際協調の重要性を粘り強く説き、適切な助言ができる関係を目指すべきだ」と強調した。

 特に安全保障では「トランプ氏が継続的な安保政策を示したことで、この分野の不透明感が一定程度晴れたことは評価できる」(西日本)、「アジア太平洋地域の安全保障を巡る懸念については、取りあえず拭われた形だ」(河北)など、評価する論調が目立った。中日・東京は、トランプ氏が共同記者会見で在日米軍受け入れに「感謝する」と述べたことを「日本の役割に対する理解が得られたことは意義がある」と捉えた。同時に「トランプ氏との蜜月関係が日本外交全体にどういう影響があるのかも見定めなければなるまい」と見極める姿勢も示した。

 朝日は「両首脳が個人的な信頼関係をうたい、両国の『蜜月』を演出しても、それが国際社会の秩序の維持につながらなければ、意味は乏しい」と指摘。「トランプ氏の脳裏には中国との取引も選択肢にあると見るべきだ。『日米蜜月』が中国を抑止し、日本を守るという発想だけでは、もはや通用しない」として「適切な距離を保ちつつ、国際社会全体の利益、『国際益』のために言うべきことは言う。そんな関係をめざすべきだ」と論じた。

 日経は「日本が安全保障を米軍に大きく依存している状況を勘案すれば、ときの米政権と距離を置くという選択肢は現実には難しい」と前置きし「個人的な信頼関係の構築を目指したのは妥当な判断」と評価した。また、米国の環太平洋経済連携協定(TPP)離脱を踏まえ、共同声明に「日米間で2国間の枠組みに関して議論する」と明記したことに触れ、自由貿易協定(FTA)について「アジア太平洋地域全体の自由貿易圏をつくる構想の一里塚になるのであれば、日米FTAの可能性を最初から拒む必要はない」と説いた。

批判控えるだけでなく

 通商問題では、日本が譲歩を迫られることを懸念する論調も相次いだ。北海道は「TPP合意を出発点に、日本側ばかりが譲歩を迫られるような交渉には注意しなければならない」。秋田魁も「2国間交渉となれば、日本が農業分野などでTPP以上の市場開放を要求される可能性もある。FTA交渉の打診を見越して、想定できる限りの対話シナリオを用意しておくべきだ」と呼び掛けた。

 中国は「同盟強化が通商交渉の取引に使われる懸念も打ち消せまい」と警戒。北國は「トランプ政権は新設の日米経済協議で、日本製自動車の輸入超過問題や通貨政策に照準を合わせ、厳しい要求を突き付けてくるだろう。利害がぶつかり合う場面はこれからであり、そのときこそ首相の手腕が問われよう」との見方を示した。

 首相は会見で、イスラム圏7か国からの米国入国を制限する大統領令について、「内政問題」としてコメントを差し控えた。毎日は「国際社会の問題であり、メッセージを発信すべきだった。『揺らぐことのない日米同盟』を確保するため、ただトランプ氏にすり寄るだけでは、日本は国際社会からの信頼を失いかねない。日本は、米国が内向きにならず、国際協調に関与し続けるよう、つなぎ役を果たす責任がある」と訴えた。

 愛媛は「首相は批判を控え、まず懐に飛び込む戦略だが、いずれは厳しい意見も率直に交わせる真の信頼関係の構築につなげねば、日本の国際的信用にも関わる。焦らず、一喜一憂せず、長い目でよりよい日米関係を育てねばならない」と結んだ。(審査室)

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