8月 1日付 風の正体は政権の傲慢

都民ファ議員の知事追従懸念

 7月の東京都議選では、小池百合子知事率いる「都民ファーストの会」が躍進し、自民党は歴史的惨敗を喫した。安倍晋三首相のもとでの大型選挙初の敗北を、各紙が社説で論じた。その後も内閣支持率の下落に歯止めがかからず、「安倍1強」に陰りが見えている。

小池人気だけじゃない

 各紙が注目したのは、過去最低だった2009年の議席数を15も下回る23議席しか獲得できなかった自民党だった。朝日は「小池百合子都知事への期待が大きな風を巻き起こしたことは間違いない。ただ、自民党の敗北はそれだけでは説明できない。安倍政権のおごりと慢心に『NO』を告げる、有権者の審判と見るほかない」と書き出した。

 各紙が自民党の敗因として挙げたのは、森友学園や加計学園の問題で公平・公正な行政判断があったのかとの疑惑や発覚後の政権対応、「共謀罪」法審議での強引な国会運営などのほか、選挙運動期間中に明らかになった若手議員の秘書への暴行・暴言、稲田朋美防衛相(当時)の防衛省・自衛隊の政治利用発言などだ。背景に、安倍政権の「おごり」「緩み」「慢心」「傲慢(ごうまん)さ」があると分析した。東奥、茨城、下野、日本海などは「一連の言動の背景にうかがえるのは、都合の悪いことにはふたをしろ、逆らう官僚はけなしたり脅したりして黙らせればいい、彼らは自分たちに従うのが当然なのだからという傲慢さと抑制なき強権志向である」とした。新潟は「自民党への逆風を生んだこれら一連の問題は『緩み』によるものだろうか。そこには政権の強固な意思がうかがえる。異論や疑問に耳を貸さず、政治を進める上で強権的手法も辞さない。問われているのは安倍政権が宿す傲慢な体質である」とした。

 また、熊本日日が「地方選の一つとはいえ、日本の総人口の約1割が集中する首都東京の有権者の判断は国政にも大きな影響を与えるのは間違いない」と書いたように、多くの地方紙が「都議選自民惨敗」などのタイトルで扱ったのも特徴的だった。沖タイは「安保法制や辺野古新基地建設で民意との乖離(かいり)が指摘されたように、安倍氏への支持は絶対的なものではなく、受け皿欠如がもたらしたものだ」とし、もともと「安倍内閣の高支持率がもろい基盤の上に成り立っている」と分析した。福島民報は「安倍首相の国会答弁を文字にして読むと、質問をはぐらかし、批判するケースが多く、事実に基づいて相手を説得しようという文脈は乏しいと感じる。国会での対話の不成立は、国民との対話も成立していないことを示していないか」と指摘した。

 第1党となった都民ファーストの勝因については、小池知事の人気のほか、北海道が「民意の不満が鬱積(うっせき)していたところへ、都民ファが格好の受け皿になったとも言えよう」と分析したように、反自民の「受け皿」との指摘が目立った。その上で、政治経験の少ない新人議員が多数を占めることから「都議会が知事に対して何でも賛成する追認機関とならないよう、しっかり自覚してほしい」(山陽)と「二元代表制」が機能するか疑問視する指摘もあった。日経は、東京五輪への準備の加速、築地市場の豊洲の新施設への速やかな移転、待機児童解消への追加対策などを都政に求めた上で、都民ファーストには議員公用車の廃止や政務活動費による飲食の廃止など議会改革を公約通り進めることを求めた。

改憲目指す首相にクギ

 惨敗で安倍首相が主導する改憲が難しくなったとの見方もあるが、産経は「首相が挑む課題の実現には険しい道のりがある。突き進むには国民の信頼と理解が欠かせない。それを取り戻すことが、首相の大きな責務である」とした上で、「都議選を経て、2020年施行の憲法改正実現を目指す方針に揺らぎがあってはならない」と背中を押した。読売は年内に自民党の憲法改正案を国会に提出するなどとした首相の政権戦略も「国民の支持がなければ画餅となろう」とし、都議選で連携を解消した公明党との関係の正常化を前提に、与党の合意を丁寧に形成することが重要だとした。

 一方、中日・東京は敗因となった言動の底流には「憲法を軽視、あるいは無視する政治」があるとし「国民の信頼を回復するには、憲法を守る政治に戻らねばならない」と指摘した。首相に「年内に自民党の改憲案を提出するとの発言を撤回すべきである」と求めた。

 毎日は5議席にとどまった民進党について論評。「都民ファーストという国会とは別の新たな選択肢ができた結果、有権者の間に根強かった安倍政権への批判や不満が一気に顕在化したと見るべきだろう。裏返せば、安倍政権以上に民進党に対する有権者の不信が消えないことが、これまで政権を助けてきたということだ」とし、原点回帰を提言した。(審査室)

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