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AIとジャーナリズムに関するパリ憲章、WAN-IFRAは承認せず

 国境なき記者団(RSF)は11月10日、人工知能(AI)とジャーナリズムに関するパリ憲章を発表した。10項目から成る憲章は、AI時代におけるニュース・情報の信頼性を守るための倫理原則。報道機関のAI利用・開発は正確さや公平性、情報源の秘匿などの報道倫理の核となる価値を擁護し、編集判断は人間の意思決定が中核でなければならないとした。

 憲章は前文で、ジャーナリズムと報道機関の社会的役割は民主主義の礎で、情報に対する万人の権利を強化するものだと強調。AIシステムはその役割を大いに支援しうるものの、透明で公正かつ責任ある使用が前提だとした。

 RSFのクリストフ・ドロワール事務局長は「ジャーナリズムには健全で広く認められた倫理基盤がかつてないほど必要になっている」と指摘。記者、編集者、報道機関がパリ憲章の原則をわがものとして宣言し、実践するよう求めた。

 憲章発表には国際新聞編集者協会(IPI)やジャーナリスト保護委員会(CPJ)など世界の16団体がパートナーとして名を連ねた。一方、世界ニュース発行者協会(WAN―IFRA)は同日、ニュース発行者から懸念が示されているとして憲章を承認しない意向を表明した。

 WAN―IFRAが問題視したのは「報道のAIシステム利用には独立機関の事前評価を経なければならない」とする項目。ヴァンサン・ペイレーニュ専務理事は、掲載するものに法的責任を負う発行者は自ら倫理規定を作る必要があると指摘。「不確定な外部評価機関に意思決定を委ねるのは非現実的で望ましくない」とした。日本新聞協会など世界の報道26団体が9月に発表した「世界AI原則」への支持を改めて表明した。

 RSFは7月、国際的なメディア団体と協力してAI憲章を策定する委員会を設けた。フィリピンのマリア・レッサ氏(「ラップラー」創業者)が委員長に就いた。WAN―IFRA傘下の世界編集者フォーラムの会長は委員を務めていた。

 パリ憲章10項目は以下の通り。
1)報道倫理が報道機関と記者のテクノロジー利用を先導する
2)報道機関は人間の介入を優先する
3)報道機関で使われるAIシステムは事前に外部評価を受ける
4)報道機関は発行するコンテンツに常に責任を負う
5)報道機関はAIシステム使用の透明性を維持する
6)報道機関はコンテンツの起源とトレーサビリティー(追跡可能性)を保証する
7)報道は本物のコンテンツとAI生成コンテンツを明確に分ける
8)AIによるコンテンツの個人最適化や推奨機能は、情報の多様性と信頼性を支持する
9)記者、報道機関、ジャーナリズム支援団体は国際的なAIガバナンス(管理・運用)に関与する
10)ジャーナリズムは、AI組織との関わりにおいて倫理的・経済的基盤を堅持する

国境なき記者団発表
https://rsf.org/en/rsf-and-16-partners-unveil-paris-charter-AI-and-journalism

WAN-IFRA声明
https://wan-ifra.org/2023/11/wan-ifra-steps-back-from-endorsing-new-charter-for-ai-and-journalism/

(2023年11月30日)

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