2017年 2月14日
地元演劇人の挑戦伝える

北日本「"氷点下"を沸かす 文芸座南極公演」

 演目はチェーホフ原作「結婚の申し込み」だった。秋田の山村に舞台を置き換えた翻案劇だ。南極点からチリ側に約千キロのユニオン・グレーシャー・キャンプが会場となった。富山市のアマチュア劇団「劇団文芸座」が昨年12月、公演した。南極での本格的な演劇公演は世界で初めて。

 小泉博代表(84)と出演者3人に、寺田幹文化部長が同行した。「新聞だからこそ腰を落ち着けて楽しみに読んでもらえる記事を、文化面に載せたい」。1月13日から週1回、計3回にわたり連載。ストレートニュースだけでは伝えきれない出演者の思い、準備に関わった多数のスタッフの工夫なども紹介した。

 文芸座は1948年に創設された。「あらゆる場所が芝居の空間になる」。小泉氏の信念の下、山間部に暮らす人々に生の演劇を届ける巡回公演など、富山県を中心に活動してきた。欧州や北南米、豪州、モロッコ、中国など海外公演も70回近い。

 公演場所は演劇用のホールとは限らない。「全大陸制覇」となった南極公演も、かまぼこ型の食堂テントに舞台と50の客席が特設された。舞台装置をコンパクトにする術は、巡回公演で培った。段ボール箱二つに収納し運んだ。

 午後9時半に幕が開く。びょうぶや床の間のある和室が現れ、世界各地から訪れた観客が驚きの声を上げた。出演者が怒ったり、嘆いたりするたび、言葉や習慣を越え笑いが起きる。日本刀を抜いての騒動に固唾(かたず)をのむ。マイナス9度の外気の中、観客は一夜限りの南極の舞台に熱い拍手を送った。

 「南極公演が、劇団70年の歴史の積み重ねだとあらためて感じた」と寺田氏は振り返る。出演者は50~80代。読者から「高齢の地元演劇人の挑戦に元気づけられた」「普通の人が南極に行けることに驚いた」などの感想が寄せられたという。(有)

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